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第44話「静寂のゴンドラ」

第44話「静寂のゴンドラ」


れぃの気分も持ち直したので、美紅里に連れられ三人はゴンドラに乗り込む。


しかし、ゴンドラの中は微妙な空気になっていた。

三人はそれぞれ何か会話をしなければ……と言う気持ちはあるが、三人ともさっきの柳江の言葉が頭から離れない。


美紅里もそれを察しているのか、あえて話かけないでいた。


ゴンドラの中、ゴンドラの軋む音と支柱を通過する時のガタガタと言う音だけが聞こえる。


だが、三人はそれぞれ、脳内がさっき起きた状況の整理に奔走していた。


まみ『さっき柳江くんの言ってたファンクラブって何?

いやいや、ファンクラブって物が世にあるのは知ってるよ。

あのアイドルとかを熱心に応援してる人のグループって言うか、もうそのままファンクラブだよね』


まみの思考は最初からシッチャカメッチャカである。


まみ『あたしのファンクラブがある?

そんなの知らねぇし……

え?ってか、そう言うファンクラブじゃなくてあたしの知らねぇファンクラブって言葉があるの?

ファン……扇風機?

扇風機愛好会?

いや、いっさら意味わかんねぇ……

ひょっとしてクラブがあたしの思ってるクラブと違うのか?

クラブ……蟹?』


何とか自分の思っているファンクラブとは別物であると信じたいまみは現実逃避気味に違う可能性を探す。


まみ『ファン……扇風機……うちわ……団扇!

団扇蟹とかって種類の蟹実は居て、それがあたしの……あたしの?

ダメだ。

いっさらあたしと蟹が結びつかねぇ!』


何とか「別物」を想像して気分を落ち着かせたいまみだが、どうしてもステージの上にいる自分とペンライトを振っているファンの映像か頭によぎりゾッとする。


極度の人見知りのまみにとってその想像は地獄のような光景だ。


まみ『いや、落ち着いて考えてみず。もともとあたし、目立たねぇように気を付けて生きてる訳だから、あたしの存在すら知らねぇ人があらかたなはずだし、ファンが付くような事何もしてねぇし……。絶対何かの間違いだよね?』


まみの中では体育祭と文化祭の時の事は「無かった事」になっているし、その時の記憶は記憶の引き出しの奥に押し込んでいるので、本気で体育祭や文化祭で巫狐のコスプレをした事を忘れている。

いや、忘れた事にしている。


まみ『コスネットにアップしてる写真はメイクしてるし、コスネット見る人ってコスプレに興味ある人しか見ねぇから学校の人がそれを見たとも思えねぇ』


まみは今一度、柳江の言葉を思い出す。


『浅野さんはファンクラブが出来てるくらいだし』


そしてハッと気付く。

と、言うか、最も自分にとって都合のいい解釈に辿り着く。


まみ『あの時柳江くんは浅野さんって言ったしない?皆が知ってる浅野さんと呼ばれる人、もう一人いるじゃん!そっか!!お姉ちゃんのファンクラブ!柳江くんはあたしにお姉ちゃんのファンクラブがある事を教えてくれたんだ!』


まみの中ではその解釈で確定した。

それを確信に変える為に想像の裏取りに専念する。


まみ『もともとお姉ちゃんはコスプレイヤーの中でも大人気のレイヤーだもんね!それに教育実習生って先生だけど先生じゃねぇ生徒に近い存在で親近感あるし!年上のお姉さんって憧れだもんね!』


