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第69話「なんじゃそりゃぁ」

第69話「なんじゃそりゃぁ」


学校の最寄りの駅から同じ制服を着た学生がぞろぞろと出てくる。

その人の波の中にれぃはいた。


ずっと足元を見ながら歩いていたので途中でクラスメイトに会ったのか誰にも会わなかったのかの判断さえ付かない。


れぃ『学校に着いてしまった……』


校舎に入り、自分の教室へ向かう。

もちろん、朝家を出る前から今まで頭の中は今日の放課後の事で頭がいっぱいだ。

とにかく放課後までは柳江に会いたくない。

マフラーをぐっと押し上げ、顔を隠すようにして教室までの廊下を進む。


無事、柳江に会う事なく教室に辿り着く。


ゆき「れぃ、おはよー!……って、どうした、その隈!」


思わず声に出してしまったが、聞いた瞬間その隈の原因を自分が知っている事に気付いた。


ゆき『ひょっとして、れぃ、柳江にフラれたのか?』


ゆきは偶然見てしまった柳江からのLINEメッセージは


「さっきは告白してくれてありがとう」


の部分だけだ。

続く内容が告白を受け入れるかどうかの判断は付かない。


れぃ「……ん。ちょっと寝不足だ……」


れぃはコートも脱がずにそのまま机に突っ伏す。

額が机に当たり、ゴンと言う音を立てる。

だが、そのままれぃは両腕をだらりと力無く垂らし微動だにしない。


ゆき「そっか……でも、コートは脱いでおかねぇと先生来たら言われるぞ」


あえて寝不足の理由に触れず、話をそらす。


れぃは机に突っ伏したままもぞもぞとコートとマフラーを脱ぐ。


ゆき「貸しな。ロッカーに入れておいてやるから。先生が来るまでちょっと寝ときな」


れぃ「……あんがと……」


れぃは突っ伏したままコートとマフラーを丸めてゆきに預ける。


ゆきがれぃのコートを教室の後のロッカーに入れている時にまみが教室に入って来た。


まみ「あ、ゆきちゃん、おはよー。あれ?れぃちゃんどうしただ?」


ゆき「なんか寝不足らしい。そっとしておいてやって」


まみも思わず聞いてしまったが、即座にれぃの寝不足の理由を察する。


まみが目にしたメッセージは


「本当は俺の方から告白しようと思ってたけど」


の部分。


まみ『柳江君からのLINEに気付いてテンション上がって眠れなかったのかな』


まみはチラとれぃの方を見て、ゆきに愛想笑いを見せて「わかった」とだけ言い残し、自分の席に向かう。


この間、れぃはうたた寝していた訳ではない。

眠気はあるが相変わらず目はバッキバキである。


そして頭の中では「どうしよう」と言う言葉がぐるぐると回り、答えが出ないまま焦燥感だけがれぃを支配している。


そんなれぃの苦悩をクラスメイトが知るはずもなく、またれぃが机に突っ伏していてもそれに違和感を覚える者もほとんど居なかった。


れぃの苦悩を知るはずもないれぃの前の席の女子が別の女子と話している。


女子生徒「んでさぁ〜、中学の時の友達にLINEしたんだけど、既読無視されて……ありえねぇよね?」


それを机に突っ伏したまま耳にしたれぃは自分も柳江からのLINEに対して既読無視している事に気付く。


れぃ『やべやべやべやべ……あたしも柳江からのLINE、既読無視してんじゃん!「返事を聞かせて下さい」に、今からでも何か返す?でも、何て返せばいいんだ?「はい」てだけ返す?いやいや、そりゃそれで何かアレだらず……。じゃあスタンプで……って思い付くスタンプってグルキャナックが「OK」って言ってるやつか?いや、あのスタンプは何て言うかノリが軽い。じゃあ「よかろう」ってスタンプ?いやいや……』


