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幕間: バスターズの面々

劉備軍バスターズに選ばれた3人の戦いと心情について。

建安8年(203年)9月下旬 益州 巴郡 徳陽とくよう近郊


【黄忠】


「我が名は黄忠こうちゅう 漢升かんしょう。そこのお前、関羽ではないか?」

「いかにも。我こそは関羽かんう 雲長うんちょう。だがそれを聞いてどうする? ジジイ!」

「知れたこと。ここで討ち取ってやるわい」

「フハハッ、年寄りの冷や水は体に毒だぞ」


 くっ、生意気な。

 多少、歳はとっておっても、お前なんぞに負けるか。

 儂は矛を握りなおし、関羽に向けて振り回した。

 するとその勢いが予想外だったのか、関羽がたたらを踏んで馬をひく。


「くっ、面妖な動きをしおって。伊達に歳はとっておらんな」

「フハハッ、負け惜しみを言いおって。顔がひきつっておるぞ」

「やかましい!」


 ムキになった関羽が、矛を突き出してくる。

 フフフ、やはり普通はそうくるよな。

 しかし儂らはひと味違うぞ。


 なにしろ孫策さまより、あぶみなる馬具を頂戴して、鍛えてきたからな。

 しかし最初は、儂も戸惑ったものよ。

 幼少の頃より鍛えてきた馬術を、馬鹿にされたような気がしたんじゃ。


 そこで抗議してみたら、孫策さまと馬上試合をすることになった。

 儂は今までどおりの状態で、あちらは鐙を使ってだ。

 最初は侮っていたが、すぐに儂は不利を悟った。


 なんというか、馬上での安定感が違ったのだ。

 儂が太腿ふとももで馬体を挟んでいるだけなのに比べ、孫策さまはその下に足場がある感じだ。

 そのため上体が大きな動きに耐えられるし、切り返しも速い。


 いいようになぶられてからは、さすがに認めざるを得なかった。

 鐙を使いこなせれば、儂らの馬術は格段に進歩する。

 その後は暇を見つけては練習をしたものよ。


 もっとも、この鐙自体が試行錯誤の段階で、まだまだ改善の余地は多いがのう。

 あまり調子に乗っておると、すぐに壊れてしまう。

 その辺の力加減が難しくて、十分に使いこなせておるものは少数じゃ。


 儂はもちろん、その少数じゃぞ。

 こうして関羽と戦っていても、まだ余裕があるほどじゃ。

 おっ、隙あり!