まみの想像は間違ってはいない。

実際にののこのファンクラブは全国規模で存在するし、それとは別に教育実習期間に学校内でもファンクラブが発足した。

もちろん学生はののこが人気コスプレイヤーのののこである事は知らない上で、浅野紀子先生のファンクラブが発足したのだ。

また、浅野紀子先生と体育祭と文化祭で全校から注目された浅野真由美が姉妹である事に気づいている生徒はほぼ居ない。

それを知っているのは、教職員とまみの周りの生徒、柳江くらいのものだ。


まみの予想を超えていたのは、ののこが教育実習生として学校に来ている間にののこに告白したり、ののこの連絡先を聞こうとした男子生徒が二桁に上った事実。


一方、まみのファンクラブのメンバーはまみの性格等を知った上で直接的な接触を禁じ、花を愛でるようなおとなしい活動に従事していた。

しかし、それもまみが知ればまみは震え上がっただろう。


ひとまず「浅野さんのファンクラブ」が姉の事であると言う結論に達したまみは心の平穏を取り戻した。


まみ『あ〜、たまげた。柳江くんもお姉ちゃんの事ならお姉ちゃんの事だってはっきり言ってくれたら良かったのに!』


自分の都合の良い解釈なのに柳江に腹を立てるまみ。

かと言ってそれを柳江に問い詰める事などできるはずもない。

結果、まみはこの後も長い間「浅野さんのファンクラブ」が姉に対するものであると信じ込み、自分のファンクラブが存在する可能性は無いと信じて疑わない事になる。


まみが心の平穏を取り戻した頃、ゆきはさっきの柳江とれぃの「ひょっとしてラブ?」展開の野次馬精神が沈静化し、ようやく自分の置かれた状況を思い出し、柳江の言葉がぐるぐると頭の中を回り始めていた。


ゆき『あたしに好意を寄せてる男子はたんといる……だと?』


ゆきは中学生時代も少なからずモテた。

しかし恋愛に興味が無かった当時のゆきは全て断ってきた。

故に男子から好意を寄せられるめんどくささは実感している。

そして今も恋愛にほとんど興味は無い。

唯一例外として、ちぃの兄、健太郎のスノボの技術に魅せられ、ほんの少し「カッコいい」と感じている。

だがそれも恋愛感情云々では無く、スタイリッシュなデザインのスポーツカーを見て「カッコいい」と感じるのと大差無かった。


ゆき『めんどくせぇ〜〜〜!あー、ホント、マジめんどくせぇ!誰かと付き合うってのが、今より面白いとか楽しいとか想像できねぇ』


ゆきは、まみとれぃ達とスノボの話をしたり、コスプレの計画練ったり……そんな日常をこよなく楽しんでいた。


まみやれぃと違い、友達の多いゆきだが、まみ達以外の友達と接している時に少なからず気遣い的な物を感じていた。

まみの人見知りな所やれぃのちょっと変わった性格等もゆきにとっては楽しいエッセンスであった。


馬が合うとはこの事だろう。

ゆきはまみ達と一緒にいる時は、「ほぼ」素の自分でいられた。

それが何とも心地よい。


そもそもゆきはしなくてもいい気遣いをしてしまうタイプ。

「楽しかった」より先に「疲れた」が出てしまう。

同性に対してもそんな性格なので、異性に対して気遣いしない訳がない。


ゆき『ってか、誰よ。そのもの好きなヤツは……。あいつか?それともあいつ……?』


常日頃から気遣いする事が板に付いている為、そこを勘違いされて好意を持たれる事が中学生時代にもよくあった。


中学時代に告白された時も「吉田さんは優しいし……」が決まり文句のように出て来た。

その度にゆきは『そうじゃねぇんだよなぁ』とげんなりしたものだ。


ゆき『とにかく、こりゃ何らかの対策しなくちゃめんどくさいな……。さて、誰に相談したものか……。こう言うのは経験豊富な人の方がいいだらずし……』


ゆきはまみとれぃをチラと見やる。


失礼な話ではあるが、そこには最も恋愛経験の無さそうな二人がいた。


次に視線を美紅里に向ける。


ゆき『美紅里ちゃんは美人だけど、男が警戒して寄って来ねぇタイプだよね』


これまた失礼な話である。


ゆき『……と、なると……ののこさん!ののこさんならいいアドバイスくれるかも!』


しかし、まだゆきはののこに連絡先を聞けてない。

それ以前に未だに憧れの人であるののこの前では緊張してしまう。


ゆきの思考は既に男子に好意を寄せられているかもと言う話から、どう対策するかに移行し、今はどうやってののこに連絡先を聞こうか……と言う所まで来ていて既に男子がどうとか言う話は頭の隅っこに追いやられていた。


