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第9話「クラブ活動にしてしまおうか?」

第9話「クラブ活動にしてしまおうか?」


いつものファミレス。

そこに死体のように生気の無い表情の女子高生が三人。


ゆき「……実力テスト……どう……だった……?」


まみ「……びっくりするくらい……悪かった……」


れぃ「……英語以外壊滅……」


二学期が始まり、いきなりの実力テストと言う名の宿題テスト。

見せあいっこした三人は当然その酬いを受ける結果となった。


まみ「宿題テストがあるなんて聞いてねぇよ〜」


ゆき「いや、夏休み前に先生言ってたよ。ののこさんに言われるまで忘れてたけど……」


れぃ「……そんなもん覚えてる訳ねぇ……ちゅう話よ……」


三人ともさほど厳しくない家庭ではあるが、それでも「これはマズい」と本人が思うような点数ばかり。


最悪の場合、バイトに行く事を禁じられるかも知れないと言う危機感が漂う。


ゆき・まみ・れぃ「「「はぁ〜〜〜〜」」」


重いため息をつく三人に、能天気と言っていいくらいの口調で声をかける人物。


ののこ「やっほ〜!おぅおぅ落ち込んどるねww」


れぃ「……ののこ先生……」


ののこ「私を『ののこ』って言う口はこの口かっ?」


れぃ「ひたたたたたたた!」


ののこはれぃのほっぺたを笑顔のままつねりあげる。

ただ、その笑顔の目は笑っていない。


ゆき「の……浅野先生、そりゃそうじゃん。実力テストの点数がアレじゃあ……」


ののこ「はっはっはwwそりゃあんた達、宿題の写しあいっこしてたらそうなるわww」


まみ「お姉ちゃん、何で写しあいっこしたの知ってるだ?」


ののこ「私を『お姉ちゃん』と言う口はこの口か?」


まみ「ひたたたたたたた!」


今度はまみのほっぺたをつねりあげる。


ののこ「よいしょ」


そして、さも当然であるかのように、ののこは三人の席に座る。


ののこ「あ、アイスコーヒーお願いします」


ウェイトレスに注文を通し、完全に落ち着くののこ。


ののこ「あんた達の実力テストの点と、夏休み最後に『一緒に宿題』とか言って集まってたら、そりゃわかるわよ。もちろん私だけじゃなく、他の先生達もね」


ゆき「ま……マジっすか?……」


ののこ「そりゃそうよ。だって考えてもみなよ。物理の二階堂先生以外、みんな教職歴16年以上のベテランよ?あんた達がまだオムツしてた頃にはもう先生やってんだからwwあんた達が思い付くような事は、16年間の先輩方もみんなやってるし、先生方も毎年それを相手にして来てんだから、見抜けない訳ないよ」


言われてみればその通りである。


まみ「って事はお姉ちゃんもやってただ?……ひたたたたたたた!」


ののこ「あんた、懲りないねぇww『お姉ちゃん』じゃなくて『浅野先生』な。うん、まぁあたしもやってたクチww」


まみ「ひひょのこひょひひぇないひゃん(ひとの事言えないじゃん)。ひぇか、ひょっへひゃはひゃひひぇ(ってか、ほっぺた放して)」


ののこ「まぁ実力テストは成績には直結しないし、中間テストで巻き返しな」


成績はどうあれ、とりあえず親にテストの結果を見せなくてはいけない現実は変わらず、三人はまた重いため息をつく。


ののこ「おっと、この後演劇部に顔出さなきゃいけないんだった。じゃあこれあたしの支払い分ね。あんた達も早めに帰りなよ」


まみ「お姉ちゃん、多いよ。ひたたたたたたた!」


ののこ「四人のドリンクバー代だったらそれで足りるだろ?」


れぃ「ごちになります!」


ゆき「ありがとうございます!」


ののこ「じゃねっ」


そう言うとののこは出て行った。


まみ「お姉ちゃん、何しに来たんだろ?」


れぃ「……いつも神出鬼没……萌える……」


2杯目のドリンクをおかわりした後、ゆきが切り出した。


ゆき「ねぇ……『ゆき・まみ・れぃ』計画、クラブ活動にしてしまおうか(クラブ活動にしない)?」


れぃ「……めんどい……」


まみ「え〜〜他の人が入って来るかもしれないじゃん……」


ゆき「うんまぁそれはあるけど、さっきのののこさんの話聞いてて思ったんだ。経験って凄いな……って。あたし達スノーボード初心者じゃん?それを動画見たり、見よう見まねで滑れるようになるのかな……って。そんだから先生の中にスノーボード経験者が居たら、教えてもらえるかも知れねぇし、上手く行けばスキー場まで車とか乗せてもらえりゃあ交通費も浮く」


