第77話「2年生の始まり」
第77話「2年生の始まり」
厳岳スキー場でのコスプレ滑走イベントから1週間。
まみ達は今日から2年生。
クラス替え発表の張り出しの前では、同じクラスになった事を喜び合う生徒や、ガッツポーズまでしている生徒すらいる。
しかしまみ達は呆然と立ち尽くしていた。
3人ともバラバラのクラス。
柳江でさえ違うクラス。
ゆき「うん……まぁクラスは違うけど、クラブは同じだし、LINEでいつでも連絡取れるし」
れぃ「……だな。あたしとまみは2つ隣のクラスだから……」
まみ「1年の時と同じクラスの子もあたし入れて6人いるし、半分は女子だし、喋った事ある男子もいるし……」
ゆき「あ、クラス委員長と同じクラスじゃん。女子は高橋さんと丸山さんか。高橋さんいるだら安心じゃん」
れぃ「……まみ……一人で大丈夫か?……」
れぃが聞きにくい事をサラッと聞く。
まみ「あ……うん、まぁ……大……丈夫……だと…………思う」
れぃ「……去年の自己紹介も『浅野です』だけだったけど、あたしはあれでいいと思う。あたしも『向井です』だけだったし……」
ゆき「そうそう。自己紹介なんて喋りてぇ人に喋らせときゃいいんだから」
まみ「ありがと。うん、でもなんかいつもと違ってなんか大丈夫な気がするんだよね」
実際、今までのまみならゆきやれぃと別のクラスになったと分かった時点で死にそうな顔になっていただろう。
また、直前まで神様だか仏様だかに同じクラスになれるように祈っていたのも確か。
だが、当然全員が違うクラスになる事も想定していたし、1年の時と違い少なくとも1年の時に同じクラスだった者もいる。
それにまみの中で、以前ほど他の人に対しての恐怖感に近い警戒心は何故か薄らいできていた。
ゆき「あ、そういや担任って誰か現時点では分からねぇんだね」
れぃ「……うん。どこにも書いてなねぇな……」
何となく「トホホ」な気分になっている三人の後ろから声がした。
高橋「おっはよ〜。浅野さん、同じクラスじゃん。一緒に教室行かず」
まみ「あ、高橋さん、お……おはよ。えっと……うん。じゃあ、ゆきちゃん、れぃちゃん、始業式の後、部活で……」
ゆき「タカハっちゃん、まみの事よろしくね」
高橋「あっはっは!何それ、お母さんキャラ?まぁ言わんとしてる事はわかるけどね。まっかせなさ〜い」
そう言うと高橋はまみを連れて行ってしまった。
れぃ「……ゆき、あれは言わんでも良かったんじゃね?……」
ゆき「あたしも言ってたから後悔した……」
れぃはフッと笑い、歩き出した。
れぃ「……あたしらも教室行かず……」
ゆき「だね」
まみと高橋は途中で合流した丸山と共に2年6組の教室に向かって歩いていた。
丸山「浅野さんが同じクラスなら今年の文化祭も優勝狙えるね」
まみ「え?」
高橋「うん。文化祭の仮装競走も頂きじゃん」
まみ「え〜〜〜……」
教室に入ると知らない人がほとんどだ。
しかし、まみの知らない人達はどうやらまみを知っている様子。
黒板に書かれた出席番号順の席に座る。
まみ『あたし、今年は出席番号2番なんだ。1番の人は……相川さん……か』
少し人見知りを発揮し、どこに視線を向けたらいいかわからないまみ。
そこに出席番号1番の相川がやって来た。
相川「おはよーっ。あたし、元4組の相川綺羅。よろしく。えっと、浅野さんって去年の体育祭と文化祭で巫狐やってた子だしなぃ?」
まみ「えっ……あ、うん……」
相川「やっぱそうじゃんね!あたしも裏十二支大戦やるんだ!去年は別のクラスだったけど、体育祭でえれぇ応援したもん」
まみ「あ……そうなんだ……ありがとぅ……」
去年に比べれば喋れているが、語尾の声はどうしても小さくなる。
相川「あのさ……ひょっとして……なんだけどさ……、裏十二支大戦のウェブ対戦で『まみ』ってプレーヤー、浅野さん?」