また新たな悩みが増えたれぃ。


そんな事をまたぐるぐると考えていたら、後の席のゆきが背中をつついて来た。


れぃ『んだよ、ゆき……こっちは考え事してんのに!』


ゆき「れぃ……れぃ!先生来たよ!」


ハッと顔を上げると既に担任が教壇にいて、全員起立している。


慌てて立ち上がるれぃ。

慌てて立ち上がったせいで椅子が派手に倒れ、ガタンと大きな音を立て、クラス中の注目が集まる。


担任「向井、どうした?目の下に隈できてるし、おでこ赤いし……大丈夫か?」


れぃ「……問題ありやせん……」


このやりとりのせいで、れぃの目の下に隈が出来ている事がクラス中に周知される事になった。

密かに頭をかかえるゆきと何故かあたふたしてしまうまみ。


朝礼が終わり、1限目。

さすがに授業中も机に突っ伏したままと言う訳にも行かないので、起きてはいたが始終教科書を眺めたままで授業の内容は全く頭に入って来ない。


さしあたり1限目の間ずっと考えていたLINEの返事内容。


文字だけて「わかりました」とだけ送る。

送った後にこれて良かったのかまた頭を悩ませる。


2限目、3限目、4限目。

ずっと答えの出ない悩みに無為な時間を過ごす。

そして昼休み。


ゆき「れぃ、部室行って弁当食べよ?」


既にまみも弁当の入った小さなカバンを手にゆきの横にいる。

あえていつも通りを装うゆき。


れぃ「……あ……うん……」


れぃもお弁当の入った小さなカバンを持ち、ゆき達に付いて行く。

いつもと違い、ゆきとまみの後に隠れるようにして。


三人は当たり前のように郷土活性化研究同好会の部室である理科準備室に入る。


ゆき「こんちゃーっす」


まみ「失礼しまーす」


れぃ「……ます……」


いつもの三人組が入って来たのを見て美紅里は少し呆れたようなため息をつく。


美紅里「あなた達ねぇ……いつも言ってるけど部室使っていいのはクラブ活動の時間だけよ?」


ゆき「あはは。いや〜、美紅里ちゃんに昨日の話聞いてもらいたくって」


美紅里の苦言を気にする様子もなく、ゆきはさっさと弁当を広げ、まみもそれに倣う。


思えばまみも図々しくなったものだ。


れぃもいつも通り無言で椅子に座り弁当を広げるが、美紅里はれぃの様子がいつもと少し違う事に既に気付いていた。

美紅里はその事を言及する事は無かった。

と、言うのもゆきがそれより先に昨日のコス滑走の事を喋り出したからと言う理由もあった。


会話しながらのお弁当タイムは、ゆきがほぼ一方的に喋り、たまにまみが発言する程度。

れぃは始終無言。


いつもならゆき6割、れぃ3割、まみ1割くらいの比率で喋る。

今日はゆき8割、まみ2割。

その点を見てもれぃがいつもと違うのは見て取れた。


三人の弁当箱が空になったのを確認し、会話が途切れたタイミングで美紅里が切り出す。


美紅里「さて、ごはん食べ終わったら教室に戻りなさい。あ、れぃはちょっと残っときな。話があるから。ゆき、れぃが5限目に戻らなかったら体調不良で保険室行ったって言っといて」


