6話:一条家は冒険者になる
翌朝。
街へと向かって歩く俺達一条家。
途中魔物が出るも難なく倒しレベルも上昇した。
とはいっても、まだレベル5程度なのだが。
歩くこと数時間。
大きな壁が見えて来た。恐らくあれが街なのだろう。
「なんか検問しているな。どうする? 俺達身分証なんて無いぞ?」
「あら、そうねぇ~どうしましょうか?」
「伊織、なんか便利な魔法はないのか?」
「ないから!」
「お兄ちゃん。身分証無くしたで行けるんじゃない?」
「この人数で無くすか?」
その言葉で黙り込む。
いや、その案で行くとしよう。
「舞の案で行くか」
「でもどうやって?」
「それは──」
俺はみんなに説明する。
身分証を落としたと伝える。当然検問している兵士には怪しまれる。
そこで、休憩中に盗賊達に襲われ命からがら逃げ切ったと。
「でもマジックバックを持っているのは怪しいんじゃないか?」
「バックは隠せばどうとでもなるだろ」
「隠すってもどうやって?」
「俺の職業は大賢者だぞ? 収納魔法だって使えるさ……多分」
多分使えるはずだ。
本を読んでいたら収納魔法に関する記述があった。
たしか、想像力が影響するって書いてあった気がする。
「多分ってなぁ……」
「伊織大丈夫なの?」
「そうだよお兄ちゃん!」
「まあやってみるよ」
収納魔法をイメージする。
これに関しては、様々な作品を書いて来たので想像は容易い。
空間が歪み真っ黒い穴が開く。その中は宇宙空間の様に広く何でも入る事を想像し、手をかざし魔法名を唱える。
「──#収納__インベントリ__#」
すると、目の前の空間が歪み想像したように黒い穴が現れた。
「……出来たわ」
父さん達は何も言わない。無言になっていた。
「適当にこの枝を入れてっと」
閉じるように念じると、収納が消えた。
取り出したい物、先程入れた枝を想像して発動する。
空間に手を入れて取り出すと、先程の枝を取り出せた。
「うん。大丈夫そうだ」
「流石俺の息子。チートだな」
「チートだわ」
「チートね」
「いやいや! みんなチートだろ! 俺が魔法チートなら親父は防御チート。母さんは剣のチート。舞はオールラウンダーというチートじゃないか!」
「でもねぇ、あなた?」
「うんうん」
「お兄ちゃんチート」
「……もういいや。早くいこ」
俺達一条家は検問に向かうのだった。
検問所に付く。
「身分証の提示をお願いします」
俺達は申し訳なさそうな、表情を作り代表で父さんが口を開く。
「それが……」
「どうした? 無いのか?」
「ここに来る途中、休憩をしていたら盗賊に襲われてしまいまして。命からがら逃げてきたのでこの様に手持ちが無いのです」
兵士は俺達の格好と手持ちが無いのを確認した。
「盗賊は何処に?」
「急いできさ逃げてきたもので分からないのです。街道沿いの道に数人で潜んでいたようで」
「そうか。無事で何よりだ。いいだろう。ようこそクーヘンの街へ。身分証なら冒険者カードでも大丈夫だ。発行しに行ってきな」
「ありがとうございます!」
俺達も顔を笑顔にして礼を言って、俺達は街の中に入るのだった。
街に入ると王都程ではないにしろ、そこそこの賑わいを見せていた。
まずは宿より先に冒険者ギルドに向かう事にした。
場所が分からないので街の人に聞きながら向かう。
「ここがそうなのか?」
俺はそう呟いた。
看板には「冒険者ギルド」と書いてある。
間違いでは無いだろう。
「伊織入るぞ」
「まって!」
「どうした?」
入ろうとした父さんを止めた。
母さんと舞も頭に「?」を浮かべている。
「ここは異世界だ」
「そうだな」
「ならテンプレがある筈だ」
「「「!?」」」
テンプレと言う言葉に反応した面々。
「きっと多分、いや絶対絡まれる」
「よ、よく言いきれるな」
「そりゃあ……異世界だから」
「「「凄い納得した」」」
分かって貰えたようだ。
「向こうから手を出して来ない限り、こちらからは手を出さない。それで行こう」
「ああ。一条家に手を出したら痛い目を見せてやらないと」
「そうねあなた。私達はチート家族」
「そうよ。チートな家族に喧嘩を売ったらボコボコにしてやるわ!」
「「「「一条家を舐めるなよ!」」」」
こうして俺達は冒険者ギルドへと入って行くのだった。