本人は気付いていないが、当初げんなりした表情で押し黙っていたゆきだが、ののこの連絡先を聞く方法を考えるにつれ真剣な表情になっていた。

なお、この表情の変化に気付いたのは美紅里だけである。


何故ならまみやゆきと同様にれぃもさっきの事で頭がいっぱいになっていたので、それどころでは無かったのである。


そしてこれも美紅里しか気付かなかったが、三人の中で最も表情の変化があったのは、普段無表情であるれぃだったのだ。


れぃ『落ち着け。まず落ち着け。ちょっと状況を整理しず。あのバカ大学生はもうどうでもいい。それより柳江だ。あんにゃろ、とんでも無ぇ事をサラって言いやがって』


ナンパ師の事と、とんでも発言をした柳江に対しての苛立ちかられぃは眉間にシワを寄せる。

だがすぐに柳江の「魅力的だと思う」の言葉が頭を過ぎり、思わずニヤける。


なんだかんだ言いながら「魅力的」と言われた事が嬉しかったのだ。

だが、れぃ本人も気付いていないが、自分が喜んでいると言う事実を認めたくなかった。

その照れ隠しもあって、何とか自分の中で柳江の「魅力的」発言に対して不快感を持っている精神状態に持って行きたいと心境になっている。


れぃ『だいたい何だ、あの態度は!ゆきが柳江にあたしの事好きなのか聞いた時に、あんなに即答しんでも……』


そこでハッとする。


れぃ『いやいやいやいや、好きとか言われてもそれはそれで困るんだけど……ってか、ゆきもすぐに物事をLOVEにするのもちょっと……』


自分の頭の中に浮かんだ「LOVE」と言う言葉に、またれぃは赤面する。


れぃ『いや、そだから、そもそもLOVEって何だぃ!例えそうなんじゃんかと思っても、そこは何て言うかその場はスルーすべきだろ!好きなのかと聞かれてその場で好きだって答えられる人なんていねぇよ!』


ゆきへの不満を考えていたつもりが、その結果、柳江が自分に対して好意を寄せている可能性に逆に気付いてしまい、さらに赤面する。


れぃ『いや……いやいやいや、待て。あたし、ちょっと待て。もしそうんだら図星突かれた柳江はもっと慌てるとか挙動不審になるとか、言葉を濁したりするだらず。でも柳江は即答で違うって言った!だからそう言うのじゃねぇ!』


何とか平静を装う為に必死である。


だが、その感情は逐一表情に微妙に表れ、その変化を美紅里はこっそりバレないように見て楽しんでいた。


れぃ『そう!柳江は別にあたしに好意を持ってる訳じゃねぇ。うん。間違い無ぇ。んで、あたしも柳江の事を好きじゃねぇ。いや、嫌いって訳じゃねぇけど、何ていうか……そう!あたしの中ではモブキャラの一人!クラスの男子達と同格!そうだよ、それでいいんじゃん』


今のれぃにとって最も都合の良い解釈に辿り着き、ようやく平静を取り戻す。

表情と顔色も普段どおりに戻りつつある。

少し慌てた自分に対しての気恥ずかしさから、「柳江はモブの一人」と言う考えをより盤石のものとする為に「その路線」での想像をさらに加速させる。


れぃ『そうだよ、モブなんじゃん。ただカメラってスキルがあってコミゲの時からちょいちょい接点があるだけって話!それもあたしが望んだ訳じゃねぇし?そーゆー事よ!それによしんば柳江があたしに好意を持ってたとしても、あたしがそれに応えなきゃいけねぇって事じゃねぇ!』


