第48話「イナゴの佃煮」
第48話「イナゴの佃煮」
美紅里「紀子……あんたはバカか」
予想していなかった美紅里の言葉にキョトンとするののこ。
美紅里もののこがそう言う反応をするだろうなと思っていたので、気にせず続ける。
美紅里「今のまみを見てごらんよ。ゆきやれぃとあれだけ仲良くできてる。紀子が言うみたいに会話の機会をいくつか紀子が奪ってたとしても、小中学校の授業中の会話の機会まで奪った訳じゃないでしょ。仮に紀子が会話の機会を奪ってたとして、それはまみの今までの人生における何%だって言うの?」
ののこ「それはそうだと思いやすけど……」
美紅里「まみが人見知りなのは、そもそもの性格。そしてそれはゆきやれぃと言った友達と出会う事により改善されつつある。ただ、これまでまみとウマがあった友達ができなかっただけ」
ののこ「その友達ができなかった原因を作ったのがあたし……」
そこまで聞いて美紅里はののこの言葉を遮るように話を続ける。
美紅里「ばーか。紀子はコミュニケーションお化けで誰とでもパッと喋れるようになるからわからないかも知れないけど、ホントに気が合う友達なんて何十人、何百人に一人いるかどうかの確率よ」
美紅里も少し酔いが回っているのか、いつもより口が悪い。
美紅里「そりゃね……うわべだけ……って言ったら言い方悪いけど、友達付き合いしてても合わないな……って感じる人もいるでしょ」
ののこは美紅里の話に聞き入っている。
美紅里「それが悪いとは言わないし、生きて行く上ではそれも必要だとは思うよ。でもあたしはそれが一概に正しいとは言い切れないと思うのよ」
ののこがツマミとして買って来たピーナッツをポイと口に放り込み、一拍あけた後に話を続ける。
美紅里「紀子も知ってるとは思うけど、そう言った『合わない所があるけど付き合わなくてはいけない』だとか『我慢して付き合う』ってのがストレスになって心を病んでしまう人もいる。このストレスの感じ方も人それぞれ差がある。大きくストレスを感じる人が無理してしたくもない人付き合いをするべきではないわ」
ののこ「でも……」
美紅里はののこの言葉をあえて遮る。
ののこが何を言おうとしているのか、想像がついたから尚の事だ。
美紅里「『でも』じゃなくてね。そりゃあんたみたいに誰とでも仲良くなれて、人付き合いに対してのストレスの感じ方が薄い人なら『友達の多さ=幸せ』って方程式が成り立つだろうけど、あんたとまみは違うの」
ののこは少しムキになって語気を強めて反論する。
ののこ「でもっ!……そりゃ真由美がたんと人との交流の面白さを知らねぇだけで、知れば楽しさに気付くかもしれねぇじゃないねぇか!……で、その気付くキッカケをあたしが奪ったかも知れねぇんじゃん!」
酔っているのもあるが、ののこがヒートアップしているのを見て、美紅里は即座に反論せず「ふ〜ん」とだけ言いながら席を立つ。
そして聞こえるように独り言を言う。
美紅里「ツマミ無くなったから別のツマミ出そ〜っと……。そういやこないだ実家から送ってもらった物があったんだった……」
冷蔵庫を開けて、タッパーを取り出し、箸と小皿を持って戻って来た。
こたつに座り直すと美紅里は話の続きをする。
美紅里「紀子……、例えばさ……肉料理が好きで魚料理が嫌いな人に、魚料理を好きになってもらうにはどうすればいいと思う?」
ののこ「は?それと今までの話になんの関係が……」
美紅里「いいからっ!」
美紅里の迫力に気圧され、ののこは訳もわからないまま答える。
ののこ「え〜っと……魚料理の美味しさとか栄養とか説明して、魚料理もうまいよ〜って誘って食べさせてうまさを理解させて……」
美紅里「なるほど、なるほど。そうやって魚料理の魅力を伝えれば魚嫌いな人でも魚を食べれるようになって、魚料理が好きになる訳ね」