ゆきはニヤリと笑う。

なかなか悪そうな顔である。


れぃ「……一理ある……」


まみ「でも、他の人はあの……ちょっと…」


ゆき「わかってるって」


そう言うと、ゆきはニカッと笑う。


ゆき「ぶっちゃけね、ここでお茶するお金ももったいねぇじゃん?部室があれば、そこでダベれるし、購買のジュースなら安い!」


れぃ「……おぉ、それは魅力的だ……」


珍しくれぃが表情を変える。


まみ「……でも他の人が入って来たら、私達のコスプレの話がバレてしまうし……」


ゆき「そう!そこで、クラブ名を『スノーボード部』じゃなく、他の人が寄り付かねぇクラブ名にする訳よ」


またニカッと笑う。

なかなか悪そうな笑顔だ。


れぃ「……具体的には?……」


ゆき「例えば『ウォームビズ研究部』とか『地域活性研究部』とか『自然観測部』とか……」


れぃ「……うん。その名前だといっさら(全然)興味わかねぇ……」


まみ「クラブの名前と内容が一致してなかったら、部活動申請通らねぇんじゃねぇ?」


ゆき「そこは口八丁手八丁で」


れぃ「……顧問は騙せねえだらず(騙せないだろ)……」


その夜


まみ「……って話があってね、何とかならねえかって思ってんだけど、お姉ちゃんいい方法ねえ?」


夕飯の後、自宅でまみはののこに相談していた。

ちなみに親にテストの件で怒られた後だが、実際さほど怒られなかった。

覚悟していた分、正直拍子抜けした感じだ。

さしあたっての危機は去ったので、まみは今日の事をののこに相談。


ののこ「あんた教育実習生と言えど、教師にその相談するかね(苦笑)」


まみ「え?おかしい?」


ののこ「クラブ名と活動内容が違うクラブを設立しようって話だろ?」


まみ「違うよ。活動内容を解りにくく表現するだけ」


ののこ「どうせあんたが人見知り発揮して他の人が入るの嫌とかゴネたんだろ」


まみ「えっ?何でわかるの?」


解らいでかと言いたげな表情でののこは肩を竦める。


ののこ「それに顧問のアテはあるの?」


まみ「それは今から探す。お姉ちゃん、先生の中でスノーボードやってる先生知らねぇ?……って無理か。教師実習でこないだ入ったばかりだもんね」


ののこ「まぁ心当たりが無い訳でもないけど、それは自分達で探しな」


翌日の昼休み


まみ「……ってお姉ちゃんに言われた」


ゆき「『って言われた』ってあんた……こんな企みを教生と言えど先生に話してどうする」


片手を頭に当て、まるで頭痛に耐えているような表情のゆき。


れぃ「……まみは悪い事できねぇタイプなんだな……」


先生「そこ、図書館は静かに!」


ゆき・まみ・れぃ「「「はーい」」」


声のトーンを落として密談は続く。


ゆき「でもスノーボードやってる先生がいるってのは有力情報ね」


れぃ「……ののこさんの交友関係を洗うか……」


まみ「お姉ちゃんの友達でうちの学校の先生?そんな先生いるのかな?」


れぃ「……ののこさん卒業したのいつだっけ?……」


ゆき「そうか、高校時代の先輩でうちの学校の先生してる人がいれば……」


まみ「あ、そういやお姉ちゃんが、コスプレもスノーボードもクラブの先輩に誘われたって言ってた」


れぃ「……それをどうやって探すか……」


ゆき「図書館に昔の卒アル無いかな?」


れぃ「……ゆき、冴えてる……」


三人は本棚を過去の卒業アルを探してまわる。


ゆき「あ、あった!ののこさん卒業したのいつだっけ?」


まみ「えーっと、確かこの年」


れぃ「……ばか。ののこさんが卒業した年の卒アルに先輩が出てる訳ないじゃん……」


ゆき「でも、ののこさんの女子高生時代、見たくねぇ?」


まみ「いや、私は別に……」


れぃ「見たいに決まってんだろ!」


またしても突如キレるれぃ。


とりあえずののこが卒業した年を含む3年分の卒業アルバムを引っ張り出す。


ゆき「どれどれ?ののこさんは……っと。えーっと、浅野、浅野、浅野……あった!2組だ!」


れぃ「ちょっ!こっちにも見せ!」


ゆき・れぃ「「え゛?」」


まみ「どうしたの?」