れぃはあえて余裕があるような思考でさらに精神安定効果を上げて行く。


れぃ『まぁ、柳江がイケメンってんなら考えてやってもいいちゃ、いいけどね』


どこから来る自信か本人もわからないが、謎の高飛車思考でさらなる精神の安定に拍車をかける。

たぶんれぃがしているコスプレのキャラクター、「ドジでマヌケな魔王がいたっていいじゃない」の主人公、魔王グルキャナックのキャラの延長であろう。

ふんすと少し強めの鼻息を吐き出す。

だが、この思考も普段のれぃの思考とはかけ離れている事に本人は気付いていない。

れぃは別に面食いでは無いのだ。

この面食いな設定もグルキャナックのそれてある。


れぃ『そうそう。柳江はアレじゃん。別段イケメンって訳でも無ぇし〜』


と、そこまで考えが進んだ所で、さっきの柳江の去り際に見せた笑顔が頭をよぎり、れぃの心臓が強くドクンと脈打つ。

それと同時にまた火が着いたように赤面する。


れぃ「あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜!」


思わず声が出てしまい、その声におどろき、まみとゆきはビクっと体を震わせた。


まみ「あひゃぁ!」


ゆき「たっ……まげたぁ」


二人とも自分の思考の迷宮を彷徨っていたので、なおのことれぃの叫び声に驚いた。


美紅里はれぃの表情を観察していたので、驚きはしなかったが笑いを必死にこらえる。


ゆき「れぃ、どうしたんじゃん?」


さすがに柳江の笑顔が過って声が出たとも言えないれぃは言葉に困る。


まみ「顔も赤いし……、大丈夫?」


れぃ「いや、ほら、さっきのアレをお思い出したら、またムカついてきて……、んで、なんか声出たって言うか……」


必死に取り繕うれぃ。

いつものボソボソ喋りのキャラを演じる事もすっかり忘れている。


そのほとんど全てを見抜いている美紅里は、誤魔化そうとそれっぽい理由を付けて言い訳をしているれぃを見て、また笑いそうになるがグッとこらえる。


笑いそうになるのを誤魔化すように美紅里はハキハキとした口調で三人に声をかける。


美紅里「さ、もうすぐ山頂駅に着くよ。前回と今日の午前中でどれだけ上達したか見せてもらうからね」


まみ達は山頂方向に振り向くと、もう間近に山頂駅が近付いて来ていた。


三人は慌てて降りる準備をする。


山頂駅に着き、三人は転がり出るようにしてゴンドラから降りた。


美紅里はゼスチャーで付いてくるように促すと駅の出口に進み、まみ達もその後を追った。


一方、この騒ぎのもう一人の張本人である柳江は、れぃ達と喋っていたのもあり、更衣室で慌てて着替えてバス停に向かう。

時刻表にある時間より少し遅れたが、バスも遅れていた為に何とか間に合い、バスに乗る事ができた。


この時間のバスは空いているので二人掛けの席を占有して座る。

荷物だけで一人分くらいの体積はゆうにある。

駅に着くまでの間、今日撮った写真をスマホで確認する。

いつもなら構図が気に入らない写真等をサクサクと消してデータ整理をバスに乗っている間にあらかた終わらせるのだが、今日はどうにも作業が捗らない。


柳江もまた、さっきの事が頭の中でグルグルと回っていたのだ。


柳江『俺、何であんな事言ったんだらず……』


柳江の言う「あんな事」と言うのはもちろん、れぃに真顔で「魅力的」と言ってしまった件だ。

柳江はれぃが言うように「モブ」なのだ。

良くも悪くも目立たない。

たぶんまみが最も欲しいスキルを常時発動させて来た。

もちろん本人の意志でそうなっている訳ではないが。

顔も美形とは言えないし、男らしい顔つきでもない。

また男女問わず避けられるような顔でもない。

身長も高くも低くもないし、体型もしごく一般的。

