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よりによって転生とは。⑧

今日は休みだと思って油断してたら、パスタ喰って、スマホの機種変更しに行って、昼寝したらもう夜でした。

投稿はご利用的に★

ベージュ色の髪を持つ美少女。 ラシー・ルルゥ・アルージュと名乗る彼女はどこか艶のある表情で俺を見ている。


てか《三つ名》かあ… バリバリの貴族様じゃあねえか。面倒にならなきゃあいいが。

取り敢えず怪我はしてないようだ。護衛にはちらほら水賊に襲われて怪我してる奴もいるようだが、そこは丈夫さと再生力に優れた亜竜(リザード)だな。もうほとんど傷が治っているらしい。

亜竜はいわゆるリザードマンとかのイメージの種族で爬虫類っぽいトカゲや亀。イグアナや蛇などこれまたタイプの多い種族のひとつだ。

しかしこいつら亜竜だよな?フォー・リバー近辺では見たことがない種族だ。顎の後ろの両端に生えるヒレ?のような部位が俺の10倍くらいあるぞ。エリマキトカゲか何かか?


だがこの娘は… 《ラミア》だな。女性の上半身と蛇の下半身をもつ蠱惑的な姿。初めてみる。

俺と同じ原種還元(プリミティブ)だ。たしか蛇の亜竜である《スネイク》の先祖返りのはずだ。

 

「ふふ。 ラミアを見るのは初めてですか?」


俺はただ興味なさげに首だけで返事をする。俺の知らない種族なんてまだまだ星の数ほどいるのだ。この異世界(ケイオス)なら不老不死になったところで全ての種族に逢うことなど無いだろう。


「貴殿っ! 命を助くた恩人とあれど姫様(・・)にたいして無礼ではあるまいかっ」


ひ、姫様だあ?! あんまり大事にはしないでくれよお。頼むよ。

そういって恐らく護衛の隊長らしき女がそのお姫様の前に出てきた。ふーん…結構美人じゃないの。


「止めなさい! 先ほどから礼を欠いているのは私達の方なのですよ? 貴方達もいい加減に剣を戻しなさいっ!それでも砂の(つるぎ)の戦士の名を名乗るつもりですか!」


そうお姫様が一喝すると護衛達は慌てて太刀(たち)を腰に納めて俺に膝をついて頭を下げた。


俺も少しぶっきら棒にし過ぎたか。『しかし?砂ねえ…』という疑問が俺の顔に出ていたのか聞きもしないの律義に答えてくれる。


「既にお気づきになったかもしれませんが、《砂の(くに)》から参りました。 それと従者が姫などと口に致しましたが、私はしがない商家の娘に過ぎません。」


商家ねえ。しがない(・・・・)程度の商人の娘が姫様と呼ばれてみたり、戦闘はアレにしてもこの質の護衛を少なくとも十人以上連れているとなるとなあ… 嫌な予感しかしないな。


しかし砂の邦か。この世界の左にある半分以上が砂に覆われた土地で俺の邦、丘の邦とは隣合っている。フォー・リバーの姉妹都市、《グリーン・フォール》が在る友好邦だ。

しかしながら砂の邦との行き来は極端に少ない。何故なら丘と砂の邦境(ライン)になっているのだが、《ガイアの爪痕》と呼ばれる巨大な渓谷が海まで続いているからだ。

かつて、西の砂漠には人が住んでいない。とされていた時代、まだフォー・リバーが小さな集落にしか過ぎなかった頃に丘の先遣隊が西の砂漠を旅した際、遭難して偶然にもオアシスに辿り着いた。そこで初めて砂の民と出会い命を救われた。これが後に《オアシスの奇跡》と呼ばれ、これ以降丘の民と砂の民は固い絆で結ばれた友となり、そのオアシスの唯緑の街にグリーン・フォールと名が付けられたのである。 と、これが俺が地理の授業で習った内容だ。

現在は交通の便が風の女神(・・・・)頼りの気球か長距離移動が可能な有翼種族の商隊くらいしか交易の場がない状態だ。グリーン・フォールに実際に足を運んだことがあるのは首長グラコスくらいの古強者か各ギルドの古株くらいだろう。下手すると丘と砂の民は一生お互いに顔を見ることなく《約束の安息地》へと旅立つことになる。ちなみに約束の安息地とは、あの世のことだ。


よって空も陸路も難しいから、海に出たってところか。噂じゃあ《飛行船》なんて代物もあるらしいが。そんな事を考えていると…


「あ、あの。 先ほどタゴン様と名を名乗られと思うのですが…貴方様はあの(・・)タゴン様なのでしょうか? フォー・リバーの奇跡の仔と呼ばれている…!」


水の羽衣の端をキュッと握りながら上目遣いでお姫様はそう言った。その表情はやや興奮しているのか紅潮している。

ちょっとちょっとやめてよね!俺も思わずモジモジしちゃうだろ!

というかどのタゴンだよ?まさか古の時代に女神の元に昇った水の王のタゴンのことじゃあないよな?

まあ確かに名前はそこから付けられてるから強ち間違いでもないか。

しかし、仮にも王の名前を神殿の許可なく使ったりしたら、下手すれば《神罰》の対象になりかねないので同じ名前の誰かさんと勘違いしてるとは考え辛い。

うーむ。奇跡の仔、なんてけったいな呼び方をするのは一部の神殿関係者くらいだろう。ということはこの娘、砂の神殿ギルド支部の関係者か…?


俺は肯定するように頷く。その刹那、

「嗚呼っ!? お目にかかりとうございました!!我らが救世主(メシア)、タゴン様!」


そう言って俺に襲い掛かってきた。ちょっと蛇の尾でガッチリ俺の体をホールドしないで欲しいんですけどぉ! ていうかメッチャいい匂いだな。麝香じゃこうか何かか?

