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第1話 幼馴染みが寝取られた

俺の名はミクズ、歳は先月で十五を迎え、晴れて成人となった。

近くに魔物の巣窟と化した森がある以外、ごく普通の自然に囲まれた村に住んでいる。

物心ついた頃から家族はいない、今までもこれからも自給自足の生活だ。


領主であるキーディス曰く、俺は捨て子だったらしい。

そして、キーディスに拾われた俺は養子にされる事もなく、普通の村人として狩りをして暮らしている。


家族もこれといった友達もいない、挙げ句の果てにはキーディスの息子に虐められる日々。

だが、苦痛でもないため、あまり気にした事がない。

それに、反抗したところで、かえって相手を刺激しかねない。


到底、人が住んでいるとは思えない小屋から出る。

こんなにボロボロだが、これでも俺からしたら住み慣れた立派な家だ。


いつも通り、刀を腰に差して狩りに出ようと足を進める。

雲一つない晴天、絶好の洗濯日よりだ。


すると、前から肩まで髪を伸ばしている大人しそうな少女が歩いてくる。

彼女はシャロ。俺の婚約者であり、幼馴染みでもある。

前に耳にしたのだが、村一の美人であるらしい。


そして、その後ろを付いて歩いてくる少年。

彼こそが日頃から俺を虐めている、アランだ。

朝からこいつに会うなんてついてない、どうせ何発かは殴られるだろう。


そんな事を考えていると、シャロが思い詰めた顔をして、俺に視線を向けてくる。


「ごめん。私、アランの事が好きになっちゃったの。婚約も決まってたけど、私の恋心には嘘を吐けないの」


正直、驚いた。

だが、前々からアランと親しげにしている所を見かけていたため、薄々こうなるだろうと分かっていたつもりだ。

別にシャロが好きだった訳じゃない、キーディスに勝手に決められただけだ。


続けてシャロはポツリと涙を流しては、口ずさむ。


「ダメだよね、私。本当はいけないんだって分かってるけど……私って本当に罪な女みたいだね。ごめんね、ミクズの事を裏切るつもりはなかったの」

「好きにしろ、俺は構わない」


本心をありのまま伝えた。

こういう面倒事はさっさと終わらせたい、その一心だった。

だが、どうやらそうはさせてくれないようだ。

シャロは口を押さえ、申し訳なさそうにボロボロと涙を流す。


「ごめんね、ミクズにつらい思いさせちゃって」

「……って、事だ。この負け犬が。てめぇみたいな無能の血を残したら大変だからな」


アランが俺を嘲笑う。

先程までの雰囲気をぶち壊して、奴はとてもご満悦のようだ。


「あぁ、そうだな。お前の言う通りだ」


軽くあしらってやると、アランが睨んでくる。


「てめぇ、前から思ってたんだがよ、その態度が気に食わなかったんだよ!」

「そうか。悪かったな」

「……ってめぇ、そういうのがイラつくって言ってんだよ!」


アランは怒りに身を任せ、俺を殴り倒す。

そして、倒れている無抵抗の俺を容赦なく蹴ってくる。


「この、この、このぉ! やり返してみろや、負け犬が!」


アランが吠えていると、シャロが止めにはいる。


「やめて、私のために争わないで! もう、イヤなの。私のためにあなた達が傷付いていくのは、耐えられないの!」


まったく、誰のせいでこうなったと思ってるんだ。

呆れている俺をよそに、アランは蹴るのを止める。


「ふん、シャロに免じて許してやる。せいぜい感謝するんだな、クソ野郎!」


捨て台詞を吐くと、アランはシャロを連れて立ち去っていく。

シャロは去り際に意味もなく、こちらを振り向くいているが、そんなのはどうでもよかった。

遠ざかっていく二人の後ろ姿を眺めながら、赤く腫れ上がった頬を押さえる。


「……ったく、思いっきり殴りやがったな。まあ、これで晴れて面倒事からおさらばか」


そんな時だった、背後からこちらへ向かって走ってくる音が聞こえる。

またか、今度は何事かと思いつつ後ろを振り向く。

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