4話:一条家、初めての魔物戦
王都で食料や必要な物を買っていたのだが、胡椒等のスパイスが思った以上に高価だった。
逆によくあるファンタジー設定で塩が高いと言うが、魔法の技術で塩は安価で手に入った。
砂糖もあったのだが、地球とは違い真っ白では無く、少し茶色がかったものであった。
恐らく作る際の汚れだろう。
そんなこんなで必要な物を買い揃えた俺達一条家は、王都を後にした。
「本当にファンタジーな世界ね~」
「創作だけだと思ってたよ」
母さんの言葉に舞が答えた。
本当にその通りだと思う。
「まさかなぁ~、父さんもビックリだ」
「書いている俺からしても驚きだよ。でもそれよりも驚いたのは、中世ヨーロッパ以上に文化が進んでいるって事かな」
俺の言葉に三人は頷いていた。
塩や砂糖が希少と思ったら普通に売られていたし。
通貨に関してはまだ貨幣だった。
買い物をして貨幣一枚での価値が大体わかった。
円換算でいくと、一番下の銅貨が百円。次に銀貨が千円。大銀貨が一万円。金貨が十万円。次に大金貨が100万円だった。
それと、単位はルピだ。
物価の値段からして、給料に関してはそれ程高くないように感じた。
「暦も時間も地球と変わりなかったわね」
母さんの言葉通り、買い物ついでに一年は何ヶ月かと時間を尋ねるたが、地球と変わりなかったのだ。
魔導時計と呼んでおり、みんなはそれを腕に付けていた。なので俺達四人も、それぞれ時計を買って身に付けている。
「それにしても次の街まで野営しないといけないとはな」
「野営か……」
父さんが野営と言い、俺は思うところがあった。
「どうしたの?」
舞が聞いてくる。
「多分というか、絶対に魔物がいるだろ?」
「あっ……」
顔を強ばらせた。
魔物ということは、襲われれば戦わないとなのだ。
やはり文化が進んでいても死が軽い世界だ。
慎重に行かなければ死ぬかもしれない。
「……だが」
「「「「一条家に不可能はない!」」」」
そう。一条家が揃えば不可能はないのだ。
誰かが出来ない事は誰かが出来る。それが一条家なのだ。
「本だって頂いたんだ。今日の夜からでも見るとするか。こっちの世界の常識を学ばないとな」
父さんの言葉に俺達は頷いた。
常識が無ければ暮らせないだろう。
俺達はまだ覚悟が半端だ。
思った事を三人に聞く。
「……盗賊が出たら?」
俺の発言に歩いている歩を止め、シーンとなる。
俺達はまだ殺す覚悟なんて出来てはいない。
「……それは、覚悟を決めるしかない」
「そうよ。それが異世界よ」
「その時はその時よ」
「そう、だよな」
父さんに母さん、舞の言葉にそう返した。
「そうだ。戦い方も話し合う?」
舞の発言に、俺達は戦いの方法に付いて話し合う事にした。
「そうだな。装備や服も良い奴だからな」
父さんの言葉通り、装備だって職業にあった物を、王都を出る前に身につけている。服も目立つので着替えていた。
それから戦い方やフォーメーションを話し、暫く歩いていると森側から声が聞こえた。
「何か聞こえなかった?」
「聞こえたのか?」
「私も聞こえた」
「私もよ。不快な鳴き声? みたいのが」
父さんは聞こえておらず、舞と母さんは聞こえていたようだ。
「親父……もうそんな歳なのか?」
「ち、違うぞ!」
「あなた……流石にそこまでだったとは……」
「大丈夫だよお父さん」
三者三様に言われ、父さんはプルプルと震え、
「まだまだ現役じゃぁあ!」
大声で叫んだ。
そのせいなのか、茂みから現れた。
「……親父の同族?」
「伊織ここでボケるか!? どう見ても魔物だろ! どこをどう見てそうなった!? 舞も香澄も何か言ってくれよ!」
「だって……お父さん」
「そうよあなた……」
「私に見方はいないのかぁぁあ!」
どんな状況でもマイペース。それが俺達一条家なのだ。
それはそうと。
「で、このゴブリンはどうする?」
そう。現れたのは四匹のゴブリンであった。
俺の言葉に父さん、舞、母さんが口を開いた。
「倒すしかないだろ」
「そうね」
「ええ」
それぞれが得物を抜いて構える。
「丁度四匹だ。一人一匹やる。それでいくか?」
父さんの言葉に俺達は頷いた。
「開幕は俺だな」
そう言って俺は魔法を唱える。
「──ファイヤーボール!」
すると、火の玉が俺の前に現れ、ゴブリンへと向かって放たれた。
「グギャァァアッ!?」
それは一体のゴブリンに当たり、木で出来た武器を落とした。
ゴブリンは俺を見た。
「今だ!」
父さんがそう言うと、俺達は同時に駆け出した。
「オラァァァア!」
父さんは棍棒で殴りかかり、ゴブリンの腕を叩き武器を落とさせた。
そこからさらに頭へと一撃を食わへて倒す。
「ハッ!」
母さんは一瞬でゴブリンに近寄り、刀の一突きでゴブリンの心臓を貫いた。
「聖剣の藻屑にしてやるわ!」
舞は宝物庫から頂いた聖剣で、ゴブリンの武器を持つ腕を斬り、次に心臓を貫いた。
「せいっ!」
俺は魔法を放って弱っていたゴブリンに、刀で喉を一突きし倒した。
近接のスキルも欲しいので俺は刀を使って倒した。
「……倒せた」
「そうだな」
「魔物には抵抗が無かったけど……」
「……そうね。これが人だったら無理だわ」
俺、父さん、舞、母さんの順でそう言った。
初めての魔物との戦闘だったのだ。
ゴブリン相手でも緊張はした。
「まあ、行くか」
「親父待って」
「どうした伊織?」
「魔物って剥ぎ取れば売れるんじゃ?」
「お兄ちゃんゴブリンってどこが売れるの?」
舞が俺に尋ねるが、俺だって分からない。
「……耳とか?」
「母さん、流石にそこまでテンプレな訳ある?」
「ファンタジーよ?」
「……」
妙に納得してしまった。
俺はふと思いバックから本を取り出す。
「本なんて取り出してどうした?」
「親父。多分書いてあるはずだ」
調べると、
「あったあった! って……母さんの言う通りだった」
「ほらね。早くしなさい」
「頑張ってねお兄ちゃん♪」
「うっ、俺か? 親父もやってくれよ」
「わ、わかった……」
冒険者に役立つ本ってのがあって良かった良かった。
「一体につき耳一つみたいだ」
「分かった」
俺と父さんで回収し、死体を燃やす。
こうして日が暮れるまで歩くのだった。