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第49話「相談」

第49話「相談」


月曜日。

以前に比べればマシにはなったが、相変わらず筋肉痛の三人。


ゆき「おはよ〜。れぃ、熱出したって言ってたけど大丈夫?」


れぃ「……どうって事ない……。お父さんが心配性でちょっと体温高かっただけなのに大事を取って……とか言われた結果だ。心配無ぇ……」


ゆき「まみは?昨日帰る時ちょっと元気無かったけど大丈夫?」


まみ「うん。大丈夫。ちょっと疲れてただけ」


駅からの途中で合流した三人はそんな事を喋りながら校門をくぐる。


校舎に入り、自分達の教室に向かう途中で前から柳江が歩いてくるのが見えた。


普段ならお互いスルーする感じだったが昨日の事もあり、思わずゆきが声をかけてしまう。


ゆき「あー、柳江君、おはよー」


柳江「あ。おはよう」


そう返しながらも、思わずれぃから目を逸らす柳江。


そして当のれぃもあえて視線を合わせないような動き。


その少し不自然なれぃの動きを横目に、まみも小さな声で「オハヨー」と言ったが、柳江の耳に届いたかはわからない。


それ以上会話する事もなく、また足を止める事も無く、ゆき達と柳江はすれ違い、それぞれの教室に入る。


ゆきは既に他のクラスメイト達と挨拶したり会話をしている。

まみも小声ながらも挨拶して席に着く。


れぃは背負って来たリュックを机の上に無造作に置き、そこに突っ伏して動かなくなった。


れぃ『アホぉ!!あたしのアホぉ!!あれじゃえれぇ意識してるみたいじゃん!柳江も柳江だ!いつもみたくポーカーフェイスで事も無げにしといたらいいのに、何を一瞬こっちをチラっと見て目ぇ逸らしんだ!』


