10/10
少女、世界へ
「あ、雨」
ちょっと旬が過ぎたタピオカミルクティーを片手に少女は新宿駅の構内に入った。
彼女はいまだにそれがいい、と周りに言い張っている。ある意味で変化を嫌う少女だった。
雨の日、少女はまた新宿駅のトイレに飲み干した空のペットボトルをポイ捨てしに行く。
片づけられていることを確認するために。
この世界が、自分ひとりじゃないということを確認するために。
そして彼女はトイレの一番左から二番目を選び、入った。
そして「その世界」は彼女一人だけの世界であることを知る。
タピオカミルクティーを入れた空の容器はぽす、という音とともに芝生の上に落ちた。