3話:交渉という名の強制です
一条家はガクガクと震え玉座に座る国王へと詰め寄る。国王に逃げ場は無い。
「さ、先の発言は聞かなかったことにする! 今回の件も目を瞑ろう! その代わりワシを見逃しては──」
「「「「無理ッ」」」」
そう言って伊織は国王の足の間に刀を突き刺す。
「ヒィィィっ!?」
そこに国王の顔スレスレに右側と左側で剣が突き刺さる。舞と母さんである。少し掠ったのか、国王の頬から血が垂れる。
「ち、血がぁぁぁあっ!!」
「うるせぇ喚くな!」
父さんが棍棒を振るきい国王の頭スレスレを通る。
激しい音が響き国王は恐る恐る見ると、
身に付けていた王冠と座っていた玉座の、頭から上の玉座が見事に粉砕していた。
「ヒ、ヒィィィィィィッ!?」
国王の股間から液体が漏れ出す。
俺は国王を見下しながら、要求を口にする。
「みっともねーな。俺達がお前に要求するのは不干渉、それに王の交代。他にも慰謝料として金の請求。これに関しては国庫の十分の三を頂く」
「そ、そんなには無理だ!」
「あ゛? 文句があるの?」
「ヒッヒィィィッ! な、無いです!」
ブンブンと勢いよく首を縦に振る国王。
「そうか。なら今すぐに金を用意しろ。アイテムバックも二つ用意する事だ」
「そ、それは余りにも──ヒィッ!?」
国王は恐る恐る視線を、飛んできて刺さった物を見た。
それは母さんが飛ばしたナイフであった。
ツーッと国王の頬から血が流れた。
「何か言ったかしら?」
「い、いえ、何も! は、早く安全してやれ!」
「は、はい!」
近くにいた者に指示を出した国王。
「そ、その者に着いて行くのだ!」
父さんと視線が合い頷き、親父が口を開いた。
「お前が来るんだよ! それにしっかりと契約書を書け!」
怒声にビビったのか、国王は急いで紙とペンを用意させた。
「な、なんと書けばいいのだ!」
父さんが目線で「お前が言え」と言うので口を開く。
「内容はこうだ。1、俺たちに干渉はしない。2、国庫の十分の三を譲渡する。3、宝庫、書庫の物を欲しいやつだけ頂く。以上だ。文句あるか?」
「そ、それは余りにも横暴──」
「ないわよね?」
「は、はい……」
舞の剣が光国王は頷いた。
多分断ったら我が妹も何かをしただろう。
怖い怖い。
国王は言われた事を書く。
「か、書いたぞ」
「見せろ」
父さんが国王から紙をひったくる。
目を通し俺に渡す。
隅々まで、小細工がされていないかや、王印と指の判まで押されているのも確認する。
確認が終わり母さんと舞も確認が済むと、俺は紙を受け取り徐に唱え出す。
「よし。──汝、この契約に従う事を誓うか?」
「ち、誓う」
瞬間、紙が輝く。
「これで、契約成立だ。国庫と宝物庫に行くか」
俺達は紙を丸め懐にしまう。
そして、国王を引き摺りながら宝物庫へと移動した。
アイテムバックを貰い、そこから必要な装備やアイテム等をバックにしまっていく。
「ま、待つのだ! それだけは!」
「……」
無言でしまわれていくアイテム達。
「よし次よ♪」
舞は良い装備が手に入ったからか、機嫌がとてもいい。それは舞だけではなかった。俺達全員だった。
だが、国王の顔は何処か生気が抜けているようにも感じた。
宝物庫にたどり着き、十分の三をマジックバックにしまった。
そして、王城の出口まで移動し、親父は引き摺っていた国王を投げ飛ばした。
「ありがとう糞国王。大事に使わせて貰うよ」
「ゴミ国王良い装備いっぱいありがとう!」
「今度は許しませんからね?」
「愚王、サラバだ」
俺、舞、母さん、父さんの順でそう言った。
そんな俺達に、国王は恨みの篭った視線を向けていた。
だが、気にする事なく長い階段を降りて行く。
去り際に俺達一条家は振り返り国王へとこう言い放った。
「「「「一条家を舐めるなよ!」」」」
それから、俺達一条家は色々な人から情報を集め、次の街に行くことにするのだった。