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3.【降臨】女神との再会

 ええ~今回は、一つの謎解きに挑戦してみましょう。


 ある一人の少年がいました。彼は貧しい生まれながらも魔法の才で、領主の養子となり、その才能を開花させました。たったの六歳で王女システィーナの護衛騎士となったのです。


 ええ~、そんな彼はなぜか身体の中に、神殿にしかない神気という力を有していました。


 不思議ですね~。


 ほ~んとに不思議。


 なぜ、おれにだけそんな力が?

 演繹的思考法によって、一つの真実にたどり着いた。



「……あれか。寄付!!」



 子爵になってすぐに神殿の孤児院に寄付した。

 結構な大金だ。



 真実は一つ!

 確かめる方法も一つ。


 その前に皆が大好きなお金の話をしよう。


 おれはこれまでもベルグリッド伯ギブソニア家の養子だったし、子爵だった。でも仕事を与えられていたわけでもないし、領地があったわけでもない。働いてない。


 でも、これからは給料が発生する。


 システィーナ王女の護衛をする王宮騎士という立派な仕事を得たのでかなりの額がおれの口座に振り込まれる。特に最初は準備金という名目で王宮からまとまった金をちょうだいした。ざっと金貨二百枚分。日本円にして……ちょっとわからないが、多分一千万ぐらい?


 この金で魔法の本を爆買いするとか、いい剣を買うとか、奴隷の美少女を買うとか、家を建てるとかいう選択肢もあるにはあった。家は無理かー。


 だがそれよりもこの目の前にある謎を解くために費やそうと思う!!





 ――結果から言って、寄付をしても何も変わらなかった。


 神の力は課金制ではありませんでした。

 うん、知ってた。

 寄付をしている人は他にもいるから、額の問題だと思ったが、それも違った。



 なら何?




 みなさんお分かりでしょう。

 おれは考えないようにしてきた。

 でも、そうとしか考えられない。




「おれは神に選ばれた人間だったのか‥‥‥!」




 ヤバい奴みたいだ。


 いや、でも、そうとしか考えられないだろう。

 おれには何か特別な使命があって、神に選ばれたに違いない。



 そう思った。



 大神官や聖騎士たちの関心を惹くのは面倒だったけど、おれは自分の仮説を立証するために行動した。



 まず自身にある神気について学ぶことにした。


 これでできることから、神がおれに何をさせようとしているのかおおよその見当がつく。



 神気は神殿にいると自然とおれにチャージされた。でもこれはおれだけだ。

【神聖級魔法】は謎多き秘術。

 他の神官や聖騎士は様々な書物を読んで、修行し、詠唱を行う。


 この魔法は魔法と言うより奇跡に近い。

 発動に明確な原理などが無い。


 長い期間を掛けて神に祈り、善行を積みかさねることが発動の近道と言われた。




 その直後に、おれは神聖級奥義とされる『神域』『霊薬』『神装』を使えた。



 それを見ていた大神官や聖騎士たちはおれに跪いた。



「やはり、あなた様は神なのですね」

「違います」



 とっさに否定したものの、現に神殿内では変化が起きていた。



 治らないはずの患者が普通の『治癒』で完治したり、審問の前に神殿に入った者が突然罪の告白をしたり、ありえないことが起こった。



「あれはおれが原因だったのか」



 以前、ベスたちが神殿に入っただけで罪を告白した時と同じだ。



 おれは神気を有しているだけでなく、その量も尋常ではなかった。



 大神殿に蓄積された神気の何倍も有している。

 そのため、漏れ出た神気の影響で他の神官たちの神聖級魔法を格上げしていまっていた。

 


 これではおれを神と間違うのも無理はない。




 神ではない。それは確かだ。


 でも、ただの人間でもあり得ない。


 確信した。

 



「やっぱりおれは何か特別な使命を帯びて転生した?」




 そもそも転生している時点で異常なんだ。

 力を持っているのは何者かの意志があると考えるのが自然だ。


 その力が神の力なら、おれを転生させ力を与えたのも神と考えるのが妥当。



 おれは神や信仰についてもう少し深く学ぶことにした。



 まずは神殿にある書物を片っ端から読んでいった。

 大神官は快く読ませてくれた。



 たぶん一般にも公開していない内容も含まれていた。



 それによれば神々のほとんどは元はこの地上で暮らしていた人とは異なる高度な生命体で、異界の者との『聖戦』で活躍した者が神となったとある。



 異界の者たちは一部は封印され、一部は神々の子孫たちと交わり、今の人間となっていった。



 スケールは違うがおれも同じ気がした。


 この世界にとっておれも異界の者だ。

 もしかしておれは神の敵?



(いや、神殿にいても平気だし、剣神システィナはおれたちを助けたよな)



 結局書物から推測してもわからないことが増えるだけだ。



 おれは角度を変えて調べることにした。







「神が存在するとどう証明するのでしょうか?」


「神が存在するのならなぜ人は不平等なのでしょうか?」


「なぜ救われる者と救われない者がいるのですしょうか? 私の寄付が何に使われているか内訳を出してもらっていいですか?」



 子供教室で質問してたら追い出されてしまった。


 けっ、神なんて本当に居るのかい?



 悪態を付いてみたが影響はなし。





 神々の専門家である学者や伝承を調べている歴史家などにも話を聞き、果ては子供教室まで行ったが神気を有する人間や、転生については何もわからなかった。



 収穫は歴史上、神から特別な力を与えられた者がおれ以外にもいたということ。



 天啓を授かり、人々を救った聖人。

 聖痕を授かり、神の先兵として戦った使徒。




 しかし、おれは天啓も聖痕も授かってない。




 最後の手段だ。


 始めからこうすればよかった。



 神に直接聞く。



『神域』を発動させた。



 光に包まれて人が現れた。割とすぐに。

 優しさと美しさが人の姿になったような女神。



「あ、あなたは…‥まさか……!!!」



 彼女は深緑の瞳で優しくおれに話しかけた。




「ロイド君、再び会えましたね」



 3歳の時、出会ったお姉さんだった。


 彼女の予言通り、おれは再び彼女と出会うことができた。



■ちょこっとメモ

『神域』神気による結界。この中では魔力が操れず、常人は意識を失う。

『霊薬』万能薬となる液体を生み出す。効果は数秒しかもたない。

『神装』身体に神気を纏う。物理的な攻撃を防ぎ、魔法攻撃を弱める効果がある。

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