ののこ「え〜っと、とりあえず食べて貰わなくちゃ美味しさもわからねぇって言うか……」
そこまで聞いて美紅里は少し意地の悪そうな笑顔をののこに向けながら、持ってきたタッパーに手を伸ばす。
美紅里「この前実家からこれ送ってもらってさぁ……」
美紅里がタッパーの蓋を開けたと同時にののこは絹を引き裂くような悲鳴を上げる。
タッパーの中にはイナゴの佃煮がたっぷりと入っていた。
そう。
ののこは虫が大の苦手なのだ。
妹をナメクジに例えるくせに、リアルの虫が大の苦手なのだ。
ののこはコタツからエビのように飛び出し、壁に張り付いている。
美紅里「あら、イナゴの佃煮、美味しいのよ〜。長野の郷土料理だし、栄養あるし、とりあえず一つ食べてみなさいよ、美味しいわよ〜」
そう言いながら美紅里はイナゴの佃煮を一つ箸でつまみ上げ、小皿に移す。
ののこ「無理無理無理無理無理!」
美紅里「あらっ?魚料理が嫌いな人に魚料理の美味しさや栄養の高さを説明して、『美味しいよ〜』って誘って食べてもらったら魚料理の良さが伝わるんでしょ?だったらイナゴの佃煮も同じ方法で、紀子にイナゴの佃煮の美味しさが解ってもらえると思ったんだけどな」
ののこ「無理無理無理無理無理無理!うまさどころか、口に入れるのでさえ無理ーっ!」
美紅里「わかった?まみにとっては知らない人とのコミュニケーションって紀子にとってのイナゴの佃煮なのよ」
ののこは引きつった表情のまま「へ?」と気の抜けた返事をする。
美紅里「あたしがいくらイナゴの佃煮の良さを説いて美味しいと勧めても紀子は絶対に食べない。まみも他人が『社交的になれば良い事あると』と説いてもまみには全然響かない」
ののこ「じゃあ……どうすれば……」
まだ壁にへばりついたままのののこを見て、美紅里はイナゴの佃煮とそれが入っていたタッパーをしまった。
その作業をしながら美紅里は答える。
美紅里「結局ね、好き嫌いとか、興味の有無とか、やりたい事とやらなきゃいけない事とか、そう言うのって自分からどうにかしようと思わない限りどうにもならないのよ」
とりあえずイナゴが視界から消えたので、ようやくののこもモゾモゾとコタツに帰って来た。
美紅里「さっきの魚の例えだったら、いくら周りが食べろと言っても食べない。本人が何らかのキッカケで魚を食べようと思い立ち、自らの意志で口にするようにならないと魚嫌いの人が魚好きになる事なんて無い」
ののこ「そんな自分から嫌いな物を食べようとする人なんていませんよ」
キッチンから戻って来た美紅里はリビングの入口で柱にもたれかかり、腕組みをしながら言う。
美紅里「居ないわね」
ののこ「じゃあ、八方手詰まりじゃねぇですか」
美紅里「そうね。でもさっき言ったでしょ?『自分からどうにかしようと思わない限りどうにもならない』のよ」
ののこ「いや、ちょっと言ってる意味がわかんねぇっす」
美紅里は少しニヤリと笑い、コタツに戻る。
美紅里「つまり本人に『どうにかしよう』と思わせればいいのよ」
ののこ「それこそ無理だらず!?」
美紅里「あら、そうでもないわよ。現にまみはゆきやれぃ、あと……何て言ったっけ?大阪の……」
ののこ「チーちゃん?」
美紅里「そうそう。その子達とは交流できるようになって、またその時間を楽しめるようになった。これは凄い成長よ」
ののこ「確かにそうだけど、あたしはもっとたくさんの……」
美紅里「そこ!そこが紀子とまみの価値観の差なのよ」
美紅里はわざと一拍空けて続ける。
美紅里「話に聞く限り、まみってゆき達と友達になる前までは一人で、またその一人の環境を良しとして来たんでしょ?でも友達ができて人との交流の楽しさを知った。そしてその楽しさは拡大中。そしてそのキッカケを作ったのは他ならぬ紀子、あんたよ。あんたがまみをコミゲのコスプレに引きずり出さなきゃその出会いも無かったし、何より紀子がコスプレを楽しんでいるのをまみが見てたからあんたの口車にまみも乗ろうとした。違う?」