まだ昨日の事を引きずりまくっているれぃ。


そんなれぃの精神状態など露知らずなクラスの男子がれぃに声をかける。


小森「向井、今日お前日直……」


れぃ「あ゛ぁ゛!?」


小森「ひぃっ!」


普段は表情の変化を見せないれぃだが、この時はそれどころじゃない。

ネコ科の動物が威嚇するかのような表情で、声をかけた男子生徒に全力で不機嫌をぶつける。


小森「いや……あの……今日……向井……さん、日直で……」


れぃ「あ゛ぁ゛?」


そのやり取りを後の席で聞いていたゆきが反応し、れぃの頭を平手でペンっと叩く。


ゆき「むやみやたらに噛みついてんじゃねぇよ」


少しむくれた顔で振り向くとゆきがニヤニヤ顔で立っていた。

そしてゆきはれぃの耳元に顔を寄せ、小声でれぃに喋りかける。


ゆき「何?どうした?さっきの事か?」


そう言われ、れぃはボッと顔を赤くする。


れぃ「柳江は別に関係ねぇよ!」


事が事だけに小声ではあったが、れぃはゆきに猛抗議。

それに対しゆきはしれっと答える。


ゆき「あたしは柳江君の事だなんて言ってねぇよ」


そう言われてれぃはゆきの誘導尋問にひっかかった事に気付き、また顔を真っ赤にして、ゆきをぽかぽかと叩く。


はたから見たら仲良し二人がじゃれ合っているようにしか見えない。


そのやり取りも、担任が教室に入って来た事により強制的に終了する事になった。


その日はれぃが日直と言う事もあり、休み時間や昼休みにじっくり三人で顔を合わせる事はなかった。


放課後、三人は郷土活性化研究会の部室に集まった。


先にゆきとまみが一緒に部室に入り、日直を終えたれぃが少し遅れて部室に入った。


既にゆきとまみは何か話が盛り上がっているようだ。

れぃは無言で部室を見渡し、まずは美紅里が居ない事を確認する。


ゆき「おー、れぃ。日直お疲れさ〜ん」


まみ「お疲れ様〜」


れぃ「……ん……」


れぃはそのまま部室の奥まで行き荷物を置き、意を決してゆきに向き直る。


れぃ「ゆき!違うから!」


いつものボソボソ喋りではなく、一音目からはっきり聞こえる声だ。


ゆき「どしたん急に。たまげるじゃん」


れぃ「今朝の事!あの……柳江とか関係無ぇから!」


ゆき「あー、その話か」


まみ「え?何の話?」


ゆき「いや、カクカクシカジカで、れぃ自身が柳江君の名前出したんよ」


れぃ「だから、違うからな!」


ゆき「おっけ、わかった。じゃあ何であんなカリカリしてただ?」


ゆきは軽く芝居がかった動きで「はいはい」と言いたげな表情で応える。


いつもなられぃはその煽りに乗って、さらに食い付いてくるのだろうが、今日のれぃはいつものれぃではない。


軽くテンパっていると言ってもいい。


れぃ「……それは……その……」


いきなりいつものボソボソ喋りに戻り、両手の指をもじもじと動かすれぃ。


そして取り繕ったような言い訳を始める。


れぃ「……いや、まぁ……カリカリしてたって言うか、話しかけられて考え事してたのが邪魔されたって言うか……」


まみ「考え事?」


れぃ「……うっ……」


れぃの反応を見てニヤ〜っとしたり顔になるゆき。


ゆき「はっは〜ん、つまりその時柳江君の事考えてたんだ」


れぃ「だから違うって!」


ゆき「じゃあ、何で柳江君の名前出ただ?」


れぃ「……うっ……」


秒で論破されるれぃ。


ゆき「だってさ、登校して来た時は普通で途中も普通で、教室入ったらいきなりカリカリして……その間何があったかって言ったら、柳江君と挨拶しただけじゃん?」


れぃ「いや、そだから!柳江の事ではあるんだけど、ゆきが考えてるような内容の事を考えてた訳じゃねぇんじゃん!」


口を開けば開くほど、喋れば喋るほど墓穴を掘るれぃ。


ゆき「あたしが考えてるような事って?」


れぃ「……うっ……」


今さらながらにれぃは気づく。

これは完全に藪をつついてヘビを出したな……と。


何とか流れを変えるべく、れぃは一度大きく深呼吸して話し出す。


れぃ「えっと……あたしが考えてたのはさ……廊下でゆきが柳江に挨拶した時、あんにゃろ、こっちを見た後すぐに視線逸らしたじゃん。それがどうにも気に食わんで、なんかムカついたって言うか、何で目ぇ逸らすんだって事を考えてたんじゃん!」


