11.先端技術応用魔法機動部隊
内務大臣や財務長官が裏で売買していた魔法力を持つ一般市民の情報が手に入った。
おれたち魔導技研はあらゆる場面でそれら非合法な取引を行う犯罪集団に対し、つねに先手を取った。
『懲罰会』との闘いの中で一つの革命が起きていた。
情報革命だ。
アプル伯爵とジョルジオ都市伯に渡した光銃だけではない。
より正確で細かい双方向の通信を実現した。
有線通信だ。
電線と違って銀を銅で包んで魔力を通すためのケーブルだ。日傘にも使っていた『魔力回線』を応用。銀は魔力を通し、銅は遮る傾向があるからだ。
その先に細かい光魔法の点滅をする刻印魔法を設置して、モールス信号の要領で文章のやり取りができるようにした。
電報と同じだ。
均一な金属線の加工は難しい。
まず加工できる機材から造らないとならない。
そこで製造はフル公が治める北方の工房都市アルアンツの職人たちと、そこで保護されていた先輩たちにお願いした。
「ロイド君!! 会いに来てくれたんだね!!」
「ここすごいぞ!! 職人の技術レベルが全然違う!!」
「ねぇ、あれからどれぐらい経った? みんなどうしてる?」
「向こうで何かあった?」
何だかこの受け入れられ方が懐かしい。
「皆さん、これを造れますか?」
「ここなら何でも造れるよ!!」
それだけではない。
連絡を受けて駆け付けるには時間がかかる。
「ついてでと言っては何ですが、これも量産できますか?」
そこでオリヴィアに造っていた高機動パックを量産してもらった。
風魔法の力で誰でも高速移動を可能とするバックパック型の魔道具だ。
「面白そうじゃねーか」
工房の職人には岩宿族がたくさんいた。
彼らの興味を惹いたらしい。
それを馬にも応用した。
長時間、より速く疾走できる。
それには悪路を走るのにも慣れているタフな南部の馬が適していた。
軍馬はエシュロンが譲ってくれた。
光暗号通信と高機動パック。
この二つで魔導技研は常に情報戦で優位に立った。
◇
エリン室長が結成した部隊、先端技術応用魔法機動部隊は『魔導軍再編計画』の先駆けとして十分な成果を上げた。
小さな村に現れるゴロツキ。
まずはそこから始める。
「なんだおっさん!! よそ者は引っ込んでな!!」
「女一人にワラワラ群れおって。腰抜けどもが」
「ああ? なめんなよ、おっさん!!」
村の少女をさらうゴロツキ共。
束になっても屈強な本物の海の男には敵わない。
ゴロツキ共の親分を突き止め、他のゴロツキも捕まえる。
尋問は訓練された熟練の都市警察なら朝飯前だ。
「最初に話した奴から恩赦を約束する。さぁ、君は何番目になるかな?」
するとそのあたりを根城にするならず者集団に行き当たる。
敵は奇襲を受けて短時間で壊滅。
今度は貴族や商人がバックにいると判明する。
「お、お前、どこのもんだ!! こんなことしてタダで済むと思うなよ!!」
証拠を集めて、摘発し、仲間の情報を吐かせる。
おれはその一例を見ていた。
森の中に作られたアジトから奴隷扱いされた人たちが次々と救出されていく様子を断崖から見下ろす。
隣にはエリン室長。
見守り終わって馬で下山する。
「早い。それに圧倒的ですね」
「君が集めた者共は役に立っている。あれだけの人材を四大貴族から貸し出されるとは」
「人徳というやつです」
「私には無いものだな」
「はい……あっ」
気まずい空気が流れた。
「だがそれ以外の聖騎士やゼブル商会の情報屋、無名の冒険者はどう見つけた?」
「たまたま知っていただけです」
「向こうは君を知らないらしいが?」
「陰ながら応援していただけです」
「ロイド、私に何か隠していないか?」
『記憶の神殿』の力でただ記憶しているだけとは言えない。バレたらもっと面倒なことをやらされそうだ。
エリン室長の虚ろな眼は怖かったが何とか話題を変えた。
「これでも潰せたのは『懲罰会』の末端の末端だ。奴らの中核事業は賭場の仕切り、鉱山経営、土木建築等の公共事業、開拓事業。人材調達だな。いたちごっこになるだろう」
「そろそろ、本丸を落とします」
「少し待て、王都に散らばっている戦力を……」
「いえ、ぼくに考えがあります」
情報網と高機動魔法部隊。
その活躍の場は魔獣討伐や犯罪者の摘発ばかりではない。
自然の脅威から人々を救う。
「室長、傘を」
「雨は降っていないわ」
「もうじき降ります」
遠くの山から発せられる明滅を解読して、おれは降り始めた雨の中山を下りた。




