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22.【忠誠】涙と笑顔の魔法


 宮殿の庭で、勝負は始まった。



 男はおれの放った『土流』に飲み込まれ、そこから抜け出せずに降参した。



「い、一体何が!? こ、こんなはずじゃ‥‥‥こんなことあるはずが無い!!!」

「見苦しいぞジェレミア」

「何か不正をしたに決まってる!! 詠唱も何の構えもしていなかったのに。そうか、ベルグリッド伯爵が魔法を使ったのだな」

「いいえ」


 ヒースクリフを含む宮廷魔道士たちがそれを真っ向から否定した。


「この結果は実力差です」

「ぐ、これはなにかの間違いだ!!」




 狙い通り、宮廷魔導士たちはおれを高く評価してくれた。

 四大貴族まで。


「バリリス侯はやはり、南に来るべきじゃな」

「いや、我が都市で活躍してもらいたいですね」

「バカ言うんじゃないよ。あの子は渡さないよ」

「魔法に長けた彼の才能を活かすなら私と来るべきだね」



 

 結局、四大貴族の争いも振出しに戻った。



「宮廷魔導士団はロイド卿をすぐにでも入団させる手配を進めます」

「おい、何を言っている。宮廷魔導士団は王立魔道学院の卒業資格が必須だ」

「ならば免除する。陛下と魔道学院長の許しがあれば問題ない」

「別に宮廷魔導士団に所属する分には問題ないんじゃないかい」

「なぜ貴様が決める。せめて軍務局魔法師団にしろ。それなら駐屯地が王都から離れても問題ない」

「勝手な。南には十分兵がいるではありませんか」

「何? それは貴様のところも同じだろう」



 おれをめぐる取り合いは白熱した。

 その時だった。



 彼らを止めたのは一人の少女だった。



「皆さま、ひどいです。今日は私の誕生日なのに‥‥‥」



 そう言って幼気な少女が泣きだしてしまった。



 慌て始める大人たち。



 そう、みんなも忘れてたんじゃない?

 この日は姫の誕生日で、主役は姫だ。



 なのに、まったくあなたたちは他のことで盛り上がって姫をほったらかし。



 反省しなさい。



 え? おれも?


 真に申し訳ございません。



「おお、システィーナ。すまない。どうか泣き止んでおくれ」



 まだ10歳の少女が自分の誕生日で泣いている。


 この居たたまれない空気を何とかしようと、大人たちは必死になった。



「いいんです。皆さんは私よりロイド卿に会いに来たのでしょう」



 これは演技だ。


 末恐ろしい。

 むしろ巻き込まれていたおれが、まるでおれが戦犯のようだ。

 なんという大胆な印象操作。



「姫様、どうか私に償いの機会を」


 誰だ、このペテンに引っ掛かって謝っているバカは。

 おれだぁぁぁ!!



 当然のようにおれは自分が悪いことをしたと反省してしまった。


 いやいや気づけおれ!!

 何も悪いことはしてないぞ!!

 悪いことした空気に負けるな!!

 姫は落ち度のないおれをこうして追い込み、この言葉を引き出した。




「何でもします」

「ホント?」



 彼女は満面の笑みだった。



 それまで陰惨な殺人現場のような空気だったのが、この笑顔で解放された。


 見事なマッチポンプ。


 このプレッシャーの乱高下でおれは思考力を手放していた。



「それでは、私の騎士になって下さい」

「仰せのままに!!」





 おれがこの問題の問題点に気が付くのは数秒のブランクがあった。



 それは国王の宣言の途中だった。




「良かろう。我が名の下にロイド・バリリス・ギブソニアに『ハート』の称号と与えると共に王宮騎士に叙任する」



 あれ?


 王宮騎士。



 おれは宮廷魔導士になるんだよね?


■ちょこっとメモ

ロイドに敗れた魔導顧問。

貴族の生まれで驕り、ジェレミアの配下として他人を見下すように生きて来た。

しかし、ロイドに敗れ、意気消沈。


「まさか、このおれがあんな子供に‥‥‥くそ!! もう魔導顧問など名乗れない。お終いだ」


会場に戻るとふと場違いな鍋に目がいった。


「なんだこれは。湯に肉を浸すのか。ひょっとしてそれをこの卵黄に‥‥‥う、美味い!!」


しゃぶしゃぶに感動した。


「これこそ最高の贅沢。南部のローア牛、西の魚醤、そして新鮮な卵が無くてはこの料理は食べられない。いや、権威に囚われているわけではない。各地の食材を合わせればこのように素晴らしい料理がまたまだ生み出せるのではないか?」


男は閃いた。

それには自分の高度な魔法の知識と技術が役立てられる。

食材を新鮮なままこの広いローア大陸に行き渡らせる。



食糧輸送に革命を起こした男はこうして自分の本当の道を見出した。


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