幕間 ロイド/ロイド/ロイド
さぁ、始まりました。
気になるあの話題をざっくり解説、異世界TVのお時間です。
司会は毎度おなじみこのおれ、MCレジェンド!!
ゲストはこの方。
「あ、どうも、魔王は全員おれの舎弟!! 『魔皇』です。よろしくお願いします」
おい、まじか。
緊張してる?
え?
誰かって?
この方、有名なんですよ。
ローアの片隅に生まれて魔法の才能があるとわかって売られた先がなんと貴族。どっかで聞いたよね。
で、なんやかんやあって世界を救ったですって。
「おい、適当か!! ゲストだぞ。映画三部作ぐらいのエピソードがあるんだから聞けよ」
そんな時間ないし。
やっぱり皆さんが気になるのはロイドが見た白昼夢でしょ?
突然強くなったその秘密、知りたいよね?
ロイドは自分が天才だって思ってたけど、全然違うんだよね。
みんな検討もついてないでしょ?
どうしよっかな?
言っちゃおうかな?
「『怪童』を強くするためにおれがリースと試合したときの記憶を分けてやったんだ」
端的!
でもそれがすべて!!
まず『魔皇』さんにお聞きしますけど、『黒獅子』とはお知り合いですか?
「何を当たり前なことを。あいつがヤバい状況のとき助けてやったのがきっかけ。その後、試合して、気が付いたら付いてきて。でも、あいつがいなかったらヤバい状況とか結構あった」
ミカルディーテを使って早めにリースと引き合わせたのは、彼の力を信頼してのことなんですね。
ロイドは気付いてないけど、リースは全然本気じゃなかったですからね。
どの世界線でも共通して、リースは子供を殺さないし、割と助けてくれる。素質があるとわかれば絶対協力してくれるんだ。
要はお助けキャラなのね。
これで教会の敵全員ぶっ殺して、ハッピーエンドだね。
かんたんでしょ。
「いいことみたいに言ってるけど、大人になって『怪童』が弱かったら普通に殺されると思う。それに、おれがリースに会ったのは15歳だった。時を早めたことがどう影響するのかはわからない。しかしそうするだけの切羽詰まった状況だ。この世界線のロイドはそれだけ厳しい世界にいると言える」
え? まだ肝心なことを話してない?
何か忘れてたかな?
おれたちが誰かって?
ミカルディーテが推測していたでしょ。
おれたちはこっちの世界のロイド『怪童』が見ている夢の記憶のようなものだ。『怪童』の言い方をすれば閃き。
閃きは話さないって?
ああ、確かにちょっと違うね。
些細なことだ。気にすることじゃないって!!
◇
ここは『記憶の神殿』だ。
喜多村誠一が勤めていた社屋を再現した建物には無数の部屋がある。
その内、ここは夢の部屋。改めて見る必要が無い部屋。
『怪童』は脳の整理で生まれた要らないキャッシュデータぐらいにしか思ってないだろう。
しかし『怪童』が見た夢が実は別の世界のロイドの記憶だとしたら?
全く同じ精神構造物に全く同じ正確な記憶の情報があったら。
記憶の神殿(Aの記憶)=記憶の神殿(Aの記憶)
つまり、それは精神の一部を共有しているということになる。
『共有地』ができる。
ここは『怪童』の『記憶の神殿』であり、おれたちそれぞれの『記憶の神殿』でもある。
だから入口が無数にある。
『怪童』の中におれたちがいるわけじゃない。
それぞれ、物好きと世話好きとお節介がたまに夢に見る奴がどうなっているかを覗いて口出ししてるってだけさ。
いや、遊びじゃない。
手は抜けない。
『教会』に負けることはあってはならない。
この力は諸刃の剣だ。
どこかのロイドが負ければ、この秘密が突き止められるかもしれない。
その一手で、白く染めた世界が再び黒く染まる。
これはおれたちの世界を護る戦いでもある。
戦いは続いている。
だからおれたちはこの世界のロイドに圧勝を求める。




