よりによって転生とは。⑫
まさかの寝落ち。しかも話がまとまらないので区切りには次話になるはず。
あと誰も気にしないとはおもいますが、登場キャラが多すぎるので、スカーの一人称を「アタイ」、ドラムカンの一人称を「僕」に変えてます。どうでもいいねっ!
「まず、各ギルド長にお聞きしたいのは、先のタゴン様の収納空間についてですが。既に漁師ギルドと生産ギルドからお話は伺っておりますので除外します」
そう言って、ギルド統括補佐のアルフがギルド長の顔を一人一人見まわしていく。
「戦士ギルドは何故報告をされなかったのですか? 彼が正式な所属でもないのに多数の物資が出し入れされていますね? しかも鍛冶ギルドから納められた武器防具の質と量は無視できないものと、私共の調べでは聞き及んでいます」
すると戦士ギルド長の酔っ払い幼女であるクオリキが空になった酒瓶を振りながら答える。
「はえ?ヒック。知らん知らんしっ!そもそもうちのギルドじゃあ収納空間は個人の貸し倉庫でほとんど訓練場に詰めてる奴らのロッカー代わりだし? うーヒック。あ~でもタゴンがさあ、ギルドの連中に武具や魚を配ってくれて助かったぜ。ここ最近、大きな戦がないから武具の質が落ちてボロかったしさあ~? それにギルドに詰めっぱなしの奴はろくなもん食ってないから皆感謝してたなあ」
「戦士ギルドから武器防具の申請は幾度かありましたが、その時点で提供がタゴン様とは聞いてないんですが? はあ、そこは追々詳しく調べる必要がありますね。 では次に魔法ギルド」
するとその隣にクッションのように座っていた魔法ギルドの長、マギアオリアハットが髭を弄りながら答える。というか全身髭みたいだけどな。
「アタシは坊ちゃんのやることにイチイチ文句つけるような真似しないわよぉ?というか坊ちゃんのおかげで魔法ギルドの魔導士達はいま最高にハッピーなのよ。ギルド統括にいくら申請してもコチラに回してくれない貴重な素材やアイテムをポンと出してくれるんだもん。今更坊ちゃんを取り上げられたら、うちの子たちギルド統括に謀反を起こしちゃうんじゃあなーいの」
「いや、マギアオリアハット様。そも魔法ギルドの一部だとは思いたいのですが、そういう過激派な魔導士が在籍しているのでコチラ側も物資を回しかねているんですからね? 先日も極大魔法の実験で東区の建造物を数棟破壊したと報告が来ていますから。 これ以上の被害を出されでもしたらギルドの解体も示唆されますからね?本当にお願い致しますよ。 では次に神殿ギルド」
「うむ」と応えながら司祭服を纏った海坊主、じゃなかったシーモンク族の神殿ギルドの長。サイナモン司祭が前に出る。
「タゴン様はこれまでに幾度となく、女神への奉仕をもって《捧げ物》を我が神殿にされています。それにより先の砂の邦をはじめ、多くの民が飢えから救われ、女神とタゴン様に感謝を捧げております。無論我ら神殿関係者もですが。過上とも呼べるほどの施しをされているのは我らも知るところではありますが、《捧げ物》自体は個人の意思を尊重するもの。よってその善意を我らが遮ることは今後とも無いのです」
「確かに《捧げ物》自体には問題がないどころか友好邦の救済に大きく貢献されています。しかし、それを早く報告して下さればここまで大きな問題には…いや無理でしょう。 次に商人ギルド」
アルフがそう告げると親父殿と睨み合っていた珍しいスーツを着た恰幅の広い魚人。商人ギルドの長、スクーンがやっと顔を離して口を開く。
「俺もだいぶ前から把握してはいたのン。他のギルドでは捌き切れない大量の物資があるってのン。ただ商人ギルドとしては邦の内外でかなりの物資を動かせたのは事実だし、かなりの利益も出てるのン。それに海の邦までたった1曜で最低でも1回以上往復できる人物なんているとは思わなかったのン。」
「実際に市場を管理して頂いている以上、強くは申せませんが。流石にここまで大きな商い事をされたのであればギルド統括に報告して欲しかったですね。金が集まると闇ギルドの動きが活発になりますから。 最後に冒険者ギルド」
「はい」と言ってこの中で最も巨大な男が顔を上げる。冒険者ギルドのギルドマスター、マーティアスだ。見た目と違い、とても腰の低い人物であるようだ。
「冒険者ギルドでは各個人の収納空間に干渉することはありません。死亡時にのみ公開され、ギルドと遺族の方に分配される決まりです。しかし、ここ数節のうちに討伐困難な主に水棲モンスターの大量討伐はコチラも認めてはおりました」
「なるほど、承知しました。確かに冒険者ギルドは戦士ギルドの傘下とは言え、運営は別ですからね。ギルド統括からはこれ以上、何かを催促するつもりはありません」
「有難う御座います」と言ってマーティアスが再び顔を下げる。というかデケェ顔だなあ。シトリーより大きいんじゃあないか?
「各ギルドでそれぞれ思う所があるのはおおよそ解りました。 確かに今回は規格外な案件ではありましたが、今後はそれを踏まえた上でギルド間の情報供給に努めるべきでしょう」
そう言って締めくくるとアルフは息を吐き、俺達に頭を下げる。そして俺を何故か見つめると、
「では今夜、決を取りたい議題なのですが。それはタゴン様が成人された暁に所属するギルドについてです。研修期間は最短2全節(2年間)ですが彼はランクSなので最長で5全節まで可能です。これだけ有能な人物ですのでそれ相応の活躍が成せるギルドに就きたいと当人もお考えでしょうし、周囲の者もそれを強く望むでしょう。 それでは皆様、どのようなお考えをお持ちかお聞かせ願いますか?」
イヤー俺もなんだかんだで15(成人)かー。となると本格的な就活だな。この世界じゃあ殆どの者が何らかのギルドに就くか、その傘下の小商いをやっているのが相場だ。結構迷ってるんだよねー俺。
そうすると周りから「なんだそんなことか?」とか「決まっているだろうとも」みたいな声が盛んに聞こえてくる。
何だろう。イヤな予感しか、しないんだが?
「そんなの、私の(アタシの)(俺の)(拙僧の)(僕の)(アタイの)(私めの)ギルドに決まってるじゃないか(じゃない!やーねぇ)(じゃないかン)(おります故)(しかないよ)(でしょう)(おるのです)」
あー、もー。
「「「「「「「は?(え?)(ン?)(世迷言を)(嘘だろう?)(ちょっと?!)(何をおっしゃる?)」」」」」」」
この後すごく揉めた。アレ?俺のことについて話してるのになんか忘れられてるような気がしてきたぞ。
窓を見ると、既に太陽が地平線から顔を出していた。
皆の人気者(収益的な意味で)タゴン君。