まみ「ど……どどど、どうしてそれを!?」
相川「いや〜、浅野さんの名前って真由美だし、ゲームのプレーヤー名が似てるしプレーヤープロフィール見たら同い年の長野だし、どっちも巫狐だし……」
まみ「あの……はい……あたしです……」
相川「やっぱりーっ!あたし何度か対戦した事あるんじゃん!わかるかな?プレーヤー名KIRARAなんだけど……」
まみ「え?白鹿……『雨乃』使いのKIRARAさん?」
相川「そうそう!うわ〜!嬉し〜!以前、チーム戦の時同じチームになった時フレンド登録してもらったんだ」
話が盛り上がりそうなタイミングで校内放送がかかる。
「これより始業式を始めます。体育館に集合して下さい」
この放送をきっかけに全員がぞろぞろと体育館へと移動を始める。
体育館までの移動時間もまみは偶然ゲームでフレンド登録していた相川と喋りながら移動した。
まだゆきやれぃと喋るのに比べれば緊張した様子ではあるが、以前のまみと比べれば驚くべき変化だ。
体育館に入り、2年6組のプレートの前に出席番号順に並ぶ。
やがて始業式が始まった。
1年生は既に入学式の時に担任が発表されているが、2年生3年生の担任発表は始業式で行われる。
2年1組から順に担任が発表され、時には歓声があがり、時には失意の声が上がったりする。
発表された担任教師がそのクラスの前に移動するとその声も収まる。
「続きまして、2年6組担任……二階堂美紅里先生。受け持ち教科は物理」
相川「二階堂先生だ!やったぁ!」
まみ「美紅里ちゃん、担任なんだ。良かった〜」
相川「美紅里……ちゃん?」
まみ「あ、美紅里ちゃんはあたしの所属してる郷土活性化研究同好会の顧問してもらってて、そこでみんな美紅里ちゃんって呼んでるから思わず……」
担任が発表され、概ね歓喜の声が上がる。
特に男子生徒はガッツポーズまでする生徒がいるくらいだ。
やがて校長の長い話が終わり、教室へと戻る。
先に教室に入り、席について間もなく教室の前扉が開き、美紅里が入って来た。
美紅里「皆さん、おはようございます。今日からこのクラスの担任になりました二階堂美紅里です。担当教科は物理です。担任を持つのは初めてですが、皆さんとしっかりコミュニケーションを取って担任を務めたいとおもいます。よろしく」
クラス中から拍手が上がる。
美紅里を「美紅里ちゃん」と呼ぶ生徒も少なからずいる。
女子生徒「美紅里ちゃーん!よろしく〜!」
美紅里「二階堂先生だ!」
このやり取りも既にこの学校では定番の流れとなっている。
美紅里「では、皆さんの事を知りたいので、順番に自己紹介をお願いします。では出席番号1番……相川さんから」
そう促され、相川が立ち上がる。
相川「相川綺羅です。剣道部に所属してやす。よろしくお願いしやす」
クラス中から拍手が湧く。
美紅里は小さく頷いた後、チラとまみを見る。
美紅里「はい、よろしく。では次、浅野さん」
いつも通り緊張はしているが、今日のまみはちゃんと声が出た。
まみ「浅野真由美です。よろしくお願いしやす」
そう言うとスッと席に座る。
相川よりも少し大きめ拍手が上がる。
主に男子生徒が強く拍手をしているようだ。
もちろんまみは知らないが、このクラスには「浅野真由美ファンクラブ」の会長と会員、合計4名が同じクラスだったのだ。
そしてクラス発表の張り出しの前でガッツポーズをしていた一団こそ彼らだったのだ。
さしあたり、まみがちゃんと自己紹介を終えて、美紅里も内心胸をなで下ろした。
クラス全員の自己紹介が終わり、最後に美紅里が話し出す。
美紅里「はい、ありがとう。これから一年間このクラスメンバーで力を合わせてやって行きたいと思います。では次に学級委員長を選出したいと思いますが、立候補者はいる?」
