よりによって転生とは。⑥
皆も家族に内緒にしていることはなるべく早めにゲロっちゃったほうがいいと思うZOY★
(※なお筆者はその秘密が家庭崩壊を引き起こしたり、明るみにでたことで刑事罰の対象となったとしても、一切の責任はとらないものとする。)
~場面は夕食後の食卓に戻る~
イースト家には似つかわしくない重たい雰囲気が漂っていた。
『未納の記録石による他者へのギルドポイント不正譲渡の可能性が有る』と記されている報告書を指先でトンと叩くとハングは実につまらなさそうに、昼間に自分が呼びだされてギルドから聞かされた話を多少掻い摘んで息子タゴンと周りの家族に聞かせる。
当の渦中のタゴンよりもハングはよっぽど嫌な気分を味わい、口の中でかみ殺していた。
何故こんなことを自慢の息子に聞かねばならないのか。ハングはタゴンにではなく、ギルドに怒りを覚えたほどであった。
あれだけのことだ。まだ調査中であるとギルド統括補佐のアルフが言っていたものの、あり得ないと信じていても。ジリジリと腹に溜まるような不安がハングを苦しめていた。
ギルドポイントとはいわば各ギルドにおける指標だ。それらがギルドでの人物評価を決定し、その人物の地位を確立させる重要な要素なのである。
故に、ギルドの方針または個人のクラス(業種)によっては向き不向きが絶対的に存在し、場合によってはポイントを得るのは困難であり、それに応じられない者は地位やクラスの降下。最終的にはギルドを去ることにすらなるのである。
そこで《他者へのギルドポイント譲渡》などという不正が起こるのだ。
ギルド側が常に目を光らせているのにも関わらず数全節(数年間)には1、2件発覚している。
ところがこのポイントは、早々他者のものにすることは出来ない。しかし、巷に蔓延る犯罪を助長するいわば闇ギルドなるものが複数存在し、とかく有名どころの《盗賊ギルド》の手の者にかかれば不可能ではない。
仮にタゴンが犯罪組織に接触していたとすれば、これは冗談ではすまされず、恐らく法を司る神殿ギルドから軽くない罰則が下されるのは避けられない。
ハングは話さなかったが、昼にギルド統括本部で
「俺にっ― 盗人野郎どもと仲良くしているのかと息子に聴けというのかっ?! 許さんぞ!お前らぁ!!」
と怒り狂い、デポポイ達の首を跳ね、 はしなかったものの襲い掛かったことは言わなかった。
ハングは一瞬、珍しく悲しそうな表情を浮かべると、
「なあタゴン… 俺の自慢のジョンタウロよ。 どうか正直に話してはくれないか?」
ハングは今、一番聞きたくないことを息子に聞いた。
目を伏せていた自慢の息子は、覚悟を決めたのか腰のポーチを外してテーブルの上に差し出した。
『聞かなければよかった』そう思ったのは割とすぐであった。
ギルドからの要請など突っぱねればよかった、と。
―…遂にバレちまった。 やっべー。
いつかは聞かれてしまうと、わかっちゃあいたけども。
こんな感じで聞かれるとさ、なんとも、ねえ?
なんだか悪いことをしてしまった気分になるじゃあないか。
さっきからシトリーは心配そうな表情で俺と家族の顔を見比べているし。
兄貴のタウゴサークも不安げな表情をしている。
お袋は相変わらず微え…いや視線だけめっちゃ鋭いな。 …睨まないで。こ、怖いです。
親父殿も辛そうな顔をしてらっしゃる。…うん。
仕方ない。まあそろそろ潮時だしなあ。素直にゲロっちまうか!
俺は気持ちを切り替えて自分の腰のポーチを取り外し、テーブルの上に件の記録石を出してみせた。
「ジャラララララララララッララララァ!! カラン…カッ カン」
ポーチを開け逆さまにすると、思ったよりも勢いよく記録石が積み木の小山のように積みあがってしまった。
逆さまにして取り出したのが悪かったのかな?
俺はポーチを腰のベルトに吊ると家族の顔をみやる。
? 随分と静かじゃあないか。
むしろ『大量大量っ!流石は俺の息子よ!』とか褒めてくれるくらいじゃあないの? …褒めてもいいのよ?
暫しの静寂の後、シトリーがそのカラフルな積み石の山に興味を引かれたのか、おもむろにそこからヒョイと1個の記録石を手に取った。
「うあー。すごく多いね? ター君こんなに持ってたの? …アレ? でもター君のバイト先の石って水色だよね?でも赤いのとか青いのも黄色いのもあるよ。これなんか十硬貨みたいにピカピカしてるよー」
シトリーが不思議そうに代わる代わる手に取って石を眺めている。可愛い。
するとまだ若干、唇が震えている親父殿が口を開く。
「…赤が戦士ギルド。青が魔法ギルド。黄色が生産ギルド。白陶器が商人ギルド。黒鉄が鍛冶ギルド。その銅色が冒険者ギルドの記録石だ。 …まだあるな。それも複数あるから、それぞれ凄いポイントだぞ。 い、一体こりゃあ何なんだ…」
まだ未成年である俺は複数のギルドを掛け持ちしても問題はない。その内ひとつをギルドの申告対象とすればいいのだから。
でも一般のバイトがこれをできるかというと、まず否だ。
ギルドの仕事は違いこそすれポイントの獲得条件がブッキングする。ノルマ対象のアイテムの入手などがそれだ。
例えば適当なモンスターを狩ったとしよう。すると戦士ギルトから討伐報酬としてポイントが与えられる。
魔法ギルドでは実験材料やアイテム開発の材料となる脳や眼球、よくわからない内臓器官などの部位が。
生産ギルドでは肉や加工可能な毛皮やその他の素材が。
商人ギルドなら、そのモンスターの素材を別のギルド間またはギルド外で物々交換以外の取引をするとその収益分が。
鍛冶ギルドでは牙や爪、革や鱗。武器防具を製作できる素材が。
冒険者ギルドでは依頼対象としての依頼や買取対象の素材がポイント化される。
対象となる各ギルドで振り分けられる。重複してポイントの収得はできない。
となると冒険者ギルドだけなら5であったポイントが各1ポイントに分散してしまう可能性があるのだ。
すると、ギルドで定められた節のノルマを達成することが難しくなるのである。
確かに複数のギルドに属する者は少なくはない。それなりに理由もあって就いている。
だが普通はこんなほとんど全てのギルドに籍を置くような真似は誰もしない。
ギルドに納めるノルマがある限り、単なる自殺行為にしか過ぎないというものだ。
だが、しかし。俺には必要な措置であった。
「しかし、お前は12の頃から働きはじめてはいるが。よくこれほどまでに貯めこんだものだな? 恐らく受取期間を過ぎたものばかりだろうが…」
そう言って親父殿が恐る恐る記録石を手に取って眺める。
あ。何だそんなことが心配だったのかー。やだなあ。
あったり前だろお。そんな勿体ないことする訳ないで生姜焼き。
俺は久しぶりに胸の鰓をピッタリと閉じると鼻から空気を吸い込み、口を開いた。
「それ全部、今曜の分だから」
「「「「え?!」」」」
どうしよう。また固まってしまった。
次はとんだ言い訳回になると思います(笑)
やっぱりダコン君も異世界転生無自覚無双ラッキードスケベハーレム野r(以下省略)