トークも上手くはないが、喋れない訳でもない。

ただ、性格的に積極的に誰かに話しかける性格ではないので、とにかく目立たない。

数十年後に学生時代の話になったら「そんな奴いたっけ?」と言われるタイプだ。

学校でも用事がなければ女子に話しかける事もないし、話しかけられる事もない。

もちろん、女子に告白した事も告白された事も無い。

圧倒的に女子との会話の経験値不足。

それ故、コミゲ等で被写体に撮影許可を取り付ける時も非常に事務的な喋り口調。


だからあの時何故自分かられぃに声をかけたのか自分でもわからない。

バーガーエンペラーでまみに声を掛けたのは、まみが人見知りだと言うことを察した上で、まみをナンパしそうな二人組を見かけたので人助けと言うか見るに見かねてと言うかそんな気持ちで少し助け舟を出した感じだった。


だが、れぃの時はあからさまに何らかのトラブルの後で、れぃが見た目に不機嫌なのが見て取れた。

柳江に野次馬精神が在るわけでもないし、一緒にまみとゆき、美紅里もいるのでわざわざ出張って声をかける必要も無かった。


しかし、何となく声を掛けずにおれなかったのだ。


正直、柳江は喋りかけた後、内心「しまった」と感じていた。

自分に落ち込んでいる女の子を元気づけるスキルも経験も無いのは承知の上で、話しかけてしまった。


話しかけてしまった以上、理由を聞いて何も言わずにその場を去る事もできない。

冷静な雰囲気があった柳江ではあるが、本人はかなりパニクっていたのだ。


とにかく何か言わなきゃ。

とにかくこの場の空気を良くして早々に立ち去らなきゃ。


そんないっぱいいっぱいの状態だったので、周りの目や自分の発言が相手にどう取られるか等を考える余裕は無かった。

思い付いた言葉や気持ちを丁寧に声にするに努めた。


その結果が「真顔でれぃに魅力的だ」と言ってしまう事になった。


柳江もれぃに「魅力的だ」と言った直後、れぃの反応を見て「これは勘違いされかねない発言だった」と内心慌てている所に、ゆきから「れぃの事が好きなのか」的な事を聞かれたので、即座に否定する事になったのだ。


そして「そう言うのではない」と言った直後に、れぃから「即答かよ」とツッコまれた。


柳江『あれは間を開けた方が良かったのか?いや、それとも向井は肯定する事を望んでたのか?』


柳江の頭の中で、普段の無表情の仏頂面のれぃの表情から、グルキャナックのコスプレをしている時に見せるコロコロと変化する表情、まみやゆき達と喋っている時の無表情ながらわずかに変化する表情、そしてさっきの別れ際に自分にお礼を言った時のれぃの表情が目まぐるしく巡る。


そう。

最後にれぃが柳江にお礼を言った時の表情は、柳江以外は見ていないのだ。


その時のれぃは少し俯き加減で、照れたような表情。

それでいて柳江の表情を伺うように少し上目遣いで自分をまっすぐ見つめる目。


この時、柳江の心臓もドクンと強く脈打ち、柳江はどうしていいかわからず手を上げるだけにとどまり、その場を去ったのだ。

その時、自分がどんな表情をしていたかさえ知らない。


そしてれぃの別れ際の表情を思い出し、また心臓がドクンと強く脈打つ。


柳江『何だこれ』


柳江は家に帰っても、この事が頭から離れない。

この自分でもわからない気持ちが何なのか?

そんな事を考えていた柳江は、何故かはわからないが、体が勝手に自室のパソコンを起動させ、過去に撮ったコミゲの時の写真や、体育祭、文化祭の時のれぃの写真を見返し始めていた。


生まれて16年。

柳江が異性を異性として初めて意識した日となった。

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