自分の言っている事に信憑性を持たせる為に自然と言葉に力が入る。


まみ「あ、でもれぃちゃんも柳江君に気付いた瞬間、目を逸らしたしない?」


まみの天然なツッコミにれぃの顔がひきつる。


まみはそもそも人見知りで、多少は慣れたとは言うものの、柳江に対しては他の人よりほんの少しマシと言う程度で警戒心は継続中だ。

それ故、あの時も柳江を発見した直後、反射的にゆきとれぃの後ろに隠れるような動きをしていたのだ。

つまり、れぃの後ろにいたまみはれぃの動きも警戒対象である柳江の動きもバッチリ見ていたのだ。


れぃ「……あたしは……別に目ぇ逸らしてねぇし……」


まさかの目撃証言にれぃの供述はしどろもどろだ。


まみ「逸らしてたよ。こっち側に」


そう言ってまみは悪びれもせずに右下方向を指差す。


そう。

この件に関して最も鈍感なのはまみだ。


極度の人見知りであるまみにとって、男女関係とか、ましてや恋愛感情とかは異次元の話で、察するとかできるはずも無かった。


れぃ「……う……あ……」


反論の余地無し。


そこにゆきの追い打ちが入る。


ゆき「やっぱ意識してんじゃん」


こうなると言い訳も厳しくなる。

相変わらず短気なれぃは、とうとう開き直った。


れぃ「あぁそうじゃん!でも言っとくからな!別に好きとかそう言うんじゃなくて、ちょっと気まずいから目ぇ逸らしただけだからな!」


まみ「何で?」


極度の人見知りで、そもそも誰とも目を合わせようとしないまみが言えたセリフでは無いが、その事には誰もツッコま無かった。

と、言うかそれどころでは無いのだ。


れぃ「いや、そりゃ気まずいだらず!泣いてるとこ見られたし、その後……ほら……ミリョクテキ……とか言われたし……」


ゆき「え?何て?」


これはわざとでは無い。

本当に急にれぃの声のボリュームが落ちたので聞き取れなかったのだ。


れぃ「そだからさっ!魅力的とか人に初めて言われたんじゃん!どうリアクションしたらいいかわかんねぇじゃん!」


ゆき「キレんなし」


キレモードになったれぃの反撃が始まる。


れぃ「例えば、まみ!クラスの誰でいいや。男子に面と向かって『魅力的だ』って言われるのを想像してみ!?」


そう言われて、まみは適当な男子……男子……

誰も顔が思い浮かばなかった。


それでも想像の中で、男子に面と向かって「魅力的だ」と言われるシーンを想像してみた。


ゆき「まみ?……あ、ダメだ。脳みそフリーズしてやがる。まぁまみはかずかる(そうなる)だらずな」


まみのフリーズはれぃのそれとは少し理由が異なる。

そもそも男子に面と向かって「何か」話しかけられること自体がフリーズの原因なのだ。


そんなまみを相手にする事なくゆきとれぃの話は続く。


れぃ「そう言うゆきはどうなんじゃん!」


ゆき「あたし?ん〜………」


眉間にシワを寄せてそのシチュエーションを想像するゆき。


普段は眼鏡美人といった感じのゆきだが、想像が進むにつれ、口がへの字になり、全力でげんなりした表情に変わる。


その変化に思わずれぃは吹き出す。


れぃ「ぶふぉっ……!ゆき、おま、すげぇ顔してんぞ」


ゆき「えれぇかったりぃ……。あ〜、ちょっとれぃの気持ちわかったわ」


れぃ「だらず?つまり……」


そこまで言った所でゆきが手でれぃの言葉を制する。


ゆき「あー、ちょいまち。まみ再起動させるわ」


そう言うとゆきはフリーズしているまみの眉間を「ポチ、再起動」と言いながら押す。

はたと我に返るまみ。


まみ「うん。どうしていいかわかんなくなるね」


れぃ「……ホントに再起動したぞ。便利だな……おぃ……」


まみ「ん?何の話?」


れぃ「……まみの話はさておき……、まぁそんな訳で、今まで男女問わず『陰キャ』てか『無表情』てかそう言う類の事はさんざん言われて来たから慣れてるが、特に男子に肯定的な事言われた事無ぇし、褒められた事も無ぇからどうしたらいいかわかんなくなるんじゃん……」