全てを察したゆきは「はーい」とだけ答えてまみと早々に部室を後にした。


ゆき達が部室を出て数秒後、まさかゆき達が聞き耳を立てているとは思わないが、れぃの気持ちを切り替える時間を設けた後、美紅里は切り出した。


美紅里「れぃ、何があった?」


れぃ「……何にも……」


美紅里「時間の無駄になる問答は止めよう。それとも喋りたくないか?それなら聞かないけど」


れぃは美紅里には全て見抜かれていると察したが、何を喋ればいいかわからない。

代わりに大粒の涙が両目から零れ落ちた。


堰を切った涙はとどまる事を知らず、どんどん溢れ出してくる。

そうなると色々と抑え込んでいた感情も爆発する。


ついにはれぃは声を出して泣き始めた。


れぃ「うぇぇぇぇぇぇぇ………」


まるで子供のような泣き方だ。

よほどれぃの中に複雑で混沌とした物が溜まっていたのだろう。


その間、美紅里は黙って待っていた。


数分後、ようやくれぃが落ち着いてきた。

ヒックヒックとしゃくり上げているが、涙は止まったようだ。


美紅里は無言でボックスティッシュを差し出す。


れぃも無言で受け取り、派手な音を立てて鼻をかむ。


美紅里「落ち着いた?」


れぃは無言で頷く。


美紅里「喋れる?それともやっぱり喋りたくない?」


れぃ「……わかんねぇ……」


この答えこそがれぃの心情を物語っていた。


美紅里「そっか……あたしがれぃの今抱えている事を解決できるかはわからないけど聞くだけならできる。話す事によって解決の糸口が見つかる事もあるよ」


れぃは今まで誰にも頼らず生きてきた。

実際は親や学校の先生に助けられて来たのだろうが、れぃ自身は極力他人に頼らず自分で物事を解決する事を心がけていた。

ましてや恋愛なんて初めて。

普段から誰かに何かを相談する事がほとんど無いので、相談し慣れていない。

また常に気を張って「負けてたまるか」と言う気持ちが強い。

泣くことなんてここ数年無かった。


だがさっき数年ぶりに大泣きしたせいか、れぃの心のバリケードはぐずぐずになっていた。

そのせいか、れぃは喋る気にはなっていないが、口が動き出した。


だが、言葉を探しているのか「え〜……と……」とか「あ〜……」とかしか口から出て来ない。


それを見て美紅里が口を開く。


美紅里「恋愛の話でしょ?」


れぃ「!?」


今まで視線を落としていたれぃがバッと驚いた表情で美紅里を見る。

そしてバツが悪い表情で、また俯く。


れぃ「恋愛……とかの話になるかわかんねぇんだけど……まぁ……そう言う話て言えなくもなくて……。でもどうしてわかっただ?」


美紅里は少し笑顔になり、さもありなんと言った表情で答える。


美紅里「そりゃ普段のれぃと今のれぃとの差。あとは雰囲気。ってか、それくらいわかるわよ。私、何年生きてると思ってんの?」


れぃ「……あたしの倍……」


即座に美紅里はれぃの頭をペシっとはたく。


美紅里「あたしはまだ20代だ」


一瞬、キョトンとしたれぃ。


れぃ「……えへへ……えへへへへへ……」


無表情なれぃがこの時は何とも頼りない笑顔を見せる。

何だかいつものやり取り。

ようやくれぃの緊張がほぐれてきた。


美紅里「どうだ?喋れるか?」


れぃ「……うん。上手く説明できるかわかんねぇけど……」


れぃは昨日から今日にかけての出来事をれぃなりに一生懸命話した。

話し出した時は、まだ話す事に抵抗を感じていたし、事実や感情、不安や恐れ等も入り混じるので時系列はぐちゃぐちゃ。


それでも美紅里は相槌を打つだけで、じっくりと話を聞く。


もうとっくに昼休みは終わり、5限目に入っている。

ようやくれぃは心の中に抱えていた物を全て吐き出した。


れぃ「……て、感じで、どうしたらいいか……」


美紅里「意見していい?」


れぃ「……はい……」


美紅里は少し間を開けて話し出す。

声のトーンも表情も穏やかで優しい。


美紅里「あたしが話を聞いた限り、れぃが考えるべき事じゃない事も考えてしまってるよね。と、言ってもどの事か判らないだろうけど……。ようはまみの事」


れぃ「……でも、あたしはまみとの関係性を崩したくねぇし……」


美紅里「何で崩れる前提なの?」


れぃ「だって!……まみは極度の人見知りで……」


美紅里「それは十分知ってるわ。でも、まみも随分成長したわ。それはれぃやゆきと友達になって、あなた達に引っ張られてここまで成長したの。当初のまみからはそれはそれで怖いと感じる事だったかも知れないでしょ?」


れぃは目を伏せたまま無言で頷く。


美紅里「まみの人見知りがマシになって来てるのは、あなた達やあなた達と友達付き合いしてる中で出会った人や、交流して来たクラスメイトや様々な人達のおかげ。まみが人見知りだからと言ってまみを人から遠ざけるのはまみの成長を抑制する事になるわ」


れぃは反論する事もなく、じっと動かず、話を聞いている。


美紅里「まみの人見知りはまみの問題。まみが自分で乗り越えるべき事。そりゃまみは必要が無ければ知らない人や慣れてない人を距離を取ると思う。その人見知りの感情とれぃとの関係を天秤にかけた時、れぃはまみから切り捨てられる存在なの?まみにとってれぃとゆきはかけがえの無い友達なのよ」


