よりによって転生とは。⑦
なかなか話がく・ぎ・れ・な・い。
思い付きで書くとこうなります(白目)
「た、たったの1曜(1日)でこれだけのポイントだと…?!」
どうやら親父殿はまだ目の前に転がる記録石の量を信じられないようだ。
まあ親父殿はフォー・リバーきっての英傑のひとりではあるだろうが、当人は衛兵として忙しい毎日だ。
きっと俺が主に世話になっている漁師ギルドの一般的な仕事などには明るくないかもしれない。単に魚を獲って終わりという訳ではないのだから。
仕方ない。ここは家族の俺への心配?を取り去るべく、とりあえず今曜やったことを思い出して説明していくとしよう。まあ、ひとつひとつはそんなに凄いことじゃあないだろうし。
さて、どうだったかなあ。俺は指を折りながら記憶を遡っていく。
とりあえず朝起きて。家の裏の岸部で顔を洗う。ついでにそのまま河にダイブ。この時期の河の水は冷た過ぎず気持ちが非常に良い。
つい調子に乗り過ぎて河の底まで突っ込んでしまい石の河まで泳いでしまった。
勢いが良すぎると俺のスキル《世界を泳ぐ者》でどこにでも潜れてしまうのは問題だよなあ。 楽しいけど。
びしょ濡れになって家に入ったからお袋にしかられて、親父殿とシトリーに笑われた。
それからシトリーと河で水切りして遊んだ後、商店街で一緒に買い食い。スイーツ水饅頭が準備中なのは落ち込んだが。
その後、シトリーを魔法ギルドの私塾まで送った後、俺は暇つぶしの為にまた家の裏の河まで戻った。
なぜなら今節分のノルマは既に納めてしまった。どこのギルドもこれ以上出すとギルド統括に申請しなくてはならない。
できればこれ以上悪目立ちしたくないので下手にポイントを稼ぎたくなかった。
特になにも解決策は思い浮かばず、河の上に浮かんで手の平でチャプチャプと水を遊ばせること昼前くらい。
しかし、ふと《海》で泳ぎたくなった。
うーむ、どうせ現在絶賛暇だしちょっと遊びに行くか!思い立ったが吉日っ!そうしよう!
フォー・リバーは名前の由来通り、4つの大河が交わる水の都である。
俺の家の裏にある《雌龍の河》はそのうちの1本で海まで通じている。早速海に向かって俺は南下しはじめた。
暫く泳ぐと途中《仔龍の湖》の方の岸を同じ漁師ギルドのバイト仲間、テューン達が歩いていたので思わず手を振ってしまった。
その場を離れてから思ったのだが、手を振ったのは拙かったかな?俺が仕事もせずに海に行くのがバレたかもしれない。俺は親父殿の立場的にあまり悪い噂を流したくなかったからだ。
まあ気にしてても仕方ない。海で遊んで忘れることにしよう。
さてとりあえず仔龍の湖近辺まで来たってことはあと海に出るまで200キロくらいか?
本気を出せば1時間あれば着くな。楽勝だな!
…良くないな。別に進行スピードのことじゃない。ポイントのことだ。
さっきからまた勝手にポイントが加算されていっている。あ、漁師ギルドはもう3本目だよ。トホホ。
俺は河を猛スピードで南下していたのだが、その道中で否応なしにまたポイントが貯まりだしていた。
問題は河の中の魚や水棲モンスター達だ。俺が近くを通り過ぎるだげで彼らは一刀両断され、腰の《ギルドポーチ》を通してギルドの収納空間へと吸い込まれていく。
はあ。逃げられなかった魚は別として、モンスターはどうなんだ?
例えばB級の《マーダーピラニア》は全長1メートルのちょっと大きめくらいの怪魚だ。貪欲な肉食性で、獲物を狩るために常に群れで行動している。だからこいつらに突っ込んじゃうと軽く30匹はヤっちゃうんだよなあ~。
あとはA級の《アクアテール》と今曜はかち合ってしまった。後半身が魚という牛魚とも呼べるでっかい水牛だ。たしか知能は高いって聞いたけど、なんで俺にむしろ突っ込んでくるんだ!? なんとなく戦ったら一撃必殺だわ、とかわからんのか? 野生の勘とかで。
俺は普通に泳いでるつもりなんだが。それがイチイチ必殺の《アーツ》と化してしまっている。
アーツとはいわゆる必殺技だ。習得後に常用するには神殿ギルドでの登録が必要ではあるが。
他にいわゆる魔力、《マナ》を使用する魔法のようなマナ・アーツ。通称マナも存在する。
俺はアーツなんてどうでも良かったが、学生時のおりに先輩風を吹かす奴に煽られてギルドに登録してしまった。
それが現在進行形で使い続けている片腕泳斬だ。ぶっちゃけ見様見真似のクロール泳法だ。ただ俺がやると腕ヒレと放たれる水刃で近くにいるものを容赦なく真っ二つにしちゃうだけなのだが。まあ滅多に人前では使用しない。
あとそれの広範囲強化版として飛跳水面斬りというアーツも登録してあるが、ここでの説明は割愛させてもらう。
さて途中河に点在する水門やら関所で時間を取られたくなかったので、俺は河の横の土中などを通り抜けてやっと海に出た。
別に仕事ややましい事で来てる訳じゃあないし、構わないだろう。
嗚呼…。潮風が生ぬるくって気持ちいい。サハギン肌にビンビン来るぜっ!
