ダンジョン攻略の日々
あの王様との会合から一か月あまりが経過していた。
俺はあれからひたすらにダンジョンを潜り踏破していた。
アルフレッド第二迷宮のみでは飽き足らず、国内にある様々なダンジョンを同時攻略することを目標に学園のクラブにて迷宮攻略部というものまで作成した始末だ。
結論からいうとあれから三日後にアルフレッド第二迷宮は完全攻略をした。
予想通り高位の魔族や、デーモンロードが迷宮には蔓延り、何かを目的として行動していたと俺たちは推測している。
迷宮攻略部を立ち上げた理由だが前述したとおりで、魔族達が組織的に動いていることを予感した俺は、一人ではとても情報収集などに手が回らないと考えたからである。
現在の迷宮攻略部には大きく分けて諜報課、情報収集課、究極魔術師課という三つの部署がある。
諜報課は他国の些細なダンジョンの情報を、情報収集課は魔族の目的や動向を。
そして究極魔術師課は俺が率い、シルフィ筆頭に学園の有能な学生達の戦力の底上げを目的に結成した。
「カイトさん、各国の迷宮調査の情報が上がってきました」
「ん、資料をみせてもらっていいか?」
「はい」
彼の名前はノイマン、魔法の独特な理論体系を得意としていた彼に、今は一時的に手伝ってもらっている。
俺は彼の手から束になる資料を受け取るとサッと全体に目を通す。
各国の資料を比較してみると正式な迷宮調査をしているのは大抵が二か月以上前である。
そして各国のここ最近の冒険者の死亡・行方不明者数は大幅に増加していた。
(ふむ……。やはりこの数字を見るに全世界の迷宮で異変が起きているのだろう……)
この世界は信じられないぐらいに冒険者への扱いが適当だ。
魔術師ファーストの思想が全世界に根付き、冒険者など魔法も扱えない愚民どもという評価が一定している。
それに疑問を抱いている魔術師も少数はいて、冒険者として活躍をしているものもいるがそれは極一部の代わり者の例外といったところだ。
「ん……?」
資料に目を通していると一か所だけ気になる部分を見つける。
「ノイマン、ここをどう思う?」
「ここってどこですか?」
訪ねてきたノイマンに資料を指さすとグイッと身を乗り出し覗き込んできた。男なのにいい臭いを漂わせ少し不覚にも少しドキドキしてしまう。
「あー、ここアーデルハイド王国ですよ」
「アーデルハイド王国…?」
「ええ、ヴィンセントという凄腕の魔術師がいる王国です」
「ほぉ……」
(凄腕というのは一体どれほどのお手前なのだろうか……手合わせ願いたいな……)
「おそらくですが、アーデルハイド王国はヴィンセントによって冒険者の迷宮の被害が抑えられているのではないでしょうか?」
「ヴィンセントは、世界最強の魔術師ライシェと負けず劣らずの腕前という噂ですし」
「なるほど、な」
ということはアーデルハイド王国の被害が少ないというのはヴィンセントというもののお陰なのであろう。
「よしわかった、ノイマンありがとう。 引き続き情報収集をよろしく頼むよ」
「ええ、任せてください」
ノイマンに軽く挨拶をし俺は迷宮攻略部から退室をする。ちなみに部の運営をしている暇はないので運営の大元は数多の部を運用している超人、カズヒト君に任せている。
そして俺はその足で、シルフィの元へと向かう。
「えーっとこの時間帯にシルフィは……温泉か」
学内の時計にチラリと目をやると現在は15時を回ろうとしている。この時間にシルフィはいつも決まった場所にいるのを俺は知っていた。
魔法学園には様々な施設が整っている、魔法訓練場、体術訓練場、射的場、娯楽施設、プール、温泉などだ。
(そしてシルフィはいつもこの時間……)
そういいながら俺は温泉の更衣室の扉をガラガラとあけてはいっていく。