ゆき「あ、無ぇんだ」


れぃ「……ねぇよ……」


まみ「れぃちゃん、かわいいのに意外〜」


その言葉に即座に反応するれぃ。


れぃ「かわいいとか言うな〜〜〜」


言うと同時にまみの両頬をつまんで左右に広げる。


まみ「へぇ?ひゃんひぇひぇぃひゃんひょこっひぇうあ〜〜〜?」


バツが悪そうに顔を赤くして視線を右下に向けるれぃ。

だが、手はまみのほっぺたをムニムニするのを止めない。

どうやら触り心地が良かったようだ。

特に痛くもないので、まみもされるがままである。


ゆき「まみ、何言ってるかいっさらわかんねぇ」


やっとれぃが手を離したので喋れるようになったまみは改めて言い直す。


まみ「何でれぃちゃん怒ってるだ?」


れぃ「……いや、別に……怒ってしまいねぇけど……ほら……あたし『かわいい』てか言われた事ねぇからどう対応していいかわかんねぇし……」


ゆき『ツンデレだ……オモロい……』

まみ『ツンデレだ……かわいい……』


れぃ「と……とにかくアレだ!ホントにそう言うんじゃねぇんだからなっ!」


ゆき「わかったわかった」


ゆきは半分呆れたような態度で返す。


れぃ「……ってか、こんな事初めてだし……相談しようにもお前らポンコツだし……」


ゆき「ポンコツ言うなwww」


突然の毒舌に思わず吹き出すゆき。

まみはどうにも話自体がピンと来ていないようで、そのまま何となく笑顔のままでいる。


ゆき「あー、でも確かにそうだわな〜。あたしも同じずか事を相談しなあかん状況になっても、れぃやまみに相談しても仕方ねぇって判断するわ」


れぃ「だらず?」


相変わらず何の話か理解できないまみは少し困ったような笑顔のまま無言で謎の相づちを打っている。


ゆき「たぶんこう言う話で、あたし達が相談できそうで、なおかつ的確なアドバイスくれそうな人って、実はののこさんだけなんだよな」


れぃ「それだ!」


ゆき「でもののこさんの連絡先知らねぇんだよな〜」


れぃ「……コスネット相互だからDM送れるんじゃね?……」


申し合わせた訳ではないが、二人同時にまみをチラっと見る。


まみ「え?何?」


ゆき「え〜っと……ののこさんってLINE教えてくれたりするのかなぁ〜って思って……」


れぃも横で同じ事を言いたかったとばかりに、ふんふんと大きく頷く。


まみ「大丈夫なんじゃねぇ?」


そう言うと、まみはスマホをポチポチといじくり、グループLINEにののこのLINEアカウントを貼り、躊躇なく送信。


ゆき「え?あ……ちょっと……。こう言うのってののこさんの許可もらってからするものなんじゃ……」


まみ「そうなの?」


こう言う所も、今まで人付き合いをほとんどして来なかったまみならではの行動だろう。


れぃ「……いや、ちょっと考えてみ?あたしが勝手に学校の男子にまみのLINEアカウント教えていきなり男子からLINE来たら、まみビビるだらず?……」


少しキョトンとした表情のまみだったが、れぃにそう言われてその状況を想像し、表情がひきつる。


ゆき「つまりそう言う事だ」


まみ「えっと……じゃあ……どうしたらいいんだ?」


れぃ「……えっと……あたしからこんな事言っていいかわかんねぇけど、事前にまみからののこさんに、あたし達にLINE教えていいか打診して、ののこさんが良いって言ったら、改めてまみから教えてもらう……みたいな……」


まみ「わかった」


そう言うとまみは即座にののこにその旨のLINEを送る。


まみ「送った」


ゆき「って、ちょっ……おま、やる事早いな……」


まみ「え?ダメだった?」


れぃ「……いや、良いんだけど、あたし達の心の準備て言うか……」


まみ「あ、返信来た。良いって」


ゆき「ののこさんも判断早いな……」


れぃ「なぁ!ののこさんに何て話を切り出したらいい?」


ゆき「あたしに聞くな!あたしも急展開過ぎてテンパってんじゃん!」


二人をよそにまみは平常運行でスマホをポチポチしている。


まみ「……送信……っと。お姉ちゃんにゆきちゃんとれぃちゃんのLINE送っといた。ちゃんと『二人がお姉ちゃんに相談あるんだって』って言っといたから」


ゆき「ぎゃぁ〜〜〜!」


れぃ「バッ……!ちょっ……おま……」


その直後二人のスマホから立て続けにLINEの着信音が鳴る。


ゆき「ののこさんだ!どうしよ!?」


れぃ「あたしんとこにも来た!まだ心の準備出来てねぇ!」


あたふたする二人。

いつもとまるで逆の光景だ。


まみ「まだ二人とも心の準備出来てねぇって言っとかずか?」


れぃ「余計な事するな〜〜〜!」


まみはビクっとして裏返った声で「ひゃい!」と答える。


ゆき「と……とりあえず返信だ。え〜っと……友達に追加して……えい!」


そう言うとゆきはシルフィードが「よろしく」と言っているスタンプをののこに送る。


ゆき「あぁっ!しまった!ここはよろしく『お願いします』だった!……って、既読付いてしまった!どうしよ!?……って、返信も来た!」


ののこからはアスカが手を上げて「はーい」と言っているスタンプが返って来た。


れぃ「あ……あたしも返さなきゃ……送信!」


れぃは文章だけで「よろしくお願いします」とだけ返信していた。


れぃ「あぁ!何か堅苦しい!ちがう!送信取り消し?……既読付いたぁ………」


そしてれぃのLINEにもゆきの所に送られて来たスタンプと同じスタンプが送られて来た。


そして続けてメッセージが送られて来る。


ののこ『今バイト中だから、夜にでもまた連絡して』


続けてアスカがウインクしているスタンプが送られて来る。


ゆきもれぃも、ののことLINEが繋がった事による高揚感と、いざ相談するとなるとどう相談するかわからない不安とに苛まれている。


ガッツポーズっぽい動きをしたかと思ったら、こめかみに指を当てて深いため息をつく。

かと思ったら、またニヤ〜と笑う。


それが動きに出ているので、完全に挙動不審だ。


それを不思議そうに眺めるまみ。


まみ「二人ともさっきからどうしただ?」


れぃ「バッカ!わかんねぇのか!?」


まみ「はいっ!ごめんなさい!」


れぃの迫力に押され、思わず謝るまみ。


ゆき「いや、だってののこさんとLINEできるんじゃ〜〜ん?でも内容が、あたしから言い出した事だけど『相談』だから、どんな感じでメッセージ送ったらいいかわかんなくなるじゃん?」