イタタ!締め付けヤバっ。


俺が虫の鳴くような声で「砂の姫様、どうかご容赦を」と懇願するとどうにか俺の顔を見てくれた。


「姫などとっ。どうかラシー(・・・)とお呼びください!タゴン様」


いやイヤイヤ、仮にも間違いなく貴族以上(・・)は確定なやんごとなき身分の方を呼び捨てとかできるわけがないだろう。恐らく()刑に処されること必至である。俺はまだ死にたくない!


「お戯れを、アルージュの姫」とか言ってごまかそうとしたら締め付けがより強くなった。ちょ!出る出る出るっ!!なんか口から内臓とか出ちゃう。


そんな命のやり取りが続いた後、どうにか「ルルゥ」と呼ぶことになった。初名の呼び捨てなんて目上の家長か伴侶くらいしか呼ばないだろ?!いい加減にしろ!


「しかし…我ら砂の民の救世主たるタゴン様にそのような振る舞いをする訳には…」


ルルゥはまだ納得がいってないようだな。というかさっきから救世主って?


「タゴン様の余りにも寛大な施し(・・)によって我ら砂の民の飢えは癒され、大いに潤いを得ました。タゴン様の慈悲を知る者は皆感謝しております」


施し?はてなんのことやら。はたと近くを伺えば、顔を床に向けたまますすり泣く護衛がいた。一様に皆沈痛な表情をしている。ルルゥがやっと俺の体の拘束を緩めて口を開く。


「ここ数全節(数年)砂の邦の要所で飢饉が続いておりまして、民はすっかり疲弊してしまいました。また我が邦の足りぬ糧を他の邦から買おうにも風の女神様のお気が向かずに足を延ばせずに困り果てていたのです」


そりゃあ風が悪ければ気球も商隊も出せないか。風の女神達は筋金入りの気紛れでしられているし、困ったものだ。


「そこに神殿ギルドを通じて、2全節ほど前からタゴン様からの溢れる程の多量な物資が砂の邦に届けられたのです!」


あ。施しって神殿ギルドの《捧げ物》の事か。神殿ギルドには公式な記録石(ログストーン)が設けられていない。ではどうギルドポイントを管理しているかというと、ほぼ女神(・・)頼りだ。

普段の善行や修行は全て太陽(ルーク)と月(女神達の衛星)を通して見られており、神託によってその評価がなされるというものだ。

ぶっちゃけ高位の信仰系クラスに就くものはよっぽど女神に気に入られたか、はっきり言って狂信者と呼んで過言ではない変態だ。少なくとも俺はそう思っている。

て、オオイ!神殿関係者にはできれば匿名希望でお願いします。って頼んでたのに?!チクショー。


実は地味に善行を積む他に神殿ギルドではポイントを得るもうひとつの方法がある。それが《捧げ物》だ。

これは金子以外のアイテムを神殿に納めることで雀の涙ほどのポイントが得られるというものだ。

アイテムは別に女神が欲しがっているわけじゃあないだろうから本当に受け取るのかは疑問だが。

しかし、このアイテムの中に記録石も含まれている。これらが一定のポイントに交換されて各支部へと分散され、物資などに引き換えられ慈悲に縋る民へと施されるのである。また一部のアイテム、主に食品や薬なども同様にして民の助けとして使われる。

無償の施しほど徳の高きことは無し。と神殿ギルドの者にその都度褒められるのでついつい毎節に数度、捧げ物をしてしまった。

俺にとっては貯まり過ぎたアイテムとポイントを有用に処理できて幸せ。神殿側は女神に感謝を捧げ、民を救済できて幸せ。誰も不幸にしない素晴らしいシステムなのだ。

だが調子に乗って、ちとやり過ぎたかもしれないと心の中で冷や汗をかく。


それからここで出逢えたのも女神の導きです!とか、何故このようなところに?と質問攻めにされた。

俺はただ暇つぶしに海に遊びにきただけだが「魚を獲りに来た」とだけ言ってあしらうと、「なんと敬虔な御方だっ!」と護衛達も感動して縋りよってきた。コラ船の上だぞ?危ないだろう。


なんとなく早く帰りたいと思っていると船が急に揺れ、激しい波飛沫と共に全長10メートルくらいの馬鹿でかいサメが遅いかかってきた。


鋭利な歯と顎を持つ岩(ダガー・ジョー)だ!? 姫様!お早くっ!」


護衛達がルルゥを俺から引き剥がし、船室へと匿おうとする。グッジョブだ。やっと自由に動ける。


「これ以上の面倒はゴメンだ」と口の中で呟くと目の前から飛び掛かるバカザメの腹に蹴りをお見舞いして300メートル先ほどまで吹っ飛ばす。


うむ。なかなかの水切り(・・・)だ。10回以上は跳ねたかな。手加減が重要なのだ。思いっきりやるとミンチになった上で収納空間(ストレージ)行きになってしまう。このサメのモンスター正直味がクソマズなのだ…カマボコにもならんし、食べられるセメントみたいな謎食感となるのだ。

だが逆に変に弱らせるのもよろしくない。戦闘の意志を挫かれたモンスターは逃げてくれれば大いに結構なのだが、確率で逃げることすら諦め《捕獲》となって収納空間に送られてしまう。

もう漁師ギルドの収納空間はパンパンのはずだ。できればもう何も入れたくない。


しかし、そんな願いも虚しく数百メートル先の海面から死んだサメがポーチへと吸い込まれた。

ぎゃあー!サメが死にやがった!それでもA級モンスターかよ?!諦めんなっ!

ラ・ミ・ア★登場

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