ゆき・れぃ「「ぶわはははははは!まみがいる!」」


先生「そこ!うるさい!」


ゆき・れぃ「「ごめんなさーい」」


ゆき「ののこさんの高校時代って、まみとそっくりじゃん」


れぃ「……陽キャのまみがいる……」


ゆきとれぃは声を押し殺して爆笑している。


まみ「陰キャで悪かったねwwでも、そんなに似てるかなぁ……あ、ホントだ」


ゆき・れぃ「「ぶわははははははは………は……」」


ゆきとれぃの後ろから司書の先生が二人を見下ろすように睨みつけている。


ペコペコと謝り、また図書館は静寂を取り戻す。


ゆき「もぅ、まみ、笑かさねぇでよ」


れぃ「……まみに笑かされるとは、負けた気がする……」


まみ「それよりその先輩を捜そうよ」


ゆき「演劇部ってのがわかってるから、文化祭の写真とかクラブ別の写真を見ればいいはず」


まみ「顔だけで判別つくかなぁ」


れぃ「……演劇部の写真、めっちゃメイクしてんじゃん……」


ゆき「あたしらが言うのもアレだけど、メイクで化けるからねぇ」


まみ「逆にお姉ちゃんの先輩で先生やってるんだら(やってるんなら)、教員免許取る事を考えるとお姉ちゃんより2歳上って事になるしない(なるよね)?うちの学校で若い先生にあたり付けて、名前で探してみたら?」


れぃ「……うちの学校の先生で、若い先生って国語のヤンゴリ先生と物理の美紅里(みくり)ちゃん……」


まみ「ヤンゴリ先生?美紅里ちゃん?」


ゆき「ヤンゴリ先生は樋口先生の事。顔がゴリラで若いからヤングゴリラでヤンゴリ先生」


まみ「ヤングじゃねぇゴリラもいるの?」


れぃ「……三年の生活指導がフルゴリ。古いゴリラでフルゴリ……」


まみ「美紅里ちゃんって?」


ゆき「物理の二階堂先生。名前が美紅里だから、美紅里ちゃん」


れぃ「……さっき見た演劇部にゴリラは居なかった……」


ゆき「じゃあ美紅里ちゃんが最有力候補か……」


まみ「二階堂先生がスノーボードやってたりコスプレ勧めたりするようには見えねぇなぁ……」


れぃ「……一応探してみよう……」


ゆき「に……に……に……二階堂……あっ、あった……」


れぃ「マジかっ!」


ゆき・まみ「「しーっ!」」


ゆき「三年一組だって。どれどれ?」


まみ「え?これ?」


れぃ「……言われて見れば、美紅里ちゃんに見えなくもねぇけど……」


ゆき「今と違ってギャル感が凄い」


まみ「今の二階堂先生って眼鏡でおかっぱで、物理以外興味無ぇ……みたいな雰囲気だもんね」


れぃ「……もっかい演劇部の写真見せて……あ、やっぱし。このかぐや姫と同一人物だ……」


まみ「ホントだ!メイクと衣装で解りにくいけど同じ人じゃん」


ゆき「れぃ、どうしただ?変な顔して」


れぃ「……ん。ちょっと既視感と言うかデジャヴュって言うか……」


まみ「卒アルは貸し出し禁止じゃんね?」


ゆき「あれ使おう、カラーコピー」


れぃ「……コピーしてどうすんだ?……」


ゆき「知れた事!美紅里ちゃんとこに突る!」


そして放課後、二階堂先生がいる理化学研究室。

理科系の先生達専用の職員室だ。


ゆき「失礼しまーす」


れぃ「……しまーす……」


まみ「……シマス……」


ゆきを先頭にれぃが続き、二人に隠れるようにまみが理化学研究室に入る。


ちょうど理化学研究室に居たのは二階堂先生だけだった。


ゆき「あ、先生、ちょっと聞きてぇ事があって来ました」


二階堂「えっと、何かしら?授業でわからない所あった?」


ゆき「いえ、そうじゃなくて……これなんだけど……」


そう言って卒業アルバムをカラーコピーした紙を差し出す。


れぃ「……これ、二階堂先生っすか?……」


二階堂「きゃーーーーっ!」


二階堂先生があきらかに動揺している。


ゆき「あ、やっぱりこれ二階堂先生なんだ」


二階堂「どどどどどどうして?」


ゆき「過去の卒アルを図書館で見てたら先生と同姓同名の卒業生がいたんで……。でも先生と雰囲気違うし……」


れぃ「でもこの写真が二階堂先生で間違いねぇなら、ののこ先生の先輩って二階堂先生でビンゴじゃね?」


ガタタッ!