さっきまで賑やかだった教室が静まり返り、全員が気配を消そうとしている。
美紅里「あー、言い忘れてたが、一学期、二学期、三学期それぞれのクラス委員、体育祭実行委員、文化祭実行委員、修学旅行実行委員、全員いずれかの委員を一度はやってもらう事になるのでよろしく。あと、各委員は男女1名ずつだ。それを踏まえた上でやりたくない委員を押し付けられてやるか、自発的にやってもいい委員をやるか好きに選んでくれ」
クラス中がざわつく。
美紅里「あと、今日は全ての委員が決まったら解散だ。さしあたり……1年の時の委員長経験者……土田、委員長代理として司会進行してくれ」
1年の時にまみ達のクラスで委員長としての手腕を奮った土田が委員長代理として指名される。
渋々土田は前に出て司会進行を始める。
土田「え〜っと、ご紹介に預かりました土田だ。さっき二階堂先生が言った委員で、やりてぇ委員を先に決めるのはどうかと思う」
そうすると一人の男子生徒が手を挙げる。
「俺、体育祭の実行委員やりてぇ」
それに続きどんどん立候補者が出て来る。
「あたし、修学旅行委員やりたーい」
「あ、あたしも!」
「文化祭実行委員やりてぇ」
続々と委員が決まって行く。
そうなると、当然のようにやりたくない委員が残ってくる。
そうなると立候補していない者達に焦燥感が出て来る。
『このままだったら委員長やらさせる』
焦燥感にかられているのはまみも同じだ。
まみ『あたしに委員長とか無理!何とか目立たねぇ委員にならなきゃ』
まみもおずおずと手を挙げる。
土田「えーっと、浅野さんは何やりてぇ?」
まみ「えっと……一学期の……保険委員を……」
その直後、「浅野真由美ファンクラブ」の面々が一斉に手を挙げる。
FCメンバー「「「「一学期の保険委員やります!」」」」
ファンクラブ内では抜け駆け禁止のルールがあったが、皆一斉に抜け駆けしようと動き出した。
もちろんそんな裏の事情を知らないまみは、とりあえず一学期の保険委員に収まり、ひと安心。
様々な駆け引きが行われ、全ての委員が2年生のどのクラスより早く決まった。
しかも一年間を通して全ての委員が。
他のクラスに先んじて解散になった2年6組。
まみはそそくさと教室から出て理科準備室に行った。
まみ「失礼しやーす」
まだ誰も来ていない。
10分ほどしてゆき、そこからさらに5分遅れてれぃが集まった。
ゆき「まみ、どうだった?」
まみ「何が?」
ゆき「新しいクラス」
まみ「うん。前の席の子が裏十二支大戦のウェブ対戦のフレンドの子だった」
これを聞いただけでゆきとれぃは一安心。
ゆきとれぃは最悪の場合、まみが新しいクラスで一言も発せず一日を終える可能性もあると思っていたのだ。
ゆき「あ、あとまみのクラスの担任、美紅里ちゃんか〜。いいなぁ〜」
れぃ「……ゆきんとこの担任誰だっけ……」
ゆき「現国のカバ夫君」
れぃ「……篠原か……」
ゆき「れぃのとこは?」
れぃ「……数学のとっきん……」
まみ「時森先生ならいいじゃん」
れぃ「……悪かないけど、とっきん、暑苦しいんじゃん……」
ゆき「わかる」
そう言うとゆきはカラカラと笑う。
れぃ「……それよりもさ……動画。早く見てぇ……」
まみ「あたしも!」
昨夜、ゆきの所にましろんから動画完成の連絡と共に動画ファイルが送られて来た。
ゆきはそれをSDカードに入れて持って来ていた。
ゆき「美紅里ちゃん来たら、理科室のプロジェクター借りれねぇか聞いてみよ!やっぱ大画面で見てぇじゃん!」
まみ「借りれるかなぁ」
れぃ「……ダメなら理科準備室のこのテレビだな。このモデル、うちにあるのと同じだがらSDカードから動画の再生できるの確定してるし……」
ゆき「どっちもダメだった時用に、一応タブレット持って来た」
そんな話をしていると美紅里がやって来た。