まみ「別に緊張すること無ぇじゃん。今まで何度も喋ってるし、教育実習の時もあったんだし……」


まさにどの口が言う……である。

だがそれをツッコむ余裕は二人にはない。


れぃ「……違うんじゃん……。みんながいる所で喋れるのと、LINEのやり取りするのとでは……」


まみ「ごめん、よくわかんねぇ」


少し困った表情の愛想笑いのまみ。


ゆき「あ〜、つまりアレだ。教室でみんながいる所で喋るのと、二人きりで喋るのの差みたいな……」


れぃ「それっ!」


ゆき「だよな〜。しかも内容が恋愛相談だしな〜」


れぃ「え?」


ゆき「は?」


まみ「ゆきちゃん、お姉ちゃんに恋愛相談するの?」


ゆき「誰が?」


れぃ「今、ののこさんに恋愛相談するって言ったじゃん」


ゆき「あ〜〜〜〜、悪りぃ。ちょっと表現が間違えてた。昨日、柳江君があたしに好意を寄せてる男子いるに……的な事言ってたじゃん。あー言うのマジかったりぃんだしな〜い。そだからモテそうなののこさんに何ていうか、そう言うのを寄せ付けねぇ方法って言うかあしらい方みたいなの教えてもらいてぇな〜って思ってね」


れぃ「……確かにそれはあたし達じゃ相談に乗れねぇな。ゆきにあたしみたく無表情のコミュ症キャラをやれって言っても無理だらずしな……」


ゆき「れぃって、そのキャラ、そんな理由でやってただ?」


れぃ「……いや、キャラやってるって言うか素……って言うか……」


ゆき「いや、キャラ作ってるだらず?」


れぃ「……作ってねぇし……」


まみ「でも普段のれぃちゃんと、テンション上がった時のれぃちゃんとではキャラ違うしない?」


れぃ「……うっ……」


ゆき「バレてねぇと思ってるのれぃだけだし」


れぃ「……キャラとか……作ってねぇし……」


そう言うとれぃはプイと視線を逸らす。


ゆき『やっぱツンデレだ。オモロイ』

まみ『やっぱツンデレだ。かわいい』


これ以上キャラを作っている疑惑に触れるとれぃがマジギレしそうなのを感じ取ったゆきとまみはその話題から離れた。


ゆき「そりゃぁさておき、そんな感じの事をののこさんに相談したくってね〜」


まみ「れぃちゃんはお姉ちゃんに何を相談するだ?」


れぃ「……あたしは……えっと……何相談したらいいんだらず?……」


ゆき「知らねぇよ」


まみ「柳江くんの事?」


れぃ「そだから違うって!」


ゆき「違うの?」


れぃ「……いや、そうだけど……」


まみ「え?どっち?」


れぃ「いや、そだからわかんねぇんだって!」


ゆき「でも内容的には柳江君がらみなんだよね?」


れぃ「……うん……まぁ……」


まみ「まぁお姉ちゃんって昔から色んな人の相談受けてるって言うか、そもそも世話焼きだから大丈夫じゃん」


ゆき「そうのかも知れねぇけど、まみが言うと何故か不安になるの何でだ?」


れぃ「……それな……」


まみ「え〜、ひどい〜」


ゆき「じゃあ、あたしの相談の『男子が寄って来ねぇ方法』にののこさんはどんなアドバイスくれると思う?」


まみ「え〜っと……何かかず……良い感じの方法を……」


ゆきはれぃの方を見てやれやれと言った表情を見せる。


ゆき「ほらな」


れぃ「……だな……」


まみ「だってあたしはお姉ちゃんじゃねぇもん」


ゆき「そんなこたぁ解ってる。でも、ののこさんならこう言う……的なのあるじゃん?」


まみ「ん〜〜〜っと……『大丈夫、何とかなるって』……とかかな」


またゆきはれぃを見てげんなりした表情。


ゆき「な?」


れぃ「……だな……」


まみ「だってあたしが相談したら、あらかたいっつもこんな感じだもん」


これはまみの認識違いである。

まみがののこに相談に乗ってもらう……と言うより、ののこがまみに自発的に構ってアドバイスをした時の「締めくくり」がこんな感じであり、最後の一押しの時にののこがよく使うセリフである。


当然それに至るまで、ののこはかなり的確なアドバイスをしているのだが、まみがののこからアドバイスを受ける時はたいてい頭がテンパっている時なので、それをまみが覚えていないだけだ。


この日はこんな会話をして三人は解散した。


ゆきとれぃは今夜どんな感じでののこに相談しようか頭の中で考えを巡らせながらの帰宅。


だが、二人とも帰宅するまでに答が出る事は無かった。


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