ののこは少し考えた後、小さい声で答えた。
ののこ「違わねぇです」
美紅里「紀子はちゃんとお姉ちゃんしてるよ、安心しな」
ののこ「そんなもん……ですかね……」
美紅里「『そんなもん』も何も、まみが100%気を許せる相手って紀子だけでしょ?あたしはもちろん、ゆきやれぃだって知り合う前のまみにそれができたと思う?」
ののこ「……できませんね……」
美紅里「でしょ?」
美紅里は少し残ったビールをあおる。
ののこは逆に話を聞く事に集中していた為か、ビールを飲む手が止まっている。
美紅里「あんたがコスプレを楽しそうにやっているのをまみが見て、紀子がまみをコスプレに誘い、コスプレを通じて友達ができ、友達との交流の中でスノボを始める事になり、スノボを通じてチーちゃんって子とも友達になった。紀子から見たらゆっくりなペースかも知れないけど、確実にまみは成長してる。今ではあの子、ゆきやれぃをからかうような事もしてんのよ。今はそれでいいのよ」
ののこにすれば友達をからかうとか当たり前すぎて気付かなかったが、まみはそれまで通常の会話でさえ緊張して言葉がおかしくなるくらいだったのだ。
そこには「変に思われたらどうしよう」とか「嫌われたらどうしよう」といったネガティブな想像があった。
しかし「からかう」と言うのは相手が少なからず怒ったり困ったりするのを見て楽しむ事であり、よほど相手が「このくらいなら本気で怒ったり自分を嫌ったりしない」と言う確証がなければできない。
それが、まみがゆきやれぃに対しての信頼なのだ。
ののこ「そっか……真由美、ちゃんとゆきちゃんやれぃちゃん達と友達してたんじゃん……」
十分酔っているのもあるのだろうが、ののこは目を潤ませ、見るともなしにビールの缶を見つめている。
と、その時、ののこのスマホからLINEの受信音が鳴る。
少し気だるそうにスマホを確認するののこ。
真由美『お姉ちゃん、今日帰ってくる?ちょっと相談したい事あるんだけど』
それを見た瞬間、ののこはガバと立ち上がり、コタツの上に置いたジムニーのキーを引っ掴み、飛び出して行こうとする。
美紅里「待て待て待て待て!あんた今酒気帯び!」
ののこ「真由美が!真由美があたしに相談あるって言ってるんだ!行かなきゃ!」
美紅里「落ち着け!相談なら明日でもいいだろ!急ぎならLINEでもできる!」
それでも飛び出そうとするののこを美紅里はタックルするようにしがみつき、ののこを止める。
ののこ「真由美〜!お姉ちゃん、すぐ行くからね〜!」
美紅里「ダメ〜〜〜!」
そんな攻防が美紅里の家で展開されているとは露知らず、まみは一人で悶々と考え込んでいた。
まみ「あたし……どこがまずかったんだらず……」
スノボを始めて今日までの事を思い返す。
まみ「上手くやれてたと思ったんだけどな……」
美紅里『ただ、そのどちらも恐ろしく雑』
美紅里の言葉が頭の中で反芻される。
まみ「そりゃぁね……美紅里ちゃんとか他のボーダーさんに比べたらいっさらなのはわかるよ……でもゆきちゃん達と比べてどこがどう雑なのかいっさらわかんねぇ」
ゴンっと音を立ててコタツに額をぶつけるように突っ伏すまみ。
まみ「あ〜、わかんねぇ!お姉ちゃんに聞こうにも既読無視されてるし……」
結果的に既読無視だが、現在酒気帯び運転してでも帰ろうとするののこと、それを止めようとする美紅里の攻防の真っ最中だ。
まみ「ゆきちゃんやれぃちゃんには聞きにくいしな……」
もしここでまみがゆきかれぃに聞いていたとしても、どちらからも返信は無かったであろう。
何故ならゆきは爆睡中だし、れぃも微熱を出してほぼ強制的に布団に追いやられていたからだ。
