第6話「ゆき・まみ・れぃ計画始動!」
第6話「ゆき・まみ・れぃ計画始動!」
ゆきがまみとれぃにスノーボードを始める誘いをしてから数日、ふたたび三人は学校近くのファミレスに集まっていた。
まみ「お姉ちゃんが使ってたスノーボードとブーツのお下がりがもらえる事になっただ(なったの)!」
れぃ「……あたしもペンションやってるおじさんから古いスノーボード一式をもらえる事になった……」
ゆき「私はまだメド立ってねぇ(立ってない)……ってか、二人ともいいなぁ!私もお父さんのツテで聞いてもらってはいるけど……」
まみ「でも他にもいる物あるんだらず(あるんでしょ)?」
れぃ「……ウェアとか?……」
ゆき「ののこさんのお下がりでウェアは無かっただ(無かった)?」
まみ「あるにはあったけど、ボロボロで……(汗)」
れぃ「……じゃあウェアはみんな買わなきゃいけない感じじゃん……」
まだ蝉の声が響く中、三人の話題はスノーボードの事ばかりだ。
ゆき「そう言えばバイトの件どうなった?」
れぃ「……あたしはOK……」
まみ「わたしもOKもらったよ!お父さんもお母さんも、わたしがバイトするって言ったらびっくりしてた(笑)」
ゆき「じゃあ、さっそくおじさんとこに連絡してくるね」
そう言ってゆきは席を立つ。
残されたまみとれぃの間に気まずい空気が流れる。
まみはゆきには緊張する事は無くなって来たが、まだれぃに対しては緊張する。
もともとれぃが自分から話しかけるタイプではないのと、テンションが上がるとキレキャラになる所が、れぃに対しての緊張感を解消できない原因だった。
まみ(え〜っと、何か喋らなきゃ(汗))
れぃはもくもくとペペロンチーノを食べ続けている。
まみ(食べてるところに話しかけたら悪いかな(汗))
そんな事を考え、やきもきしていると、唐突にれぃが喋りかけて来た。
れぃ「……何で?……」
まみ(えっ?えっ?「何で?」何でって何が何で?わたしが黙ってたのが「何で?」なの?)
れぃ「……何で、まみがバイトしたいって言ったら親がびっくりするの?……」
まみ(あ、そ……その話ね(汗))
まみ「あ、え〜っと、わたしが極度の人見知りで、普段は家にいる事があらかた(ほとんど)で、そんなわたしが自分からバイトに行くとか言い出したから……」
れぃ「……ふ〜ん、まみって人見知りなんだ……」
この会話の間も、れぃは表情がほとんど変わらず、ジト目のまま口はペペロンチーノを食べ続けている。
食べ続けながらさらに続ける。
れぃ「……あらかた(ほとんど)家にいるタイプなのに、よくスノーボードする気になったね……」
まみ「えっ、あ……そういやそうじゃん。しみる(寒い)のも苦手なんだけどね(苦笑)」
れぃ「……まみって、あたしの中で一番謎な人物だったんよ。クラスでもあらかた(ほとんど)喋んねぇし(喋らないし)……」
正直なところ『それはお互いさまじゃん』と思わないでもないが、まみは愛想笑いで誤魔化す。
れぃ「それっ!その表情!」
まみ「ええっ!?」
思わずビクっとするまみ。
あやうく手にしたグラスを落とすところだった。
れぃ「……クラスでもずっとその表情だよね?……」
まみ「え?そ、そうかな?(汗)」
まみ(ってか、れぃちゃんも、ずっと表情変わらないじゃん(汗))
れぃ「……その何か……困ったような表情と笑顔を足したような表情……」
自分では気付かなかった。
そんな感じに見えてたんだ。
れぃ「……そん(それ)だから、まみって何考えてるのかずっとわからなかったんだよね……」
まみ(それはこっちのセリフじゃ〜ん)
れぃ「……………………ってか、ツッコめよ!!」
まみ「えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!」
れぃ「『クラスで一番謎』も『表情ずっと一緒』も『何考えてるのかわからない』も、甘々のホームランボールなみのボケじゃん!」
まみ「ボケだったの!?」
れぃ「こんな解りやすいボケねぇやろ!」
まみ「わかりにくいわっ!」
思わず反射的に返してしまった。
れぃ「……まみ、やればできんじゃん……」
そう言うとれぃは少し表情を変え、にやりと笑った。
まみ「あ……」
そのタイミングでゆきが電話を終えて戻って来た。
ゆき「何?何?なんか盛り上がってるじゃん」
れぃ「……ミジンコの及ぼす世界経済への影響について議論を交わしてた……」
ゆき「規模が大きいのか小さいのかよくわからん議題じゃん……ってか、秒でバレるそらっこと(嘘)つかねえのww」
ちゃんとツッコミをもらったれぃはまみにドヤ顔を見せる。
まみ「何故そこでれぃちゃんがドヤ顔ww」
れぃ「……今度はちゃんとツッコめたじゃん……」
と、無表情なりに御満悦の表情。
まみ「れぃちゃんは私に何を期待してるだ(汗)」
れぃ「……ツッコミ。ボケをスルーされるのが一番辛いんだしない(辛いんだよね)……」
ゆき「その割に、れぃのボケってわかり辛いよねww」
れぃ「えぇっ!?」
まみ「だよね〜」
これをきっかけにまみはれぃに対しての緊張感が薄れて行く事になる。
ゆき「あ、おじさんに連絡したら、今日この後畑まで来て欲しいってさ」
れぃ「近いの?」
ゆき「歩いて10分くらい」
まみ「えっ?ま、まだ心の準備が……」
ゆき「2時頃来て欲しいって話だから、まだ1時間あるから、その時間に心の準備しなww」
まみ「はわわわわわわ……」
ゆき「バイト始めたらいよいよ『スノーボード始めよう計画』スタートじゃん」
れぃ「……計画名が長い……」
ゆき「じゃあ何かいい計画名ある?」
れぃ「……アクティブコスプレスノーボードプロジェクト……」
ゆき「余計に長くなってるじゃん」
れぃ「……略して『アクティブコスプレスノーボードプロジェク』……」
ゆき「一文字しか略してないじゃん」
れぃ「……じゃあ、『ア』……」
ゆき「略し過ぎww」
れぃ「……まみ、何かない?……」
まみ「え?え〜っと、ゆきちゃんと私とれぃちゃんの名前を取って『ゆき・まみ・れぃ計画』てか?(とか?)」
ゆき・れぃ「「それだぁ〜!」」
まみ「あひゃぁっ!」
またびっくりして変な声出た。
ゆき「『雪まみれ』とかけた感じで、もうそれしか無いって感じだよね!」
れぃ「まみ、やるじゃん!ってか今の流れなら一度はボケようぜ?」
まみ「えぇ〜(汗)私に何を期待してるだ?ww」
こうして三人の「ゆき・まみ・れぃ計画」が笑顔と共に本格的にスタートした。
……が、まみの笑顔はわずか1時間後、農園に向かう時には緊張のあまり凍りつく事になる。