7.財務長官による公聴会
内務大臣が姿を消した途端、今度は財務長官が動き出した。
『懲罰会』の力を傘に今度は財務長官が表で動く役目になったわけだ。
まずは『怪童』の技術を自分のアイデアが元になっていると主張するものたちが現れた。
そこに財務長官が割り込んだ。
証明をするため、公聴会を開こうと言い出した。
冷凍冷蔵庫、日傘、後天的魔法力付与の構造を知りたい人は多い。
それが狙いだったのだろう。
財務長官は懇意にしている商会や貴族に異議を唱えさせ、それを治めつつ技術の中身をかすめ取ろうと計画した。
理屈の上ではそんな見え透いた計画に賛同することは馬鹿らしい。だがそんなことはどうでもよく、手に入れたいものが手に入れば口実など関係ないのだ。
そこがまさに問題だ。
◇
おれは公聴会に出席した。
「ロイド卿はこの国に混乱をばらまいている。その責任を取るために、積極的に話すべきだと考えたわけです」
演説をする財務長官。
公聴会に集まった関係の無さそうな商人や貴族たち。
大げさな広間では内務大臣の失踪がおれのせいだとする声や、技術を独占するなという声が大半だった。
投じられた肉に群がるピラニアたち。
荒立つ水面。その後には何も残らない。
だがおれは黙って喰われるエサではない。
「今、ここで行われていることこそ、問題です。大半の人間は私が生み出した魔道具になんら関わりの無い人々です。誰か一人でも開発や研究に携わった方がいますか?」
全員目を逸らす。
「それなのに自分のものだと主張する。私は貴族であるためにこうした場が設けられているが、これが平民だったのならどうでしょう? 生み出した技術や画期的な発見を奪われ、何の権利も保障されないのであれば、この国の大半を占める国民は次に進もうと考えなくなるでしょう」
「なんて傲慢な考え方だ。ロイド卿は我々を盗人だとでも? 庶民だった卿は貴族の知識と技術を使わせてもらって今その地位にいるのではないか!!」
「その庶民だったころ、私に魔法技術の情報を知る術などありませんでした。伝えるべきことを伝え、管理すべきところは管理する。それが無い。こうして新たな知識が生まれるたびにあなた方一部の権力者が独占してきたからです」
「それこそ言いがかりだ」
「ならこれは何です?」
財務長官は笑った。
「この場は卿の知識を確かめるためのもの。説明ができないのなら、関連知識の所有権は放棄してもらう」
「説明で所有権が認められたなら、今後類似品が見つかった場合、賠償をしてもらうことになりますよ」
「公開した技術を使うことに何の問題がある! そんな訴えは認められんな……とはいえ、何の対価も無いのが気に食わないならいいだろう。納得のいく説明がなされたらここにいる者たちで相応の額を払おうじゃないか」
公聴会が聞いてあきれる。
こいつらはただのバイヤーだ。
金を出せばなんでも買えると勘違いしている。
金を右から左に動かして市場を操作し、資産を増やして権力を振りかざす。
成金の山賊だ。
お山の大将が契約書を用意してほくそ笑む。
「『恐怖と利益』とはよく言ったものだ」
「なんですか?」
「人を動かすのは危機感と金という意味だよ。驚いたな! なんでも知っているロイド卿にも知らないことがあったとは! もっと教えようか?」
「いえ。こちらこそいいことを教えましょう」
公聴会の場に、システィーナが現れた。紅月隊を引き連れて。
「もっと危機感を持った方がよろしいかと」
「どうして王女殿下がここに?」
思いがけず現れた王女に公聴会の参加者たちが跪いた。
「ロイド卿、王族を巻き込むなど不敬極まりない。なんと浅ましい」
「私が証言をすると言ったのですよ。皆さんは誤解なさっていますから」
システィーナが考案者はおれだと証言した。
冷凍冷蔵庫はすでに王国中に広まっているし日傘はかん口令を出したのが国王なので勝手に造れば反乱とみなされると言い渡した。
後天的魔法力の付与に関しても、王宮騎士並みの体力と精神力を持って成功率2割と聞いてバイヤーたちの関心は落ちた。
財務長官は悪あがきをしていたが誰も追従しなかった。
おれから技術を奪っても不利益の方が大きいとやっと理解できたようだ。
「王女を抱き込んでいい気になるなよ。私は内務大臣のように馬鹿ではない。今後、魔導技研の予算はでないと思え」
財務長官は負け惜しみを言い残して去っていった。