美紅里「あ〜、疲れた。担任なんてやるもんじゃないわ」
いきなり愚痴である。
しかも自分の受け持つクラスの生徒であるまみを目の前にして。
ゆき「美紅里ちゃん、理科室のプロジェクターって使っていい?」
美紅里「ダメ」
れぃ「……え〜、いいじゃん、ケチ……」
美紅里「あれは学校の教育備品だから学校に使用許可出さなきゃダメなの!」
ゆき「じゃあ、このテレビはいい?」
美紅里「うん、まぁそれなら良いけど……何見るの?」
れぃ「……こないだの厳岳スキー場のコスプレ滑走イベントの動画……」
美紅里「まぁ、いいわ。でも音はあまり大きくしないでよ」
ゆき「やった!美紅里ちゃん、ありがとう!」
れぃ「……あ、ちょっと待って……あの……柳江も見てぇって言ってんだけど、呼んで……いい?……」
ゆき「あたしはいいよ」
まみ「あたしもいいよ」
ゆき「そういや柳江君が撮った写真も、柳江君編集して持って来てくれるって言ってたけど、まだかな?」
れぃ「……あぁ、それもノーパソに入れて持って来るって……」
ゆき「じゃあ、どっちから見る?写真?動画?」
まみ「どっちも楽しみ〜」
待つこと10分。
柳江が来た。
柳江「失礼しやす」
れぃ「……ト……柳江君、遅い……」
柳江「ごめん、委員決めるのに手こずって……。で、このテレビにノートパソコン繋いで再生したらいいのか?」
柳江はそう言いながらもう配線を繋ぎ始めている。
柳江「お待たせ。準備できたよ。スライドショー再生していいか?」
ゆき「え、あ、うん」
何となく柳江のペースに巻き込まれ、写真のスライドショーから見る事になった。
まず1枚目に写されたのは、着替えた直後の集合写真だ。
ホワイトバランスなど、ちゃんとレタッチされている。
ゆき・まみ・れぃ「「「おぉ〜〜〜」」」
次々と写真が再生される。
ゆき「ゴンドラの絶景ポイントの写真いいね!」
まみ「滑り出す前だね。ゆきちゃんカッコいい!」
れぃ「ののこさん!やっぱののこさんステキだ……」
まみ「ちーちゃんの片足で滑るの凄かったよね〜」
わいわいとあの日の事を思い出しながら鑑賞する。
スライドショーはまみの個別撮影のシーンに入った。
ゆき「お〜!まみ、えれぇ雰囲気出てんじゃん!」
れぃ「……この髪のなびき……偶然か?すげぇな……」
まみ「やだ!この写真、あたしニヤけてねぇ?」
れぃ「……いや、でも良い表情だ……」
そして次の写真。
一同が言葉を失う。
まみがゲレンデで撮った直後、柳江に見せてもらった写真。
着物の袂を押えてスピンしている時の写真だ。
顔や体にはピントが合っているが、腕やお祓い棒の紙垂がいい感じにブレて動きを感じさせる写真だ。
そしてゲレンデで見せてもらった時はカメラのモニターが小さくわからなかったが、少し目を細めて回転する方向を見ているその表情は、ゾクリとするくらいの色気を放っていた。
れぃ「エッロぉっ!!」
まみ「ちょ……れぃちゃん!」
ゆき「いや、マジでビビったわ。まみの普段のオドオドした感じ、全然ねぇじゃん。堂々としてて、なおかつ余裕の微笑み。え?これレタッチした?」
柳江「多少のレタッチはしたけど、浅野さん本人の部分は触ってねぇよ」
この写真には和装レイヤーで演劇部の顧問である美紅里も少し驚いた。
美紅里の目には役者が完全に役に入り込んでいる時の雰囲気をまみの写真から感じたのだ。
だが、今は郷土活性化研究同好会の部活中であり、演劇部ではない。
あえて美紅里はその感想を口にする事は無かったが、仕事の片手間に写真をチラ見していた美紅里が手を止めて写真に見入るくらいの出来栄えであったと言う事は否めない。
柳江「実はこの次の写真の方が凄いんじゃん」
そう言うと柳江は次の写真にページを送った。
画面に写し出されたのは最後のキメのシーン。
手で印を組み、睨み付けるような眼差し。
