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第40話「キリッ」

第40話「キリッ」


コスプレ滑走に向けて準備を始めた三人。

あまりにも知識が乏しすぎて何から始めればいいのかわからず、経験者であるちーにアドバイスを求めるべく「雪ん娘スプレー」と言うグループLINEを設置した。


そのグループLINEにちーが入り、ちーによるコスプレ滑走講座が始まった。


ちー『で?何から知りたい?』


ゆき『衣装の下ってどの程度の物着たらいいの?』


ちー『3月も寒い日あったり暖かい日があったりするから一概には言えんけど、暑かったらインナー脱いで調節できる物がいいんじゃね?』


それを読んでまみが思わず言葉にする。


まみ「どゆこと?」


れぃ「……薄手の物を重ね着して暑かったら脱げって事じゃね?……」


まみ「あ、インナーのインナーね」


ゆき「何だと思ったんだ?」


まみ「暑かったらコスチュームだけで滑るのかと思った」


れぃ「……んなわきゃねぇだろ……」


ゆき「じゃあ、次の質問書くよ」


ゆき『ちーちゃんは具体的にどんなの着てるの?』


れぃ「……写真じゃわかんねぇもんなぁ……」


ちー『あたしは基本的にTシャツとウインドブレーカー。その上にコスチューム』


まみ「ウインドブレーカーって、あのナイロンのペラペラのやつだよね?寒くねぇの?」


れぃ「……それちーちゃんに直接聞きゃいいじゃん……」


ゆき「ほれ、聞いてみ?」


まみ「え〜っと……じゃあ……」


まみ『ウインドブレーカーはナイロン製の薄手の物でしょうか?またTシャツは発熱素材の物でしょうか?』


ゆき「やっぱ堅いなぁ……」


まみ「しょうがねぇじゃん!」


まみも文章が堅いと言うのは理解しているが、なかなか砕けた会話調の文章を書く勇気が出ない。


ちー『ウインドブレーカーはまみちゃんの言うとおりの物。Tシャツは普通のTシャツ』


れぃ『寒くね?』


ちー『あたしのコスチュームってノースリーブの毛皮にショートパンツみたいなコスチュームやん?けっこう熱がこもって暑いんだよね〜』


ゆき『腕と足は生足?』


ちー『その日の気温によるけど、足はストッキング2枚履き』


れぃ「……ストッキング2枚履きか……」


れぃ『ストッキングは防水か撥水加工してるの?』


ちー『してなーい。だからコケたら冷たいwww』


ゆき「マジか!?」


れぃ『写真で見たらちーちゃん、左右で足の色違うけど、こんなの売ってんの?』


ちー『自作。右足は黒だから黒ストッキングの左足を切って、それを2枚重ね。左足は白だから白ストッキングの右を切って2枚重ね。だからお腹まわりはストッキング4枚重ねになるんよwww』


まみ『お腹キツくないですか?』


ちー『一番上に来るストッキング以外はお腹のゴムの所を2/3くらいカットしてゆるくしてる』


ゆき「お〜……、なるほど」


まみ『左足に茶色の部分あるけどあれはどうやってるんですか?』


ちー『布用の絵の具で描いた』


れぃ『詳しく!』


ゆき「あれ?グルキャナックってどうやってるんだっけ?」


れぃ「……グルキャナックも右足は骨で右足は生足なんだけど、骨のイラスト書かれたストッキングが売られてて、それの右足を切って使ってる。右足はちーちゃんと同じく白ストッキング……」


