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8.剣神システィナへの弟子入り



 おれは(うやうや)しく片膝を着いて頭を垂れた。



 彼女への誠意と敬意を表明するためだ。

 しかし、彼女は不敵な笑みを浮かべおれを見下ろすばかり。



「お願いします、ぼくに剣を教えてください」

「えぇ~、今さらぁ~?」



 椅子にもたれ、頬杖を突いたまま不敵に笑うメイド。



「ひぁ~!! 何をしているんですか坊ちゃま!! ティーナさんも何見下ろしてるんですか!!」



 ヴィオラに引き起こされた。



「だって、私が散々教えてあげようかと提案してたのに、断ってたんだよ? それが何で今さらなんだい?」



 システィナはいじらしく笑った。

 二言返事でOKがもらえるだなんて思っていなかった。



「自分の魔法に限界を感じたんです」

「ほう‥‥‥?」

「それに、今なら前より自分の剣に可能性を感じる」

「そうか。自信を得たか。確かに、眼が違うね」



 先端恐怖症が治った。

 死を一つ乗り越えたからだ。

 ためらいも消えた。

 自分の役目の重さに気づいたからだ。



「ふむ」



 あの事件以来、システィーナの態度が変わった。変わってしまった。


おれが護衛の時の不安そうなあの目。


 おれは目の前で死にかけるという失態を演じた。

 それがまだ幼いシスティーナの心にトラウマを植え付けてしまったのだ。

 主に心配をさせる護衛なんて最低だ。



 おれは再び土下座した。

 五属性魔法を使えても、おれには力が足りない。

 魔法さえ覚えれば良いという考えが甘かった。

 

 ならばおれのやるべきことは、まだ伸びしろがある部分を最大限鍛えることだ。

 それには剣神システィナの力が必要だ。


「やっぱり、私の見立てに間違いは無かったね」



 システィナは嬉しそうにおれを抱きあげた。



「私のことは今後師匠と呼びなさい」

「分かりました。下ろして下さい、師匠」




 ◇



 まず最初に剣を買いに行った。



「やや、これはまさか『ハートの騎士』殿!? このような狭い店にお越しいただけるとは!! 一生の名誉でございます!!」


 王都の下町にある小さな武器防具店に入った。

 店の親父はおれを見てすぐにおれがロイドだと気が付き、愛想よく接客してきた。

 しかし、システィナは店の親父のおすすめやセールストークには耳を貸さず、迷わず剣を取った。


「私が目を付けてたんだ。君にピッタリの剣だ」



 そう言ってシスティナが取って見せたのは小汚い中古の剣だった。普通の剣より短く短剣よりは長い、半端な剣。



「その心は?」

「実力と実用に見合った剣だよ」

「実は名剣とか?」

「いやいや、冒険者が借金の返済のために売ってったもんでさぁ! とても『ハートの騎士』殿が持つもんでは‥‥‥」



 それは聖銅(オリハルコン)極銀(ミスリル)でもない。

 ただの鉄製の剣だ。



 屋敷に行けばこれよりもっと立派な剣を何振りか持っていた。


 でもそれではダメだという。



「剣に振り回されるようではだめだ。身体に合ったサイズと重さはそれだ」

「ははー」


 おれは素直に従った。

 システィナはおれの財布で支払いをした。

 ちなみに同じような剣を何振りか買い込んだ。



 続いて別の鍛冶屋にやってきた。

 


「ん?」

「できてるか?」

「おー、姉ちゃん!! 剣はとっくにできてっけどよ。本当に支払えんのか?」

「もちろん」



 システィナはおれの財布を鍛冶屋に渡すと代わりに立派な剣を受け取った。



「なにそれ~?」

「わたしの~」

「そっか~」


 システィナは満面の笑みだ。ずっと欲しかったのだろう。剣が欲しいとしつこかったし。

 まぁ指導するのに丸腰じゃ無理だからね。

 


極銀(ミスリル)で打った剣だ。本当は神鉄(アダマンタイト)にしようと思ったんだけど加工できる鍛冶師がいないって言うから」

「まったくこの姉ちゃんは、冗談ばっかしー! 神鉄(アダマンタイト)で剣なんて持ってるのは王族か英雄ぐらいだろう」

「おじさん。今から怖い話をしますけど。この人は冗談とか言ったこと無いんです」


 おじさんがヤバい奴を見る目でシスティナを見ていたがシスティナは剣を愛でていて気にしていなかった。



 剣を準備してようやく修行が始まった。


 まずシスティナと手を組んでずりずりと壁まで押された。


「単純な押し合い。この結果は体重以外に何が関係していると思う?」

「それは、筋肉でしょ?」

「ならこれは?」



 システィナは壁に着いた手を押し込んだ。



「ひゃあ」


 壁ドンかよ。

 と思っていたら壁が倒れた。 



「えぇ~!!」



 ただの筋力で出来るわけがない。



「そして、最後がこれだ」



 システィナは隣の壁に掌を押し当てた。

今度は壁がぶち抜けた。



「えぇ~!!」



 

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