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19.『韋駄天』 世界最強の剣士

 


 無事におれが『怪童』本人であると認められ、正式に『星章』が授与されることになった。



 その合間にもちろんゼブル商会にミカルディーテの情報を照会した。似顔絵をもって。


 受付で調査員は笑みを浮かべた。


「よく描けてますね。ミカルディーテ・アフロント。21歳。帝国軍の華ですよ。帝国内で『金帝虎紋』の指輪に認められたエリート、本物です。こんな美人は滅多にいません」


 虎の紋章の入った金の指輪をしていた。あれが帝国の魔導士の位階を表すわけか。

 いいな。王国でも証があった方がいい。


「ついでにこの護衛の男はわかりますか?」

「もちろん。似顔絵は出回ってませんでしたが……有名ですよ。あなたも知ってます」

「ぼくが?」



 実は彼の方がすごい人物だった。



「ロイド様、この似顔絵いただいても?」


 ◇



 王国に初めて魔導連盟所属の魔導士が生まれるとあって、祝いの式典が催された。


 王宮の庭園に大勢がつめかけた。

 おれに会いに、というより魔導連盟の魔導士、ミカルディーテを見にきた感じだ。



「まだ若い」

「なんと美しい……」

「帝国の名家出身と聞いていたがどうやら本当のようだな」



 しかし、ミカルディーテは社交界に興味はない。

 彼女の関心はおれだけ。

 おれも彼女に煩わしい思いはさせられない。

 そこで、護衛が誰かを明かした。


 ランハットには変わり身になってもらう。



「メイドにしたこと、まだ怒っているんですか? それとも、彼の力を見たいとか?」

「両方です。初めて見ますから。聖銅級冒険者にして、『神士七雄』、天下三剣の頂点の実力は」



 バルト人冒険者、ランハット・ソードはただの護衛ではない。

 魔導連盟と直接契約する数少ない冒険者。



『韋駄天』または『飛剣のランハット』



「それともあなたの魔法は精神を操ると吹聴した方が良かったですか?」

「彼の相手が務まる人がこの国にいるとは思えませんが」



 誰もが半信半疑だったが貴族というものは自慢が生きがいだ。

 自分の護衛の実力を知らしめるためにまたとない好機。

 例え相手が本物かどうかわからなくても。



 試合を臨む者の列は長くなるだろう。

 だがランハットはその列を瞬く間に解消してしまった。



 比喩ではない。



 本当に瞬きする間に、その場にいた剣を持つ者、全員に急接近した。



「ぐっ!!」

「何!!」

「ぬう!!」



 マイヤ、オリヴィア、ヴァイスの三人が剣で受けた。



「うぎゃー!」

「え? ロ、ロイド君?」



 おれもギリギリ反応した。吹っ飛んだが。



「――!! ほう、おれの剣を受けられたものが四人、受けきった者が一人」



 ランハットの剣はシスティナによって止められていた。



 辺りにはスッ転んだ貴族お抱えの護衛たち、それに王宮騎士たち。


 剣を抜く間もなく、押し倒されている。



「初撃に反応した長身の彼女、おれの動きを目で追えていた小柄なあの子……それにメイドの君。なんだ? ローアは女が強いのかな?」

「今のが噂に聞く『韋駄天走り』か。けど速いだけか?」

「言うね……ところで、彼に剣を教えたのは君だな?」



 ランハットの視線がおれに向かった。



「一番驚いたのは、魔導士がおれの剣を受けたことだ。傷ついたよ」

「あまり私の弟子をなめるなよ。確かに剣の才能は無いが、無いなりに手ごわくなるよう育てた」

「剣の才能がないのに、手ごわい? へえーおもしろい」



 ランハットが再びおれに剣を振った。


 今度は受けきらずに受け流した。



「よーし、そうそう!」



 できた!!



「お、おいおい……魔導士10年、剣術5年……君は剣をいくつからやってる?」

「5歳、今4年目です」

「なら、その老錬さを思わせる無駄の無い動きはなんだ?」

「得意なんです。上手い人のまねが」



 ランハットが消えた。


 おれは剣を振るい、受け流した。



「このぐらいの速さは慣れているってことか? 君の師匠、何者だい?」

「世界最強の剣士ですよ」

「言うね」



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