入れた入れたキャンセル
グチャリ
ハンドルに嫌な手応えが伝わる
何か生き物を轢いてしまったらしい。まあ確実に人ではないのでそこまで慌てているわけではないが
バンパーは極限まで短くカットしてあるし、腹下はステンレスのガードをあちこちにつけているので故障もしないだろう
今日は妻と山にドライブに来ている
《どうしたの?》
「何か轢いたわ…結構大きい」
助手席の前のバーに括り付けたトランシーバーからいくらかノイズの入った妻の声が響く
妻は、私の後ろを自分の車でついて来ている
因みに今は2月だ
ああ、ドライブというのはこの趣味に理解の無い人々に便宜上そう言っているに過ぎない
ジムニーガチ勢の私と妻は、スノーアタックを楽しむためにわざわざ深雪の獣道に特攻しているのだ
一人一台なのはスタックした際の脱出が容易だからだ
まあ私と妻の車は高級外車を買える程の金を注ぎ込んでガチガチのクロカン仕様にしてあるので、当然ウインチも付いているから単独でもまず帰れなくなることは無いが念の為だ
そういえば、何かを轢き潰したとき「テンソウ!」という鳴き声?悲鳴?が聞こえたがいったいなんの動物だったのだろうか?
帰って来た後車を見てみたが、何かを轢いたあとも雪の中を走りまくったので血などは綺麗に落ちたようだった
まあフレームに微弱な電流を流して錆を防止する装置も付けているので大丈夫だろう
さて今日は数日前に仕留めた鹿と、親戚から送られてきた猪と真鴨でジビエのフルコースだ
妻がご機嫌で赤ワインを用意している
一応元ネタをざっくり解説
夫婦(カップル?)が山道をドライブしていると車が止まってしまい「テン・ソウ・メツ」と謎の言葉を繰り返す真っ白でヒョロガリでニチャアァな気持ち悪い人型の怪異が現れる
車の近くまで来て覗き込まれるが、消えたので男が安心していると妻(彼女?)の様子がおかしくなり「はいれたはいれたはいれたはいれた…と繰り返すようになって完全に狂ってしまう
麓のお寺に駆け込んで一応お坊さんが対応はしてくれるものの「ほぼ確実に手遅れ、奥さん(恋人)は元には戻らない」と告げられるところで終わる後味の悪い怪談