またれぃの目から涙が溢れてきた。

美紅里の言う通りだ。

自分はまみを言い訳に、現状から逃げたいと無意識に思っていたのだ。


美紅里「れぃもまみが大事なんだね」


れぃは無言で頷く。


美紅里「だよね。でもれぃはまみの友達であって、親でも保護者でも無いのよ」


そう言った瞬間、美紅里の脳裏には過保護過ぎる見慣れた保護者の一人の顔が過った。

少し苦笑いして美紅里は続ける。


美紅里「だから今回の事はまみの事は抜きにして考えなきゃね」


れぃ「まみの事を抜きにしても、あたしどうしたらいいかわかんねぇんじゃん」


美紅里はうんうんと穏やかに頷く。


美紅里「怖いんだね」


れぃ「はい」


これほどまでに素直に「はい」と言った事は今までに無かったかも知れない。

ましてや「怖い」と言う、れぃが他人に知られたくない感情。

スノボの時に感じる怖さと違った精神的な「怖さ」。

それを感じている事を今までのれぃなら絶対に認めなかっただろう。


美紅里「それから、さっきの話を聞いて、れぃが考えなくちゃいけないのに全く考えて無い事もあるわ」


あれほど考えたのに、考えて居なかった事などあるだろうか。

れぃはさっぱり見当が付かない。

その気持ちを見抜くように美紅里が答えを言う。


美紅里「れぃが考えなきゃいけない事で考えていない事。それは柳江君の気持ちよ」


れぃ「……あっ……」


れぃの中で、今回の柳江の立ち位置は「事を大きくした張本人の一人」であり、なんなら「立ち塞がる壁」もしくは「解決しなくてはいけない問題の原因」的な感じだった。

それ故、柳江の気持ちなんて物は文字の上ではわかっていたが、本当の意味では全く考えて居なかったのである。


美紅里「れぃの言うとおり、間違えて送ったスタンプに渡りに船とばかりに便乗したのかも知れない。でも、全く意識してない女の子からそんなスタンプを送られて来たとしても、その場で自分も好意があるなんて言わないわよ」


れぃの脳裏に昨日柳江が行った「俺も!」が再生され、一気に赤面する。


美紅里「それに、普段のれぃを柳江君が見ていたのなら、そのスタンプが間違えて送られて来たものかも知れない……とは思うでしょうね」


れぃ「そこなんじゃん!間違えかも知れねぇのに何で……」


美紅里「間違えかも知れない。下手に告白したら、れぃからスタンプを間違えて送っただけでそんな気は無いと拒絶されるかも知れない。そんな恐怖とリスクを彼は背負ってでもれぃに気持ちを伝えたんだよね。逆の立場で考えてみて?れぃはその気があったとしても、そんなスタンプ一つで告白する勇気は出せる?」


確かに無い。

これはれぃ自身、断言できる事だ。


れぃ「……考えて無かっただ……」


美紅里「柳江君もあなたと同じ高校1年生の男子。みんな等しく未熟で臆病。みんな自分を守る為に『見せたい自分』で飾った殻に閉じこもって、それでいて人の気持ちは知りたいもんだから殻の隙間から周りを覗き見してる」


まさに自分だとれぃは居心地の悪さを感じた。


れぃ「……そのまんまあたしじゃん……」


美紅里「そう。れぃもまみもゆきも柳江君も、他のみんなもそのまんま。強がっている子も特別感出してる子も、浅く広く友達付き合いしてる子も友達居ない子も、みんなそんな感じなのよ。みんなが見ているのは『みんなが見せたい自分』と言う虚像」


言うなれば、れぃの無表情無感情ジト目陰キャも、れぃが作り出した「見せたい自分」と言う虚像だ。


美紅里「でもそうやってお互い殻の隙間から周りを見てると、隙間から見ている者同士、目が合ったりするのよ。目が合うって事は虚像ではないその人の本体で本心。時にそれを見てガッカリしたりもするけど、逆にお互いの本心を受け入れたら飾らない本当の付き合いができる関係になるの。同性なら親友だし、異性なら恋人」


