表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六階の異世界  作者: 駒津榊
5/10

遠足

こんなクソみたいな会社とも、もうおさらばだ。

と思うと、仕事が少し楽になった。

異世界に行く準備をするのに、少し日数が必要なことは、宅配便のお知らせメールで知った。

でもどうせもってあと数日のこと。

ならば力を抜いてやってもいいし、適当に回しておけばいいや。

数日の間、怒られても回避できるようになった。

どうせあと数日でこの世界からおさらばできるのだから。

「お疲れ様でしたー!」笑顔で定時で退社する。

そう、こんな感じでいいんだ。私には異世界があるんだから。

四日後、私が異世界(?)からここに戻ってきてからそんなに日数が経ってしまったんだ、と思う。

でもあの記憶は、とても鮮明だった。

宅配便で届いた荷物はそろって、ようやく旅立つ日。

0時、お酒を片手にTVでニュースをぼーっと眺めていたら時間になった。

「行こうかな・・・・・・」

ガチャリと鍵をしめ、ふぅ、と息をつき、歩く。

今日は月がきれいに出ていた。

私も裸足じゃなく、どんな異世界にいってもいいようにスニーカーを履いてきた。

リュックサックには日用品と風邪薬を。どんなことがあっても大丈夫なようにスマホの充電もしっかりしておいた。

そもそも電波が通じるかわからないけれど。

遠足か!と突っ込んでみたけど、確かに遠足かもしれない、と納得してしまった。

とても遠くまでいって、戻ってこない、遠足。

「じゃあね、世界」

とつぶやく。歩き出す。あの異世界にまで。


会社のビルはあいていた。

そしてエレベーターの工事もそのままだった。

まだ工事が続いてるんだ、と独り言をこぼし、立ち入り禁止の看板を外し、網の壁をずらした。

よしこれで、中に入れる。上のボタンをおす。

通電されていなかった。

こういう時は、どうしたらいいの?

管理室に行けばいいのかも。

一階に管理室があることは、壁の看板で理解した。

「管理室」と扉に古いフォントで書かれていた。

運よく鍵がかかっていなかったので、入らせてもらう。

えーっと電気電気、ブレーカーが下がっていた。ブレーカーも古く、1973年という刻印がされていた。

このビル、もしかして50年くらいたってたの?そりゃあこんなにおんぼろになるわけだ。

ブレーカーを上げる。

ぴかっと、白い光が部屋をたたえた。

これでエレベーターも使える。

エレベーターホールに戻る。

エレベーターホールは小さく、ホールというよりも、

廊下にエレベーターがくっついているような、そんな感じ。

上のボタンをおそるおそる押す。

オレンジ色のくすんだ光がボタンから発光した。

よかった。生きてる。

エレベーターは開いた。うん、乗ろう。

人間一人が乗るだけでグラグラとエレベーターは揺れる。

今まで気にしないで使っていたけど、やっぱり怖い。

6階のボタンを押す。

ゴウンゴウンと上に上がっていく。

4階、5階、6階。

チーンと音を外し気味な到着音と、ギシギシという音を立てながら扉を開く音。


そして、あの光が差し込んできた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