まみ「一番適切なアドバイスくれるのは美紅里ちゃんなんだらずけど、こんな時間だし、美紅里ちゃん先生だし、聞きにくいんだしない……」
もちろん美紅里に相談のLINEを入れたとしても返信は無かっただろう。
理由は言わずもがな。
まみはLINEを開き、ののこからの返信が来てないか確認するも、やはり返信は無い。
まみ「お姉ちゃん、絶対どっかで飲んでるな……」
諦めてスマホを置いた瞬間、着信音が鳴る。
まみ「たまげた〜……お姉ちゃん?」
スマホを開く。
LINEの最上段に表示されてたのは、チーのアイコンだ。
まみ「チーちゃんだ……えっと……どうする?」
まだチーに対しては少し構えてしまうまみ。
恐る恐るLINEを開く。
チー『見て見て!美卦の衣装、新調してん!』
と言うメッセージと共に、自宅で撮ったであろうコスプレの写真が数枚貼られていた。
それを見たまみの目が輝く。
まみ「すごいっ!えれぇ可愛くなってる!耳の大きさも設定通りの大きさ!」
さらに写真が送られてくる。
今度は全身ではなく、バストアップや部位のピンポイント写真だ。
まみ「目も右がゴールドで左がブルーのオッドアイ!尻尾も白と黒のツインテール!」
チー『あと、これが今回のイチオシポイントやねん』
今度は顔のアップだ。
さっきまでの写真では気付かなかったが、チーの頬の辺りからピンと伸びた猫のヒゲが生えている。
以前見せてもらった美卦の写真では、ヒゲの部分はメイクで描かれたヒゲだったのが、今回はちゃんとヒゲなのだ。
もうまみの頭にはさっきまでの悩みはどこかに行ってしまっている。
まるでゲームの中から飛び出して来たような、そんな美卦の写真にまみのテンションは一気に上がる。
LINEを開くまではチーからのLINEに戸惑っていたが、その戸惑いもどこへやら。
まみは反射的に返信していた。
まみ『凄い凄い!えれぇリアルになってる!ってか、かわいい!ヒゲ、それどうやってるだ!?』
チー『初級の特殊メイクやってみた』
メッセージと同時に「てへっ」と書かれた美卦のスタンプが送られて来る。
まみ『特殊メイクとかできるんだ!凄い!』
チー『簡単なコスプレ向きの特殊メイクのやり方、ネットに色々上がってるからそれを参考にやってみてん』
そこからひとしきりまみとちーは裏十二支大戦のコスプレの話で盛り上がった。
お互い好きなゲーム、そしてそのコスプレ、さらにチーの性格も相まってチーへの「身構え」はほとんど無くなっていた。
チー『仮装滑走イベント楽しみやわ〜絶対一緒に滑ろうな!』
このメッセージを読んでまみは先の悩みを思い出し、少し返信が遅れる。
言葉を選び、チーに返信する。
まみ『楽しみだけど、あたし滑るの下手だからどこまで一緒に滑れるか不安』
メッセージと共に巫狐がオロオロしているスタンプを送る。
言葉を選んで送ったまみとはうらはらに、チーからの返信は早かった。
チー『大丈夫、いけるいける』
親指を立てて「グー」と言うポーズの動く美卦のスタンプ。
普段のまみであれば、きっと書かなかったであろう。
悩んでいる内容のごく一部を思わず返信してしまった。
まみ『でもあたし今日、美紅里ちゃんにあたしの滑りは恐ろしく雑って言われてしまったからなぁ』
メッセージを送った直後に「しまった」と思ったが、即座にチーからの返信が来た為にその会話を続ける事になってしまった。
チー『雑なだけでできてんやろ?できてないより全然ええやん』
まみ『そうなんだけど、ゆきちゃんとれぃちゃんは出来てねぇ所を練習して出来るようになってる。このままだったらあたし置いてけぼりだ』
美卦が目を見開き、びっくりする表情の動くスタンプ。
チー『ゆきちゃん達、出来てない所あって、補習になったんや』
まみ『うん。補習って程じゃねぇんだけど……』