ゆき「じゃあ新しくする必要ねぇじゃん」


れぃ「バッカ!あの骨ストッキング高いんだぞ!もしコケて破れたら嫌じゃん。そだからコス滑走用にデニールの大きいストッキングで自作できたら安心じゃん」


ゆき「なるほどね。あ、返信来た」


ちー『ちょっと大きな文房具屋に布用の絵の具とか、ホームセンターに布用のスプレーとか売ってるんで、それで描いた』


れぃ『水に濡れたり洗濯しても落ちない?』


ちー『多少は落ちるけど、そこは使い捨て感覚でやってる』


まみ「こっちに大きい文房具屋さんとかねぇよね〜」


ゆき「ネット販売頼りだな」


れぃは早速スマホで調べている。


れぃ「……あった。これだ。『染めP』……」


まみ「あたし思ったんだけどさ……」


ゆき「何?」


まみ「れぃちゃんの右足の骨の絵柄、あれを白フェルトとか布で作って、ヘアゴムみたいなので足に固定したらいいんじゃん?」


れぃ「……天才か……」


ゆき「確かにそれならストッキング破れても骨の部分を次のストッキングに使えばいいし、何より安く作れそう」


れぃ「……まみ、それ採用だ!……」


身長の低いれぃは少し背伸びをしてまみの頭をなでなでする。


撫でられたまみもまんざらでは無さそうな表情。


それを微笑ましく見やり、ゆきはLINEを続ける。


ゆき『ウインドブレーカーって雪山専用?』


ちー『普通のウインドブレーカー。あたしのはワークダンディで売られてたやつ』


まみ「ワークダンディって作業服とか売ってるお店?」


れぃ「……だろうな……」


ゆき「この時期にあんなペラペラのウインドブレーカーなんて売ってる?」


れぃ「……うむ。これもネット頼りだな……」


まみ「あ、でもさ……。あたしもゆきちゃんもれぃちゃんも衣装は基本的にノースリーブじゃん」


ゆき「ちーちゃんの美卦もノースリーブじゃんね?」


れぃ「……聞いてみよ……」


れぃ『ちーちゃんの美卦ってノースリーブじゃん。ウインドブレーカーの袖切ってんの?』


ちー『あー、ごめん。正確にはウインドブレーカーみたいなナイロン素材のベスト着てる』


ゆき『肩とか裸が露出してる所は素肌?』


ちー『まさかwwwこの写真見てくれたらわかると思うけど……ちょっと待ってな』


数分後ちーから写真が送られて来た。


バストアップの写真だ。


ちー『拡大して見てくれたらわかると思うけど、下にババシャツ着てるんよ』


まみ「ババシャツ?」


れぃ「……ベージュの……いわゆるラクダ色……」


ゆき『なるほど。じゃあ上からコスチューム、ナイロンベスト、ババシャツ、ブラ……って感じ?』


ちー『そう。寒い時はババシャツの下にTシャツ着るんやわ。あたしの中ではババシャツもコスチュームの一部やから説明入れんの忘れとったwww』


まみ「何となくわかったけど、このナイロンベストってどのくらいの防水効果あるんだらず」


ゆき「聞きゃいいじゃん」


まみ「ゆきちゃん、またそうやってイジメる〜」


ゆき「甘えねぇ甘えねぇ。ほれ、自分で聞け」


いつものニカっとした笑顔でまみを尻を叩く。

実際にお尻を叩かれている訳ではないが、まみ的にはそんな気分だ。


まみ『ナイロンベストの防水効果はいかほどでありましょうか?』


れぃ「ぷーーーーっ」


まみ「れぃちゃん、また笑ったぁ!」


ゆき「よくそんな文章出てくるよなぁ……」


まみ「ゆきちゃんも変に感心しねぇ!」


またやらかした感を感じとったまみは少し顔が赤い。


れぃ「……お……返信来たぞ……ぷっ!」


ちーからの返信を見て、また吹き出すれぃ。


ちー『ん〜……。まみちゃんのキャラがどーにも安定しないなぁ。じゃあまみちゃんは巫狐のキャラで質問して』


ゆき「あはは、これ、名案!」


まみ「もうっ!」


まみは少しヤケになった口調でスマホに文章を入れ直す。


まみ『わたくしわからないのですが、こちらのナイロンベストで水はどのくらい防げるのでありましょう?』


ゆき「おぉ……巫狐だ」


れぃ「……さっきの文章もちょっと巫狐が入ってたんだな……」


ちー『ええやんええやん❤そのキャラで行こ!』


まみ「質問の答えはっ!?」


恥ずかしさからまだ顔が赤いまみ。


ちー『ナイロンベストだけでもまぁまぁ防水効果……無くは無いけど、あまり期待話できない。だからあたしは撥水加工してるんよ』


れぃ『ウォッシュインの撥水剤?』