「ぐはぁっ!」

「「「関羽さまっ」」」


 チッ、仕留められるかと思ったが、敵の雑兵に邪魔されたか。

 おかげで関羽を逃してしまったわい。

 まあいい、いずれ再戦の機会もあるじゃろう。

 今は孫策さまに、この朗報を届けよう。

 待っていてくだされ、我が君。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【太史慈】


「我が名は太史慈たいしじ 子義しぎ。そこな武人、勝負せよ!」

「うぬっ、我こそは趙雲ちょううん 子竜しりゅう。その勝負、受けた」

「貴殿が趙雲どのか。その覚悟、いさぎよしっ、ぬああっ!」

「なんの」


 むう、さすがは趙雲だ。

 俺の渾身の一撃をしのいだか。

 しかしまだまだ勝負はこれからよ。


 思えば孫策さまに見出されてからは、激動の日々であった。

 奇策で夏口城を落としたと思ったら、じきに荊州の大半を制してしまった。

 その後も反抗勢力の討伐に、走り回ったものよ。


 しかし忙しくはあるが、充実感を感じられるよい人生でもあった。

 手柄を立ててもうとまれ、重用されなかったあの日々とは、雲泥の差だ。

 元々、俺は人並み以上に武器も使えるし、馬術や弓術にだって自信はあった。


 そしてその腕っぷしをもって孔融こうゆうや、劉繇りゅうように仕えてきたのだ。

 しかし孔融では先が見えなかったし、劉繇は俺を重く用いようとしない。

 特に劉繇の野郎は、許劭きょしょうとかいうクソみたいな人物鑑定家の言うことを、気にするばかりだったからな。


 結果、まともな戦もさせてもらえぬままに、劉繇は敗走し、俺はヤツを見限った。

 その後、山賊まがいのことをしていたら、とうとう孫策さまの軍に捕まってしまう。

 とうとう年貢の納め時かと思ったが、あろうことかあのお方は、俺の縄をほどいてくれたのだ。

 そして孫策さまはこう言った。


「さあ、これでお前は自由だ。よければこれから、俺と一緒に天下の大事だいじに当たらないか?」


 俺はその言葉に、激しい衝撃を受けた。

 それまで求めてやまなかった、天下の大事に関わるチャンスが、目の前に示されたのだ。

 なぜ、孫策さまはそれを知っているのだ?

 一体このお方は、どこまで俺を理解してくれているのか?


 俺はすぐさま孫策さまに忠誠を誓い、今こうして戦っている。

 真の主を得たこの体の、なんと軽いことよ。

 孫策さまに忠誠を誓い、そのために全身全霊をかけることの、なんと幸福なことか。


 待っていてください、我が主君よ。

 今回も勝利を持ち帰りましょう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【甘寧】


「我が名は甘寧かんねい 興覇こうは。そこのヒゲダルマ、尋常に勝負せよっ!」

「やっかましいわ、この筋肉ダルマ。この張飛ちょうひ 益徳えきとくがその首、切り落としてくれるわっ!」

「やれるものなら、やってみろ!」

「おおさっ!」


 うまいこと見つけた張飛と、矛をぶつけ合う。

 さすが音に聞こえた豪傑だけあって、尋常な強さではない。

 しかしこの俺も決してひけはとらねえ。

 ましてやこのあぶみがあれば、負ける気はしねえってもんだ。


「そらそらそらっ! さっきの勢いはどうした?」

「むむむっ、調子に乗りおって。俺の突きを受けてみよっ!」


 おっと、今のはちょっとヒヤリとしたな。

 こっちが有利だからって、あまり油断するのは危険か。


 それにしても孫策さまは、すげえお人だ。

 ほとんど無名の状態から兵を起こし、またたくまに江東を制覇したんだからな。

 その噂を聞いて俺は、そんな将の下に付きたいと思っていたら、逆に攻められる側になっていた。


 黄祖の下で夏口城を守ってた時に、孫策軍が襲来したんだよ。

 しかし黄祖も無能じゃなかったんで、このまま守りきれると思っていたんだが、思わぬ落とし穴があった。

 敵が密偵に火事を起こさせて、城を攻め取っちまったんだ。


 後で聞いたら、1年以上前から仕込んでたってんだから、びっくりだ。

 やっぱり持ってるヤツってのは、違うのかねえ。


 その後、黄忠のジイさんの推薦で、俺は孫策さまのおそばに付くことになった。

 そしたら黄蓋や程普、太史慈や周泰、呂蒙とか、すげえヤツがゴロゴロいるのな。


 しかしそれ以上に凄いのが、軍師系のヤツらだ。

 周瑜とか陸遜、魯粛に龐統とか、めっちゃ頭いいんだぜ。

 俺はたまに、あいつらが何を言ってるのか、分からなくなるんだ。

 同じ言葉を話しているはずなんだけどな。


 それに加えて、文官も充実してるから、領内の開発は進むし、補給も滞らない。

 すげえなあ。

 あれだけの人材を、縱橫に使いこなすなんて。

 あれが王の器ってやつなのかも、しれねえな。


 ひょっとしたら俺も、ここでなら将軍になれっかな?

 うむ、なんかやれる気がしてきたぞ。

 そのためにはまず、目の前のヒゲダルマを仕留めねえとな。

 おらっ、俺の将軍就任の、生贄になれ~。

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新作始めました。

それゆけ、孫堅クン! ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~

今度は孫堅パパに現代人が転生して、新たな歴史を作るお話です。

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