9話:一条家、初依頼を受ける
翌日。
宿を出た俺達一条家は、現在ギルドでカードを受け取ってから依頼を探していた。
「何にするんだ?」
「うーん。まあ、字は見えなくはないから良いが」
「そうね~、それが有難いわ」
「読めなかったら諦めてたわよ……」
恐らく異世界人って事で、読み書きが出来るようになっているのだろう。
俺達は、依頼表が張ってある掲示板を見ている。
「にしても……」
「お兄ちゃん。言いたいことはわかるよ」
「だな……」
「そうね……」
だって棒ハンターゲームの依頼に似ているのだから。
制限時間は書いてはいないが。
「依頼受けてギルド出たら例のBGMでも鳴るんじゃないか?」
「親父、それはそれでどうかと思うけど?」
「訴えられるわよ?」
「そうだよお父さん」
散々である。
それから暫く見ていて、良いのがあった。
「これなんてどうだ?」
「うん? ゴブリン五体の討伐か?」
「そうそう。来る途中でも倒せたし、慎重に行けば行けると思うんだ」
「私は良いと思うよ! せっかくの異世界なんだから!」
「そうね。それにしましょうか。お母さんも牙突が出来るようにしたいし」
「「「……」」」
俺は母さんが牙突をする姿を想像した。
いや、何かヤバそう。
しかも母さんの職業が剣聖だから洗練されていそうだ。
舞と父さんも想像したのだろう。「そ、そうだな」と表情が引き攣っていた。
それから、俺達はゴブリンの討伐依頼を受けてギルドを後にした。
向かうは街を出てスグの森だ。
受付嬢からは森の奥に進むに連れて、魔物が強くなると言われた。
森の奥には強くなるまでは行かない様に決めた。
「この辺りにいるんじゃない?」
舞が言うように、多分この近辺にいるだろう。
街道沿いでは分からないので森に入って行く。
森の中は思ったより木々の感覚が空いており、戦いやすいと俺は感じた。
「少しこの辺りを探してみよう。一応武器は持った方がいいだろう」
「そうだな」
そう言って俺達は各々の武器を抜いた。
そこに、丁度五体のゴブリンが現れた。
「戦闘準備!」
俺がそう声を上げ、みんなを見る。
「……母さん。なんで牙○のポーズを?」
そう。母さんが○突のポーズで構えていたのだ。
しかも物凄く様になっているのだが……
「何言ってるの。私は大剣豪になるのよ」
「それは違う! 某海賊の剣士見たいにならないで!」
母さんが三本の刀で無双する姿は見たくない。
俺達は、そんな母さんをスルーして武器を構えた。
「行くぞ!」
俺の声を合図に一番最初に動いたのは母さんだった。
例の言葉と共に鋭い一撃をゴブリンへと放った。
「──○突ッ!」
母さんの一撃はゴブリンの心臓を見事に貫いた。
漫画で見るよりも迫力が凄い。
四体のゴブリンが母さんへと襲いかかろうとした。
「大丈夫よ」
母さんが俺達にそう言った。
「──鬼○り!」
某海賊アニメの剣士さんの技を、襲って来たゴブリンへと放った母さん。
技を喰らったゴブリン達はもちろん絶命した。
その光景に無言になった俺達。
だって母さんの再現率が高過ぎたからだ。
ゴブリンを倒した母さんが振り返った。
「やったわ! 上手く出来たわ!」
「あ、うん。良かったね」
「い、伊織の言う通り良かったな」
「凄いねお母さん!」
俺と父さんは引いていたが、舞だけは興奮気味だった。
結局俺達は一体も倒していなので、もう少しゴブリンを探す事にした。
再び五体のゴブリンを見つけた。
戦うのは舞だった。
「──#約束された勝利の剣__エクスカリバー__#!」
光輝いた聖剣がゴブリンへと振り下ろされた。
そして五体のゴブリンは、一部を残して死ぬのだった。
次は父さんの番だった。
五体のゴブリンが現れた。
父さんが持つ刀に、風が纏わり付いていた。
その刀を振るった。
ゴブリンは父さんに襲いかかろうとし──五体のゴブリンは切断された。
「風○もどきだ。良いだろう?」
俺は父さんにブラックト○ガーを渡した覚えは無いのだが……
「親父、それをどこで?」
「良いだろう。俺だけの○刃だ」
「か、かっけー」
俺も欲しかった。いや、出来るな。
次に俺の番である。
同じく五体のゴブリンを遠くに見つけた。
何となく杖を出して唱える。
「我が深紅の流出を似て、白き世界を覆さん! エクスプロージョン!」
それなりの大きさの魔法陣が現れ──大爆発した。
ゴブリンの死体、残っているだろうか?
跡地を見に行くと、クレーターをの残して何も残らなかった。
日が暮れ始めて、街に戻る途中でゴブリンを見つけて狩った。
ギルドに行くと、予想以上のゴブリンの耳の量に驚いていたが、難なく買い取りが終わり宿に戻るのだった。