ちー『よく知っとるなぁ。正解!』


ゆき『どのくらい効果あるもんなの?』


ちー『撥水加工した直後は雨傘くらい弾くで。水滴が水玉になるくらい』


まみ『まぁ素敵。その撥水加工は我々素人でも上手にできるものなのでしょうか?』


れぃは顔を背け、肩を震わせている。

どうやら笑いをこらえているようだ。


ちー『撥水剤だけじゃ効果は弱い。専用の洗剤で洗ってから撥水剤に漬け込むんよ』


れぃ『この撥水剤?』


れぃはリンクと共に送信する。


ちー『そうそう、コレコレ。同じメーカーからこれ用の洗剤も売られてると思うからさがしてみて』


ゆきはスマホでまた検索。


ゆき「これかな?」


れぃ「……専用洗剤……コレだね……」


三人はそれぞれサイトの説明文を読む。


ゆき「なるほど、だから専用洗剤が必要なんだ」


まみ『わたくしの巫女の着物も撥水加工できるでしょうか?』


ちー『あたし巫狐の衣装を直に見た事ないからわかんない。でもやらないよりはやった方がいいとおもうで』


れぃ『あたしのグルキャナックの衣装、一部サテンなんだけどいける?』


ちー『手洗いになるけどいける……はず。知らんけど』


れぃ『知らんのかぁ〜い!』


ちー『いわゆる自己責任ってやつだ』


ゆき「まぁね〜、コスプレの衣装はハンドメイドが多いから洗濯表示とか当然ねぇし、なんなら綿やサテン、ナイロンもごちゃ混ぜで衣装作ったりするしね」


まみ「あたしのはネットで買った巫女の衣装のリメイクだから調べりゃぁ素材はわかるかな……あ、綿とナイロンだ。聞いてみよ」


自分から質問する事にだんだん慣れてきたまみを見て、ゆきとれぃは無言で目配せして小さくうなづく。


まみ『わたくしの着物は綿とナイロンでできてますの。撥水加工の効果はあるかしら?』


一般の女子高生の文面から考えれば逆にふざけた文章だが、まみは大真面目な顔でメッセージを送っている。


そのギャップが、れぃにとってはかなりツボらしい。


ふと後ろを向いて後頭部を両手で搔いた後、背伸びをするような仕草で誤魔化してはいるが、それもまみに笑っていると悟られない為の演技だ。


ゆきからはれぃの表情がみえるので、わざとらしい演技で誤魔化しているのに気付いているが、まみはスマホをガン見しているので気付いていない。


笑いの衝動が収まったれぃはいつもの無表情フェイスに意図的に戻し、またまみ達の方を向く。


ゆきにはそれがたまらなくおかしい。

今度はゆきが顔を背けて肩を震わせる。


ちー『綿は水吸うからなぁ……でもナイロンが入ってるからいくらか効果はあると思うで。知らんけど』


「知らんけど」は大阪人の口癖のようなものだ。

少しでも憶測や予想が入る回答には、たいてい語尾に「知らんけど」を付ける。


まみ『あら、ご存知無いんですの……』


ゆき・れぃ「「ぷーーーーっ!」」


ちー『wwwwwwwwwwww』


まみ「ちょっと!そこっ!笑わない!」


今まで笑いを堰き止めていたダムが決壊したゆきとれぃは笑いが止まらない。


クールなキャラは何処へやら。

れぃは「ひーひー」言いながらお腹を抱えて笑い転げている。


ゆきも机をバンバン叩き、突っ伏してゲラゲラ笑っている。


ちーもキャラクターが爆笑しているスタンプを連投してくる。


まみも負けじと裏十二支大戦に出てくる羆のキャラクタ「緋熊」が「静まれぃ!」と言っているスタンプを送り返す。


これがまたツボにハマる。


いつしかまみも釣られて笑い出した。


この空間で一人笑う事無く黙々と仕事をしていた美紅里の堪忍袋の緒が切れた。


美紅里「あーもーっ!うるさい!用事が無いならさっさと帰りなさーい!」


半ば追い出されるように理解準備室を追い出され、扉をピシャリと閉められた三人。


少しの間、怒涛の展開にキョトンとしていたが、また笑いが込み上げて来て、理解準備室を出た廊下で大爆笑。


するとまた扉がガラっと勢いよく開く。


美紅里「うるさーい!」


まみ「あひゃぁ!」


ゆき「ごめんなさーい」


れぃ「逃っげろ〜」


脱兎のごとく逃げ出す三人。


美紅里も最初はまみ達三人の関係にどうにもぎこちない物に感じていたが、今日のやりとりを見て、少し安心した。


その安堵と、うるさい三人を追い出して「ヤレヤレ」と言った表情が入り混じった表情で美紅里は三人が逃げて行くのを見送った。


挿絵(By みてみん)


