よりによって転生とは。⑩
小説書くのに夢中になって、ブクマ中の作者さんの更新話を読む前に寝落ちする最近です。
早く休みになあれ!(絶望)
場所は変わってここはギルド総括本部上階謁見室。
「聞けば聞くほど、頭が痛くなってきますね…。ああ、勿論御子息を責めているわけではないのですよ。…責めているわけではないのですが」
そう言って頻りに自らの眉間を揉んでいるギルド統括補佐のアルフさん。どう見ても人間の子供にしか見えない。シトリーと同じくらいにしか思えないぞ。
でも、親父殿が言うにはとうに30を超えたというからこの異世界の種族は恐ろしい。というか俺が思う普通の人間みたいな種族はいない可能性がある。いないかもしれないだけだけど。
「しかし、何故他のギルドから何も報告がなかったのか。イースト氏と御子息には申し訳ありませんが、各ギルド長の聴取にお付き合い頂きますので改めて宜しくお願い致します」
アルフは渋面を作って頭を下げる。親父殿は手をヒラヒラさせてそっぽを向いている。
さっきまで散々謝罪の言葉を浴びていたからだろう。
「ごめんなさいね。うちのがひねくれてて。ター君の疑いが晴れて1番嬉しいのはこの人だから」
お袋がクスクスと笑い声を出しながらアルフを慰める。
「誰がひねくれものだ!」と親父殿が年甲斐もなく顔を赤くしている。というかお袋もいい加減、人前でター君はやめてくれんかね? 恥ずいわ~。
「本当に申し訳ございません!イースト夫人。これも全てギルドの管理不足が招いたことですので」
そう言ってアルフは再び頭を下げる。
俺達は現在、ギルド総括本部の謁見室に居る。家で記録石と砂の邦の姫の話をした直後、親父殿にギルドまで連行されたのだ。何故かお袋も付いてきている。ちなみにあの後、シトリーは虹色貝を眺めながら疲れて寝てしまい。兄貴は家でシトリーを見てくれている。
「もういい、もういい! もう頭を下げるな、アル!首がもげるぞ。 統括が他所の邦に出張して不在だから、お前が気張ろうとする気持ちはわかるがな」
それでもアルフは顔を上げなかった。
「ったく。この頑固者め! …首長からもコイツにどうにか言って下さいませんか?」
「グララララっ! 許せよハング。ギルドも悪気があるわけではないのだ…。 アルフにも迷惑を掛けておるな」
「いえ!とんでもございません!グラコス首長。この場にいて頂けるのも恐れ多く…」
「何、儂も今回の話に興味があったのだよ。東の英雄、水平チョップのハングの息子。フォー・リバーの奇跡の仔、タゴン。にな」
そう言って凄みのある深い笑みを俺に向ける。
彼こそが グラコス・オルタ=デイン・ギガボルト。 フォー・リバーを拓いた生ける伝説。ドラゴンスレイヤーであり海龍の一族の姫を娶った英雄。
そして一度は王の座にすらついたが、愛する妻を娶るために女神の寵愛を断り、その女神の下を去った元水の王。それでも水・風・火の3柱の女神から加護を得て御年250を超えてなお、俺と同じ個体値総評Sを誇るまさに怪物の中の怪物。
そんなフォー・リバーの絶対王から威圧にも似た笑顔を向けられると俺でも息が詰まる。
というか250って。種族によるバラツキが大きいが、この世界の平均長寿年齢はだいたい100前後だ。俺からすれば大変長生きのような気がするが。気合いがあればなんとか200くらいまで生きられるのがこの世界らしい。スゴイなー。
まあマギーの爺さんも噂じゃあ300いってるとか聞いたし。何でもありの異世界だ、不老不死のやつがいたっておかしくない。
「グラララっ!それにしても砂の邦の姫とやらのやり取りは笑えるわい。ハングよ。貴族嫌いのお前のことだ、そのような習わしがあることは存じておっただろう。なぜにタゴンに教えなかった?」
「申し訳ありません、首長。流石に成人した時には教えるつもりでしたが…私も妻も、まさか由緒ある貴族の娘さんから息子が海で逆ナンされるとは夢にも思わず」
そう言って親父殿は頭を掻きながら頭を軽く下げる。
そう。そうなのだ。ギルドに着いてアルフに事情を説明した時に初めて聞いたのだが。
「ター君?基本的にちゃんとした貴族の娘は求婚されるのではなく、自ら意中の相手に求婚するのが常識なのよ。特に相手が自分の地位と同以下だった場合、あえて高圧的な命令をするの。ター君その娘が自分はただのラミアで姫なんかじゃあないって言ってたのに、急に家名まで使って命令してくるなんて変だと思わなかった? それで命令をした相手がそれを拒んだ場合、”俺は貴方と対等な存在になりたい。あなたの意思を受け入れます”って意味になるのよ? 平たく言うと、ター君はその娘のプロポーズを受けちゃったことになるわけねぇ。」
だ、そうです。 って、そんなの知らんわああああああぁぁぁっいっ?!
「グハハっ!御子息は相当女人で苦労なされそうですな? グララララララっ!!」
笑い事じゃあないでしょ。 首長とはいえ許さんぞ。
「ところでアル。ギルド長だが、こんな時間だ。どれだけ呼んであるんだ?」
「はい。一応、御子息が携わった全てのギルドに声をかけましたが、こちらの要請に応えたギルド長は…戦士ギルド、魔法ギルド、生産ギルド、漁師ギルド、商人ギルド、神殿ギルド、冒険者ギルドの7名の方ですね」
「げ。商人ギルドもかよ? てことは叔父貴も来やがるなあ。小言が煩いから嫌なんだよな~…というか相変わらず濃いメンツばっかりだな?胃がムカムカしてくるぜ」
「まあまあハング。そんな事言っちゃダメでしょう?」
嫌がる親父殿をお袋が窘めている。俺も半分は会ったことがあるからわかるが確かにキャラが濃い。
もう半分は知らないな。できればこれ以上大事にはならないで欲しいが…
その願いは残念ながら叶わなかった。
次話ではまたいっぱい新キャラが出ます。(白目)