恋人と言うキーワードにれぃの体がビクっと動く。


美紅里「れぃはゆきやまみの中を見てどう感じた?そして今は柳江君の中を見てどう感じてる?たぶんそれが今れぃが求めてる答えよ」


この瞬間、れぃは心に立ち込めていた靄がスッと晴れるのを感じた。


相変わらずジト目だが、その目にいつもの輝きが戻るのを美紅里は見てとった。


れぃ「美紅里ちゃん、ありがと。ちょっと気持ちが楽になった。授業戻るね」


れぃは無表情なりに少し照れた表情を見せて立ち上がった。

しかし、足元がおぼつかず、フラつく。


美紅里「れぃ、昨夜一睡もしてないんでしょ。もうすぐ5限目も終わるけど、いまのうちに保険室行って6限目が終わるまで寝ておきなさい」


れぃ「……え?……でも……」


美紅里「そんな状態で授業出ても何も頭に入らないわよ。さ、保険室行くよ」


れぃは美紅里に連れられ、保険室に向かった。


美紅里がれぃの体調が悪い旨保険医に伝え、れぃは保険室のベッドに潜り込んだ。

美紅里が退室する音は聞こえたが、その事の記憶は無い。

おそろしく早いスピードで寝落ちたのだろう。


次、目を覚ましたのは6限目終了のチャイムの音だ。


保険医「向井さん、起きれる?6限目も終わったよ」


驚くほど頭がスッキリしている事を実感するれぃ。

保険医にお礼を言って教室に戻った。


クラスメイト「あ、向井さん戻って来た」


ゆき「れぃ、大丈夫か?」


れぃ「……保険室で休ませてもらったから、だいぶ回復した……」


れぃの言うとおり、目に元気が戻っている。

他のクラスメイトではわからない差だが、いつも一緒にいるゆきには一目瞭然の差だ。


ホームルームが終わり、それぞれがクラブや帰宅の途につく。


れぃの所にゆきとまみが来た。


ゆき「れぃ、今日は部室行かねぇで帰った方が良さそうだな」


れぃ「……体調は問題ねぇ。しんぺぇかけた。でも今日は部室行かずに帰る……」


まみ「駅まで一緒に行かずか?」


れぃ「……いや、ちょっと決着付けにゃならん事があるから、それ終わらせてから帰る……」


にぶいまみでも、この後れぃに何があるかを察した。

だが、まみはれぃに何と言っていいかわからず、口ごもる。

するとれぃが近くにいるまみを手招きし、もっと近くに寄るようなゼスチャー。


まみ「ん?」


まみは一歩れぃに近づく。


れぃ「……もっと……」


さらに手招きを強める。

何だかわからずさらにれぃに近づく。


するとれぃは無言でまみに抱きついて来た。


まみ「れれれれれ……れぃちゃん!?」


するとれぃはまみに抱きついたままモゴモゴと喋る。


れぃ「……しんぺぇかけてすまねぇ……あたし、ちょっと頑張ってくる……」


察している事をれぃにバレないよう、まみはそのまま「うん」とだけ答えた。


れぃがまみから離れると今度は反対側にいたゆきが既にハグを受け入れるポーズで待っていた。

やる事を見透かされていたのが少し照れくさく感じて視線を反らす。


れぃ「……いや、ゆきはいい……」


ゆき「そう言うなよ」


ゆきはニカっと笑い、自分かられぃを抱きしめ小声で囁く。


ゆき「何だかわかんねぇけど頑張れ」


れぃも薄々ゆきに勘付かれているのだろうとは感じていた。

だが、ゆきはあえていつも通りに接してくれる。

その気持ちが嬉しく、今はいつものように突っ張って否定するのではなく、れぃもまた小声で答える。


れぃ「……うん……」


ゆきから離れ、そしてれぃは戦地に赴く。

少なくともれぃの心情はそんな感じだった。


キッと正面を見据え裏門に向かってある出す。


れぃ『返事はどうあれ、まずはスタンプが誤爆だった事を言わず(言おう)。その上でホントにあたしの事が好きなのか、あたしのどこが好きなのかハッキリさせる!それを聞いて、ゆきやまみに影響が出ねぇか改めて考えてから返事する!こりゃあたしと柳江のメンタル勝負だ!』


裏門に向かうまでの間に、脳内会議に参加した様々な「玲奈」がれぃにエールを送る。


れぃ『やってやる!負けねぇ!』


何が勝ちで何が負けなのかれぃ自身にもわからないが、そう言う気持ちだ。

気合いを入れて、生まれて初めて告白の返事をすると言う戦いに挑む。


やがて裏門が見えてくる。

また臆病な玲奈が足をすくませようとするが、それを気合いで退ける。


裏門に着いた。

裏門は物資の搬入などに使われる門なので除雪はされているが、普段生徒からすれば用事がない所。

ましてや真冬の屋外。

好き好んで来る生徒は居ない。

故に他の生徒の気配は無い。

ただ柳江がいる。


気合いを入れ直し、キッとした目つきで正面を見据える。


挿絵(By みてみん)


一歩間違えると睨んでいるようにも見える表情だ。

その表情のまま柳江の元に向かう。


れぃ『言ってやる!言ってやる!スタンプは誤爆だったって!会話の主導権を握られたらダメだ!』


会話が成立する適正距離まで来た。

れぃの心臓は尋常無い早さで脈打つ。


れぃ『柳江くん!あのスタンプは誤爆だったんだ!ごめん!』


そう言ったつもりだったが、口がわずかに動いただけで声にはならなかった。


柳江の目には、れぃが自分を見据え、まっすぐ歩いて来て目の前で止まって黙っているように写る。


柳江「向井さん、来てくれてありがとう。返事を聞かせて欲しい。俺と付き合ってくれやすか?」


先手を取られた。

脳内の玲奈達がやいのやいの、『頑張れ』だの『言ってやれ』だの『しっかりしろ』だのと騒ぎたてる。


意を決し、柳江の目を見るれぃ。


れぃ「はい……よろしくお願いしやす……」


挿絵(By みてみん)


そしてれぃは赤面しながら恥ずかしそうに視線を反らす。


脳内玲奈全員『『『なんじゃそりゃぁ〜〜〜〜!』』』


脳内で「脳内玲奈」の全員がズッコケる音がした。

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れぃちゃんイイね〜ww
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