10.紅月隊ロイド復活
まばゆい光が辺りを照らす。
「馬鹿な、魔法を使ったのか!?」
目がくらんだ刺客たち。
位置を特定されてすぐに移動しようとしたが、もう遅い。
この音が聞こえるだろう。
雷鳴かショットガンかトラック同士の正面衝突したような、あるいは戦闘機が音速を越えて生んだ衝撃波のような音だ。
ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ。
一定のリズムで刻まれるその音は瞬く間に遠くから近くに閃く。
ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ。
これは彼女が移動する音だ。
「おい、どうなっている? 返事をしろ!!」
手斧の男の言葉に返事はない。
「全員斬ったわ」
やがて彼女が姿を現した。
全身から煙を発する騎士。高機動パックによる超加速だ。
手には血に染まった剣。
「紅月隊か! クソっ!!」
手斧の男は刺し違えようとしたのかおれに向かってきた。
騎馬が割って入り、手斧の男をいとも簡単に吹っ飛ばした。
「ぐはっ!!」
ゴロゴロと転がされ、相手を見上げる。そこには2メートルある長剣を持った騎士がいた。
「紅月隊のマイヤか」
刺客は逃げた。
さすが隊長頼りになる。
どうやら危機は脱したようだ。
「何をもたついていたんだ!! さっさと私を安全などこかに送り届けろ」
「勘違いしないで下さい。あなたを助けたのは身柄を拘束するためです」
「なにぃ!? そもそも私が命を狙われたのはお前のせいだ!! ボスコーンに続いて懲罰会に手を出すとは! 四大貴族を集めたのもお前だろう! 全てお前がぁぁ!!」
こいつボスコーンの件もからんでいたのかよ。
元内務大臣グスタ・レビーは学院の不当捜査で解任され、口封じのためベリアムに狙われた。いや、役立たずで不興を買っただけかもしれないが。
皮肉にもこの件がきっかけで魔法職の安全保障と情報の把握などの必要性が証明された。
「いいんですか? あなただけではまた狙われる」
「ぐ、おのれ……!! 脅す気か!!」
「とんでもない。ただ話し合っているだけですよ。あなたの価値はあなたの情報だけです。それが無ければ助ける義理もありません。さて、果たしてその傲慢で身勝手な接し方は今の状況で正しいのでしょうか? ぼく子供なんで気分で動いたりしますよ?」
「わ、わかった。すべて話す! だから助けてくれ! いや助けてください、ロイド卿!!」
「ほら。話せばわかる」
交渉が成立するとマイヤが話しかけてきた。
「ロイド卿、あなたの役目はもっと日の当たる場所にあります。それが姫のためにもなります。お早くお戻り下さい」
「はい。支度は整いました。あとは得意な人達に任せるとします。隊長、この度は……」
「もう少し自分の心配をしてくださいね、ロイド」
「ご心配をおかけしてすいません」
まずは懲罰会とのいざこざに蹴りを付けよう。
◇
隠れ家に着くとグスタはべらべらと話し始めた。
グスタからの情報で懲罰会の王国でのネットワーク、その全貌を知ることができた。
命令系統や関わっている組織、戦力、金の流れ。
「懲罰会と戦争する気か!? やめろ、敵う相手ではない!!」
「戦争? そうはなりませんよ」
「何を楽観的なことを……!!」
「懲罰会の末端はただの犯罪者たち。そいつら手足の刈り取り作業はすでに始まっている」
「誰だ?」
グスタは部屋に入ってきた女を見て驚愕する。
「お前は死んだはず」
「内務大臣、おっと。元内務大臣殿。『女ごとき』がしぶとくて悪かったなぁ」
死人の虚ろな目に見入られて、グスタは震えあがっていた。