舞い上がった雪の粒と静止画では絶対に撮れない髪と紙垂の躍動感。
ゆき「……何て言うか……すげぇ……」
れぃ「神ってる……この写真は神ってる……」
美紅里「これは良い写真だわ」
美紅里も思わず感想を声にだしてしまうくらいの迫力。
柳江「写真の隅にましろんさんのアクティブカメラがチラっと写ってしまってたんだが、そこはレタッチで消した。あと、光の加減をちょっといじって……」
れぃ「いや、それはこの際どうでもいい」
柳江「れぃちゃん、そこは聞いてよ」
れぃ「トシのレタッチが凄いのはわかる。写真もこのタイミングを逃さなかったのも神。でもまみのこの表情の凄さを前にしたらどうでもいいってなる」
柳江「あはは……まぁ……ね」
当のまみは驚きの表情のまま、少し目を潤ませ、また顔も少し紅潮している。
両手を口に当て、微動だにしない。
ゆき「おーい、まみさーん!」
まみ「巫狐だ……。あたしが巫狐になってる……」
れぃ「……いや、そりゃそうだろ……とは言うものの、言いてぇ事もわかる……」
ゲームのパッケージイラスト、設定画、ゲーム内でのグラフィック絵など、巫狐のイラストは多数ある。
衣装を着込んでメイクも巫狐のメイクをしているが、元は浅野真由美だ。
根本のところが違う。
だが、テレビに写し出された巫狐は紛れもなく巫狐であり、巫狐のコスプレをした浅野真由美では無かったのだ。
まみ「あたし……コス滑走……ううん、スノボやってホント良かった!まさかこんな写真が撮れるとは思って無かった……」
れぃ「トシ、良かったな。カメラマン冥利に尽きるじゃん」
柳江はそれに対して笑顔のまま無言で頷いた。
ゆき「……ん?……トシ?」
れぃ「!?」
ゆき「今、れぃ、柳江君の事、トシって……」
れぃ「あーあーあー!次!次ってあたしの写真じゃん!?早く見せてよ!」
れぃの狼狽え方が凄まじく、ゆきはこの件については後からゆっくり弄る事にした。
柳江「じゃあ、次行くよ」
そこかられぃのグルキャナックダンスの写真が続く。
心なしか枚数が多い。
ゆき「うわ〜!この写真とか、エンディングのグルキャナックの表情そのまんまじゃん!」
れぃ「……この時もう息切れしてて、表情作るのも必死だったぞ……」
ゆき「あ、このグルキャナック、可愛いっ!」
れぃ「あたしもここのグルキャナックの表情好きなんじゃん!えれぇ可愛いよなっ!鏡の前でえれぇ練習したもん」
ゆき「グルキャナック愛が凄い」
まみ「ぷっ……」
さっきまで自分の写真の感動で言葉が少なくなっていたが、れぃの最後のキメ写真であるグルキャナックのズッコケシーンの写真を見て、思わず吹き出した。
ゆき「良いじゃん良いじゃん!雰囲気出てる!」
れぃ「ここな〜……エンディングだったら上からドクロ落ちて来て頭にスコーンって当たるんじゃん。それも再現したかったけど、さすがにそればどうしようも無かった」
まみ「でも凄く良い写真!」
写真はトレイン滑走の写真になる。
ゆき「あたし……、ひょっとしてえれぇカッコ良いんじゃね?……」
れぃ「自分で言うか……。いや、でも確かにカッコ良いな」
まみ「後のトレイン滑走を率いている感が凄い!」
そして写真はゆきの滑走写真になる。
柳江「吉田さんの写真は、ましろんさんから絶対に画角に入らねぇように事前に釘刺されたから長距離から望遠レンズで撮るしかなくて、あまり枚数撮れなかったんだけど、何枚かは良いの撮れた」
剣を引きずり雪飛沫が上がっている写真や、両手にレイピアを持ち構えている写真。
スライドショーの写真がめくられる度に皆で歓声を上げる。
柳江「んで、これが吉田さんのベストショット」
画面に写し出されたのはヘルメットを脇に抱え、遠い目をしたシルフィードの髪が風でなびいている写真だ。