美紅里から逃げてきた三人は、階段の踊り場まで来て一息入れる。


れぃ「……あ〜、たまげた……」


まみ「怒られてしまったね〜」


ゆき「ちーちゃんに状況返信しなくちゃ、返信待ってるかもね」


そう言うと、ゆきはまたスマホを取り出しちーにLINEを送る。


ゆき『部室で爆笑してたら顧問にうるさいって追い出されたwww』


ちー『そんなこっちゃろおもたwww』


れぃ『こっちは冬場に歩きスマホしたらマジで転倒するから、とりあえず今日はここまで。明日またヨロ』


ちー『あいよ〜』


まみ『本日のご指導に御礼申し上げます。コン!』


最後の「コン!」はまみの精一杯のジョークだったが、笑いを取るよりも他の三人をほっこりさせる事になった。


ちー『かわえぇぇぇぇ❤』


れぃ「……その『コン!』は……こすい……」


珍しくれぃは口元をほころばせ、少し頬を赤らめている。


ゆき「まみのそう言うとこだよなぁ〜」


ゆきもニヤニヤ笑う。


まみ「何よその反応!ここは笑う所だらず」


れぃ「……いや、だってなぁ……ゆきぃ……」


ゆき「だよなぁ……れぃ……」


二人はわざと芝居がかったように顔を見合わせる。


ゆきにしてもれぃにしても、まみが人を笑わせようとした事自体が嬉しかったし、その頑張っている姿が愛らしかった。


その後も三人でやいのやいの言いながら駅に向かい、そこで別れた。


まみ「ただいまぁ〜」


ののこ「おかえり。いつもよりちょっと早くねぇ?」


まみ「部室で騒いでたら美紅里ちゃんに追い出された」


ののこ「あっはっは!美紅里さん怒ると迫力あるだらず?」


まみ「たまげたよ〜」


ののこ「んで、何騒いでたの?」


まみ「コスプレ滑走の話でちーちゃんとLINEしてた」


ののこ「コス……そうだった……あ〜、どうしよ〜」


まみ「お姉ちゃんは衣装の防水とか、寒さ対策とかどうするの?」


ののこ「衣装は撥水加工して、インナーは春用のウェアを下に……」


まみ「お姉ちゃんのやるアスカもノースリーブじゃなかったっけ?」


ののこ「あ、そうか……。どうしよ。……ってか、真由美はどうすんのよ」


まみ「あたしはちーちゃんに教えてもらって……」


まみは今日ちーから聞いたコスプレ滑走の話をののこに話して聞かせた。


ののこ「なるほど、ババシャツにノースリーブのナイロンベストか。さすが考えてるね」


まみ「あたしもノースリーブのベスト買おうと思ってるんだけど、この時期にワークダンディにベストなんて売ってるかなぁ」


ののこ「まぁねぇだろうね。探す手間が勿体ねぇからネット注文だな」


まみ「お姉ちゃんどうする?」


ののこ「あたしもその方法がベターと思う」


まみ「じゃあ一緒に注文する?送料安くなるかも」


ののこ「オッケ。いいの見付けたら教えて」


まみ「あと、撥水剤と専用洗剤もゆきちゃん達と割り勘で買うつもりなんだけど、お姉ちゃんも乗る?」


ののこ「いや、そりゃいい。シーズン終わったら他のウェアも撥水加工するから」


まみ「わかった」


ピロン♪


そのタイミングでれぃからLINEが入る。


れぃ『ネットでナイロンベスト探してたら、3枚以上注文で送料無料のとこ見つけた』


まみはスマホの画面をののこに見せる。


まみ「……だって。どうする?」


ののこ「じゃあそこで色とサイズ決めて注文しよう。あたしにもサイトのリンク送って」


まみとののこはそれぞれのスマホで販売サイトのページを見る。


まみ「あたしの身長だったらMかな」


ののこ「下に着込むんだらワンサイズ大きい方がいいんじゃねぇ?」


まみ「ちょっとみんなに相談してみる」


まみはスマホを立ち上げ、LINEに質問を書く。


まみ『ナイロンベスト選んでるんだけど、下にババシャツとか着るならワンサイズ大きい方がいいのかな?』


間もなく既読が付き、返信が来た。


ちー『ベスト自体がけっこうゆったりした作りだから大きいの買わなくても大丈夫やで』


それを見てまみは小さく悲鳴を上げる。


まみ「ゆきちゃん達のグループと間違えてちーちゃんもいるグループに質問してしまった……どうしよ……」


ののこ「なんか問題あるの?」


まみ「ゆきちゃん達に書く時みたいに書いてしまった……」


ののこ「いいじゃん別に」


ののこはまみが何について慌てているのかさっぱりわからない様子。


そこに追い打ちが来る。


ちー『ってか、まみちゃん、普通に文章書けるやん』