久しぶりにテンションがアガった俺は数十キロほど沖合に出て泳いだ。あまり遠くまでいってしまうと、そこはもう自分の国ではなく別の土地、《海の邦》だ。そこで下手に雑魚一匹でも収納空間に送ってしまえば、立派な密漁だ。軽い罪では済まされない、下手をすればギルドから永久追放処分も有りうる。
ただまあこの辺まではまだ自分が生まれた土地である《丘の邦》の海域で間違いないはずだ。家族のお土産になにか拾っておこう。
ちなみに丘の邦はこの異世界のほぼ中心に位置し、海の邦は南の海域、この世界全ての海の覇権を持つ。なので邦の広さは1番広大だ。むしろ海=海の邦と言って間違いない。
しばし、海での散策を楽しんでいると少し先が騒がしい。数隻の小艇が恐らく商船だろう船を囲んでいる。
「げ!? 水賊かあ。 あいつらホントどこにでも沸くなあ…ヤダねぇ~」
俺は水面から顔を半分だけだし、それを睨んだ。
水賊というのはいわゆる海賊だ。残念ながらこの世界ではこういう輩がかなり蔓延っている、フォー・リバー周辺でも1節に1度は賊による略奪行為が起こっている。
ちなみに・山にでれば山賊。空にでれば空賊。水の上にでれば水賊という非常にシンプルな分類である。水賊は水の上なら海にも河にも湖にも水たまりにでも出るのだ。
「うーん…どうやら放っておく訳には、いかないか」
商船には私兵か護衛の冒険者が乗っているようで、水賊達を必死に牽制しているようだが、対人戦にはあまり自身がない俺からしても見ててよろしくない。まるで水賊との戦いに慣れてないようだ。
この辺の奴らじゃあないのか?一旦、水賊どもを引き離したみたいだが、ありゃ悪手だなあ。
次で一気に船に乗り込んでくるぞあいつら。丸わかりだ。
どれ。海の上だから俺の飛跳水面斬りの有効範囲内だな。でも商船も巻き込むからキャンセル。一番楽だけど。
仕方ない。これも何かの縁だろう。
俺は胸の鰓を閉じると、大きく息を吸い込み船に向かって大きく口を開いた。
「っ俺は丘の民の勇士!タゴン!! 隣邦の義によって水賊討伐のおり、助太刀致すっ!」
気合いが入り過ぎたのか、俺の叫び声が衝撃波となって数隻の船を揺らす。
ちなみに今の少し恥ずかしいセリフは定番の口上で、『私は丘の邦出身のタゴンです。私は戦闘に参加できるほどの力と技術を持っています。あなたの邦と私の邦は仲が良いので、あなたを害する水賊をヌっころします。勝手に助けに入るけどかまわないよね?』という意味である。
呆然とする商船の乗員と水賊を無視し、俺は超スピードで水賊達の小艇を自慢の泳ぎで貫き抜いてやった。
数舜後、凄まじい衝撃と共に全ての小艇は木っ端微塵に水賊毎、キレイに吹っ飛んだ。
正直スカっとした。ここ最近で一番の清涼感が心を満たす。
海面にしたたか打ち付けられた水賊は気を失って浮いていた。俺はポーチから漁で使うロープを引っ張り出すと水賊達を芋づるように商船に縛りつけた。さてとこんなもんか。
水賊の身に着けてるアイテムがポーチに収納されないから誰も死んではいないだろ。
モンスターではない生物をギルドにおいて合法の下に殺害した場合、アイテムは全て倒した者の所有となる。略奪行為をする者、賊もこれに含まれている。
俺は海の中から勢いをつけて商船の上に飛び乗った。そして頭の後ろから背まで続く背ビレの水を切るため両手で髪を撫でるようにしごいた。
すると船上の恐らく護衛(服装が小綺麗だから私兵だろうか)の数名が未だに太刀を抜いたままコチラを見ていた。
なんだ?原種還元(サハギン)を見るのは初めてなのか?流石にギルマンか魚人くらいは知ってるだろ。 コイツら、みたとこ亜竜みたいな種族っぽいけど。
「剣をしまいなさい! 恩ある勇士に対して無礼ですよ!!」
船室の扉が開き、中から水の羽衣を纏った少女が現れた。
ポイントの内訳:ヒロイン?