ゆき「カッコ良い!あたし、今までの人生で一番カッコ良い瞬間!間違いねぇ!」
れぃ「……ゆきー、落ち着けー……」
まみ「カッコ良い……って言うより……シルフィード……綺麗……」
れぃ「ってか、普段のゆきを知ってたら、こんな表情するなんて想像つかねぇよな」
ゆき「見直したか!あたしは美人さんだったのだ!」
実際にゆきはかなり美人である。
だが、それを本人が口にする事は当然無く、普段のゆきは言動などから美人に見えないように気を付けているくらいだった。
ゆきは本来、見た目だけでチヤホヤされるのを嫌っているからだ。
そんなゆきが仲間の前で堂々と「あたしは美人さんだったのだ」と言うのはかなり珍しい。
れぃやまみにしてみれば、違和感さえ感じる。
逆に言うなら、それだけまみやれぃに心を許している証拠だろう。
ゆき「いや〜、柳江君、ホント感謝だわ!ありがとう!」
柳江「俺も良い写真が撮れるのは嬉しいし、良い被写体になってくれた皆さんには感謝しかねぇ」
写真はいよいよまみとちーとの戦闘シーンの写真になった。
柳江「このシーンは先に謝っておきやす。浅野さんとちーさん、それぞれにましろんさんがピッタリ着いてたのであまり枚数撮れなかった」
それでも巫狐と美卦が戦っているシーンの写真が続く。
ましろんが絶妙に写らない角度だ。
れぃ「……これ、カウンター入れた時の写真じゃんね。これ……いいな……」
ゆき「最後の勝ちポーズも最高じゃん」
柳江「ボク的にはましろんさんの位置から撮りたかったんだけど、動画がメインだったからそこは諦めるしか無かった」
そして最後にラスト1本滑る前の集合写真。
ゆき「これ……いい……」
れぃ「……やば……なんか涙出て来た……」
まみ「あたしも……」
ゆき「楽しかったもんな……あの日……」
満面の笑顔で写るゆき、まみ、れぃ、そしてちー。
ゆきとちーはまだしも、その写真には人見知りでオドオドした感じなど一切無いまみと、ジト目でも仏頂面でもない本来の可愛いれぃが写っている。
れぃ「あはは……でも、こんな表情、普段のあたしと違い過ぎてちょっとハズいや……」
ゆき「いや、そうでもねぇぞ。れぃは気付いてねぇかもだけど、キャラ忘れてる時はちょいちょいこんな表情してるぞ」
れぃ「ぇ゙?……マジか……?」
ゆき「してるよな?まみ」
まみ「うん。してる。ってか、コミゲ行った時の電車の中とかでもたまにこんな表情してたよ」
れぃ「マジか〜〜〜〜!?ハズっ!うわ……ハズっ!」
柳江「うん。れぃちゃんたまにこの表情見せるよ」
れぃ「いや、トシは今は喋らねぇで!」
まみ「トシ?」
れぃ「はわわわわわわわ………」
そこから少しの間、主にゆきが……ではあるが、れぃが柳江の事を愛称呼びしている件についていじっていたが、れぃがキレモードになったのをきっかけにれぃをイジるのは終了した。
ゆき「別に隠さんでもいいのにね〜。れぃと柳江君が付き合ってるの、あたし達知ってんだから」
れぃ「うっせぇ……言うのは良くても指摘されるのはハズいんだよっ」
そう言うとれぃはプイと顔を背ける。
まみ『やっぱれぃちゃん、可愛いや』
そう頭の中で考え、まみは珍しく少し意地の悪い笑顔でほくそ笑む。
さしあたり全ての写真を見終え、全員が大満足だった。
ゆき「さて、これから動画だけど、テンション上げすぎたわ。一同クールダウンで休憩しよっ……ってかお手洗い行ってくる」
まみ「あたし飲み物買って来ずかな。みんなもいる?」
れぃ「あ、あたしも行く」
ゆき「あたしのも買っといて!あたし、ペプシ!」
れぃ「あいよー」
10分後休憩を終え、動画のSDカードをスリットに挿入。
ゆき「じゃぁ……行くよ……」
ゆきは少し緊張した面持ちでまみ達に視線を送る。
まみとれぃも真剣な眼差しでコクリと頷く。
そして動画再生のボタンが押された。




