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よりによって転生とは。③

なんかヒャッハーする系主人公ではないので微妙な話が続くかもですね。

主人公は徐々にはっちゃけられるようになる予定です。


「またサボり?」


「……………」


クスクスと小気味よい笑い声を聞きながら俺は後ろに振り返った。


そこには黒い毛皮がキラキラと美しく映える獣人の少女が立っていた。


「……シー姉か」そう言って俺は再び岸の方に顔を戻した。


「相変わらず元気ないんだねえ」


そう話しかける少女はフワリと俺の隣に腰を下ろした。

歳は12、年相応の可憐さを十二分に振りまく少女。

シー姉。本名はシトリー・イースト。そう、俺の実の姉だ。

ちなみに俺は最近14になった。

…妹ではない。

何故に同じ両親から生まれたはずの《姉》が俺より年下なのか?

別に大いなる世界の設定ミスとかではない。イヤ、神様レベルの設定ミスという線は捨てがたい。


実はこの世界にはちゃんと暦があるが、いわゆる誕生日は存在しない。

なぜならこの世界ケイオスは種族の坩堝(るつぼ)。様々な種族が生き、混ざり合う世界なのだ。

そして寿命というか成長スピードも個人で異なるのである。

この世界の暦だが24節(うるう年みたいのが25節目)の基本300日だ。

月が24月まであると言えばよいのだろうか?しかも各節の日数はバラバラだし複雑極まる。

曜日は存在しないので日数は《曜》という単位が使われている。

まあ詳しくはそのうち説明があるだろう。こうご期待。


しかしだ、俺は別に元気がないわけじゃあない。モリモリでもないが。

それにサボりて。そんなことできるわけないでしょう。そんな勇気があったら欲しいくらいだ。

そう口の中で独り言ちながら腰のポーチから《記録石(ログストーン)》を取り出して見せる。


「なんだ今日の分の仕事はちゃんとしたんだ。というか相変わらずのポイントねっ。関心♪関心♪」


俺が見せたのは水色の小さなテレビリモコンくらいの大きさと厚さの立方体の石だ。

水色は俺が現在バイトしてる《漁師ギルド》の記録石なのだ。

その石には複雑な模様が刻まれており、その模様が仕事量に応じたポイントとして石に刻まれるのだ。

いわば失敗のないタイムカード。自身の労働の記録なのだ。

それをギルドに収めることで報酬を得られるシステムなのだ。

俺はまだ成人してないので正式にギルドに就職できる訳ではないのでアルバイターというわけだ。

この世界の法(ただしフォー・リバーと周辺国)では未成人のものは《勉学》か《労働》を義務付けられているので仕方ないことだ。

ちなみに成人は15である。

そんなことを考えている内に水面は優しい朱色から黄昏色に変わり始めた。


「さてと、もう晩御飯だよ? 家に入ろ」


そう言って手を引かされ立たされる。小学生にしか見えないシトリーだが思ったより力が強い。

獣人だからだろうか?まるで小さな子供のように手を握られて引っ張られる。


どうみても俺が親でシトリーが子供にしか見えない。

俺は苦笑いを浮かべてしまったが気づかれただろうか?


手を引く小さな姉にとても敵わず、俺は自分の家族が待つ家へと歩き始めた。


玄関の扉を開き、家の中のお袋に声をかけようとするタイミングで、これまた後ろから声がかかる。


「お? タゴンもちょうど帰りかい」


そこには整った顔立ちの青年が安心するような笑みを浮かべている。


「兄貴おかえり」と俺が声を出すまでもなくすぐそばから元気よく激励の声が上がる。


「おかえりなさいっ! タゴサク先生」


満面の笑顔でシトリーが彼を迎える。

彼も笑顔でそれに答えるのだ。


タウゴサーク。彼が俺とシトリーの兄である。確か歳は20と少し…だったはずだ。

先もあったがこの世界では誕生日を祝う風習はあまり聞かない。

それに経年歴(歳を重ねる日数は個人で決まっている)に違いがあるので家族でも年齢をお互いによく知らなかったりするのが普通だ。

特に成人する15歳以降は本人も含めてなおさらおざなりになる。

ちゃんとした年齢はギルドで調べて貰わなければならないほどである。


「まいったな。せめて家では、先生はやめてほしいなあ」


まるで困ってないかのような笑顔で黒い毛皮を髪のように手で軽くすいてみせる。

「タゴサク先生」とは兄貴の愛称だ。職場の同僚や彼を慕う住民からそう呼ばれているのだ。


「さてと、ちょっと部屋を片付けたいから先に家に入れてくれないかな」


そういって俺の肩とシトリーの頭をポンと優しく叩いて家の奥に入っていった。

お袋が兄貴の名前を呼ぶ嬉しそうな声が聞こえる。


玄関の扉を閉めると、あまり強くない薬の匂いがした。

兄貴が先生と呼ばれる理由。兄貴の本業は学者のようなものだが、南区にある商人ギルドの魔法治療院で薬草医として勤めている。


「…タウゴ。引っ越しちゃうのかな」


俺は今だに手をはなしてくれない小さな姉に顔を傾ける。


「だって。部屋を片付けるって」


うーん。どうだろ? なくはないかもしれないな。

兄貴は非常に忙しいのだ。学者もして医者もしているし各ギルドにも頻繁に呼ばれているらしいしな。


まあ兄貴の活動地域の南区は最も広い街だ。

いい感じのアパートとか、物件のひとつやふたつ間単に見つかるだろうしなあ。


「晩飯の時に聞いて見ればいい」と俺が口を開こうとすると…


「そうだね!そうするっ」


エスパーかな?もしかしてシー姉じゃあなく俺のほうが…

残念!ヒロインは姉でした! むしろそれがいいっ↑!


タゴンの家族紹介が次回も続きますょ

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