チー『つまりテストで例えたら、ゆきちゃんとれぃちゃんは赤点取って補習と追試して、追試で良い点取れるようになった。まみちゃんは全教科ギリギリ赤点クリアしたから補習も追試も無いけど褒められた点数じゃなかった……と、そんな感じ?』
その例えを見て、まみはハッとする。
まみ「あれ?デジャビュ?なんかこんな事があったような……」
まみがデジャビュの正体を考える間もなく、チーから次のメッセージが入る。
チー『もしそうなら答えは簡単やん!練習あるのみ!逆に言うたらまみちゃんは補習を受けなくてもいいくらいの実力はあるって事やん?』
まみ『そう言う事……なのかな?』
チー『いや、知らんけど』
また美卦が『てへっ』と言ってるスタンプが貼られる。
まみ『知らんのか〜い!』
これはれぃのツッコミ指導の賜物であろう。
思わずツッコミのメッセージを返すまみ。
すかさず美卦が爆笑しているスタンプが返ってくる。
チー『まぁでもスノボもスキボも練習しやんと上達せぇへんのは一緒やん?下手なんやったら他の人より多く練習したらええだけちゃう?』
まみ『みんなと同じだけしか練習できねぇから、あたしだけ一人で練習するとか無理じゃん』
少し間があって、美卦が顎に手を当て考え込んでるスタンプが連続で3回送られてくる。
チー『何で?』
まみ『だってスノボ行く時って三人一緒だから』
チー『すぐ近くにゲレンデあるんやろ?電車とかバスとか、家の人に車でちょっと送ってもらうとかしたら行けるやん』
まみ『まぁそりゃそうなんだけど』
チー『それに紀子さんに連れてってもらって、紀子さんに教えてもらったらええんちゃうん?』
チーにそう言われてハタと気づく。
まみ「そう言えばみんなと一緒滑った時、ちょっとお姉ちゃんとも滑ったけど、お姉ちゃんと二人で滑りに行った事はねぇや」
少し考え込みそうになったが、チーへの返信があるのでとりあえずその件はひとまず置く事にした。
まみ『お姉ちゃん連れてってくれるかなぁ』
チー『いや、それは知らんて。とりあえず言うてみたら?あたしは兄貴をそんな感じで使ってるで』
まみ『仲良いんじゃん』
チー『いや、全然』
即座に美卦が爆笑しているスタンプが貼られる。
チー『スキー場着いたら完全別行動やし、ごはんも別々やで。だってウザいやん』
何かスイッチが入ったのか、立て続けにメッセージが送られてくる。
チー『今シーズンもたまたま兄貴とリフト乗り場で一緒になってちょっと喋ってたら、兄貴の友達が偶然来てて、兄貴の彼女と間違えられた。マジありえん』
まみ『そりゃ災難だったね〜』
まみはどう返すか少し悩んだ挙げ句、そう返した。
そこからまた少しまみとチーはやり取りしていたが、チーの「そろそろ寝るわ〜」でLINEのやり取りは終了した。
その頃美紅里とののこは、やっと美紅里がののこが取り押さえる事に成功し、ののこは美紅里から説教を食らっていた。
美紅里「あんたね、この先教師になろうかと言うのに、こともあろうか酒気帯び運転しようとするなんて……」
ののこも少し酔いが醒めたのか、珍しく正座して美紅里な説教に頭を垂れていた。
その時、コタツの上に置かれたののこのスマホの画面がつき、LINEの着信を知らせる音が鳴る。
画面に「真由美 お姉ちゃん今度の休み……」と書かれているのを見て、説教中にもかかわらずののこはスマホをバッと取り、内容を確認する。
美紅里「ちょっ!まだ話は終わって……」
ののこ「美紅里さん!真由美が今度の休みスノボの練習してぇから付き合ってくれって言って来ました!」
美紅里「だからまだ話の途中!」
ののこ「お姉ちゃんに任せときなさい!連れてってあげるからね〜」
そう言いながら妹に返信するののこ。
既に美紅里の話はののこの耳に届かなかった。
美紅里はやれやれと言った表情で、残っているビールを煽り、何も言わずに寝室に消えた。