「ののこ先生」と言うキーワードでさらなる動揺を見せる二階堂先生。


二階堂「な……、何の話?」


ゆき「いや、今、クラブを立ち上げようと思ってて、顧問をしてくれる先生を探してたんだ」


二階堂「あ、あら、そう。で……でも私、茶道部の顧問やってるから……」


そう言うと二階堂先生はあからさまに目を反らした。


れぃ「ん?」


ゆき「れぃ、どした?」


れぃ「……いや、さっきと同じ既視感と言うかデジャヴュ……。先生、もう一回、視線を……流し目みたいなんしてくんなさい(して下さい)……」


二階堂「えっ?えっ?何の事?」


既に二階堂先生はかなり挙動不審だ。

そしてまた目を反らす。


れぃ「む〜…………」


こめかみに指を当て、何やら脳内検索している様子のれぃ。


次の瞬間、れぃはカッと目を開き二階堂先生を指差しながら、びっくりするような大声を出した。


れぃ「和装レイヤーの『つーちょん』だっ!」


二階堂「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

絶叫とともにひっくり返らんばかりの動揺。

そのリアクションに机の上の物がいくつか床に崩れ落ちる。


ゆき「どうしたの、れぃ?」


れぃ「和装レイヤーの『つーちょん』じゃん!知らねぇのか?コスプレイベントには一切来ねえけど、スタジオ撮影した写真がコスネットにアップされてて、その全てが和装のコスプレ!しかもクオリティがバカ高く、フォロワーも当然『万』越え。和装レイヤーの代表て言っても過言じゃねえ生ける伝説!」


ゆき「ちょっ、れぃ、落ち着け!二階堂先生が『つーちょん』だって証拠は?」


れぃ「バッカ!卒アルのかぐや姫と、着物を着用する茶道部の顧問!こないだコスネットにアップしていた花魁の写真の艶美な流し目とさっきの流し目!何より名前!」


ゆき「いや、わからんわからん。説明を求む!」


れぃ「だーかーらぁ!二階堂美紅里の美紅里の読み方変えたら『びくり』じゃん?『びくり』は『びっくり』。『びっくり』は『エクスクラメーションマーク』、つまり『ー』で『・』、ほら『つーちょん』じゃん!」


ゆき「あ、なるほど。それに二階堂先生の動揺を見る限り、間違い無さそうじゃん」


冷房が効いている理化学研究室なのに、二階堂先生は汗びっしょり。

目があちこち泳ぎまくっている。

そしてその視線の先に、ゆきとれぃの後ろからこっそり様子を伺っていたまみを見付ける。


二階堂「の……ののこが女子高生コスしてる!」


まみ「えっ?えっ?いえ、あの、私、お姉ちゃんの妹です……」


二階堂先生の口から、ののこの名前が出た事をゆきとれぃは聞き逃さなかった。


ゆき・れぃ「ビンゴっ!」


数分後、やっと落ち着きを取り戻した二階堂先生にゆき達が切り出す。


ゆき「ってか先生、今までまみがののこ先生の妹だって気付かなかったんか(きづかなかったんですか)?」


二階堂「だって浅野さん、ほとんど俯いて顔見せないし、浅野って苗字だってそんなに珍しい苗字じゃないし……」


れぃ「……先生……、ファンです……」


二階堂「やーめーてーっ!学校ではやーめーてー!身バレしないように髪型とか雰囲気もキャラ作ってたのにっ!……ってか、ののこの野郎!」


まみ「お姉ちゃんは何も言って無かったよ」


ゆき「ののこ先生がこの学校の卒業生だってまみから聞いて、ののこさんが学生時代に先輩からコスプレとスノーボードに誘われたって話を聞いて卒アルあさってたら先生見つけたんじゃん」