まみ「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」


まだ知り合って間もない相手に対してタメ口のような文面でメッセージを送ると言うのは、まみ的には非常に失礼な事してしまったと感じているのだ。


まみ「お姉ちゃん!どうしよ!?……お姉ちゃん!?」


ののこの姿は既にない。

代わりにキッチンから母親の声が聞こえて来た。


母親「紀子ならお風呂行ったよ」


まみ「もぅ!お姉ちゃん、こんな時にっ!」


完全な八つ当たりである。


まみ「とにかく何か返さなきゃ」


まみは慌てて返信する。


まみ『これは間違いでありまする』


慌てているので既に文章がおかしい。


なお、ゆきとれぃもこのやりとりを見ていた。

当然のごとく自宅でひっくり返って笑っている。


まみはメッセージを送信してから文章がおかしい事に気付き、またも慌てて訂正のメッセージを送る。


まみ『違うんです。私じゃないんです。』


もはや意味不明である。


ちー『ん?誰?』


まみ「ヤババババババババ」


ミスにミスを重ね、既にパニックと言うか、テンパっているまみ。


まみ『浅野真由美です』


即座に既読が3つ付く。


まみには当然わからない事だが、ゆき、れぃ、ちー、それぞれが自宅で大爆笑していた。


そして次のメッセージはちーからではなく、意外にもれぃからのメッセージであった。


れぃ『浅野真由美です(`・ω・´)キリッ』


さすがのまみでも、からかわれているのがわかる。


まみ「ちょっ!れぃちゃん!」


たて続けにゆきからもコメントが入る。


ゆき『浅野真由美です(`・ω・´)キリッ』


間髪入れずにちーからも。


ちー『浅野真由美です(`・ω・´)キリッ』


まみ「違うって!そういうんじゃ無ぇんだって!」


だが、火が付いたれぃ達は止まらない。


れぃ『やめろ、笑い死ぬwww』


ゆき『(`・ω・´)キリッを付けたのれぃじゃんwww』


ちー『なんかわからんけど、めっちゃオモロいわwww』


そしてたて続けに送られてくるキャラクターが爆笑しているスタンプ。


まみはあたふたと、釈明のコメントを入れる。


まみ『違うの!ゆきちゃんとれぃちゃん達のグループと間違えて最初送っちゃったの』


れぃ『間違えてメッセージを送った浅野真由美です(`・ω・´)キリッ』


ゆき『やめろwwwwww』


まみ『だからっ!ちーちゃんに送るメッセージだったらもっとちゃんとした文章にしなきゃって思ったのに、間違えて送っちゃったの!だからさっきの文章は普通じゃないからあたしじゃないの!』


完全に文章がとっ散らかっている。


まみ『あわてて送っちゃったから文章おかしくなっちゃって、あたしじゃないって書いちゃったの!』


まみ『そしたらちーちゃんから誰?って聞かれて、ひょっとしたらあたしのスマホを誰か他の人が使ってると勘違いしてるかもしれないって思ったから』


れぃ『浅野真由美です(`・ω・´)キリッ』


ゆき『やめwwwwwwwww』


まみ『キリッは言ってない!』


ちー『いきさつは解ったwwwでも、まみちゃん、あたしにもそんな感じの文章でええんやで』


そこでまみは、またあわてて普段通りの文章を連投していた事に気付いた。


まみ「あっ……」


そこでやっとゆきからフォローのメッセージが入る。


ゆき『まみ、あたし達が昼間言ってた普通の文章が、さっきまみが書いてた感じの文章な』


れぃ『そう。あれでええんやで』


ちー『そうそう。同じ高一の女子やん。リアルで一緒に遊んだ事あるんやし、そんなかしこまらんでええよ』


ゆき達からのメッセージを読んで、ようやく少し落ち着いて来たまみ。


まみ『それでよろしいのでしょうか?』


ゆき『またおかしくなってるwww』


れぃ『それでいいの?……が正解』


まみ『それでいいの?』


ちー『いーよーっ!かめへんかめへん、苦しゅうない』


ゆき『今度はちーちゃんが代官キャラになったwww』


れぃ『浅野真由美でござる(`・ω・´)キリッ』 


まみ『れぃちゃん!(# ゜Д゜)』


れぃ『おぉ……まみが顔文字使った……』


まみは散々三人にイジられたが、最後は一緒に笑っていた。


これを機に、まみはちーに対しての心の壁をようやく取り除く事ができた。


まみはまだ自覚していないが、まみの「極度の人見知り」と言う万年氷がゆっくり、ゆっくり溶け始めていた。

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