二階堂「え?じゃあののこが私の事を喋ったんじゃないの?」


そこにタイミング良くののこが入って来る。


ののこ「失礼しまーす!せんぱーい、今日学校ハケたら飯………」


凍りつく空気


ののこ「失礼しました〜」


状況を察したののこは何も無かったかのようにスッと扉を閉じようとする。


二階堂「まて、ごるぁ」


ゆき「先生、キャ、キャラが……」


ののこ「ごめんなさーい!」


逃げ出そうとするののこの襟首を二階堂はむんずと掴み理化学研究室に引きずり込む。


こうして二階堂、ののこ、ゆき、まみ、れぃの五人が顔を揃える事になった。


二階堂「うん。だいたいの事情は解った。で、私にそのスノボ部の顧問をやって欲しいと言う事ね」


ゆき「あ、その事なんだが、活動内容はスノーボードなんだが、最終的にはコスプレ滑走が目的なんで、他の生徒が入ってくるのはちょっとアレなんで、クラブの名前を他の生徒が敬遠したくなるような部名にしてえんだ」


二階堂「教師相手にはっきり言うねぇ」


二階堂はやれやれと言った表情で腕組みをする。


れぃ「……スノーボードもコスプレもされる先生が顧問として適任なんだ……ってか、先生がつーちょんさんだった時点で顧問は先生以外ありえねえ……」


ゆき「ほら、まみからもお願いしなよ」


まみ「あのっ、お、お願いします!」


ののこ「先輩、私からもお願いしますよ。私をスノボに引きずり込んだみたいにこの子らも……」


二階堂「ののこ、いらん事言わない!」


まみ「何かあったの?」


ののこ「どうやらそれを喋ると私の身が危ういようだ」


二階堂「わかった。ただし条件がある。ひとつ、私が『つーちょん』だと口外しない事。ふたつ、スノボを教えてはやるけどスキー場では教えないよ。みっつ、クラブの名前は私に付けさせる事。」


ゆき「スキー場で直に教えてくれねぇの?」


二階堂「いいか?ぶっちゃけ言うけど、クラブの顧問はノーギャラなんだよ。スノボに行くならリフト券とか全部自腹だ。自分のお金使って、自分の滑る時間を割いて、教えなきゃならん理由はあるか?」


ぶっちゃけ過ぎだろ……と思わなくもない三人だったが、ど正論。

逆に自分達が「教えてもらう」と言う事に甘えていた事を知る事になった。


れぃ「……先生の言う通りじゃん。私は納得しました……」


まみ「わ、私もそれでいい」


ゆき「すみません、甘えてました。先生がいいならその条件でお願いします。」


二階堂「よーし、なら顧問は受けてやる。クラブ名は『郷土活性化研究部』だ」


れぃ「……うわ〜絶妙に入りたくねぇクラブだ……」


こうして新たにクラブ活動化する事により三人はまた一歩目的に近づいた。


三人がクラブ活動設立の手続きをする為に退室し、残った二階堂とののこ。


ののこ「先輩、マジであの子らゲレンデで放っておくんですか?」


二階堂「まさか。もし何かあったら顧問たる私の責任になるじゃない。ののこも知ってるだろうけど、スノボは危険を伴うスポーツ。そしてレジャー。あの子達にはレジャーとしてのスノボの楽しさを知って欲しいから体育会系のクラブみたいに厳しくしたくないし、だからと言って雪だるま作るような温い感覚で取り組んだら怪我をする。スノボは自己判断が必要なスポーツ。私におんぶに抱っこでできると思ってたらそれこそ危険でしょ?だからあえてあんなふうに言ったの。顧問を受けたからには面倒みるわよ」


ののこ「先輩、なんかすみません」


二階堂「何言ってんの。ののこが目指す教師の仕事ってこんなもんよ。あんたが教師になった時、あんたがこれをやる事になるんだから」


ののこ「あの子達、スノボできるようになりますかね?」


二階堂「さぁ?あたしだって今まで十人以上スノボ誘って来たけど、まともにボーダーになったのはあんたを含め三人だけ。続かなかった子の理由はそれぞれだけど、ほとんどの子がスノボの面白さ楽しさを知る前に止めちゃったんじゃないかと思うのよね〜。だからせめてあの子達には楽しく続けて欲しいじゃん?」


ののこ「先輩、スノボに関してはストイックですもんね」


二階堂「『スノボに関しては』って何よww」


ののこ「ってかあの子達、先輩の滑り見たらビビりますよ、きっとww」


二階堂「え〜?何でよ?」


ののこ「先輩、ガチ勢ですからねww普段の先輩のイメージからは想像できない滑りしてますよ」


二階堂「そう?ま、いいや。とりあえず今日は仕事終わったから、私が『つーちょん』だとバレるきっかけを作ったののこ君に飯でも食いながらその辺を詳しく聞こうか」


ののこ「ひぃ〜〜〜!」

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