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中二病国家の後継者 《漆黒の魔王》の教育結果が俺です。この国にはバカだけど最強の三人がいる!  作者: shiwasu
Ep1.中二病国家の《闇夜の創造主=ダークナイト・クリエイター》
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05.異世界に帰省する方法

「仁ちゃん大丈夫……?」


 両肘をつき頭を抱える俺に、愛梨さんが優しく話しかけてくる。


「これ、そのままユー・レティシアの話ですよね」


「え? うん。でも、あたしは確信してたし。さすがに紺ちゃんが本当に灰になったのはびっくりしちゃったなぁ。本当に突然だったし……」

(本当に灰になった?)


 それを聞いて思い直す。

 イタズラ好きの親父であったが、不謹慎すぎるネタと愛梨さんを困らせるようなことは絶対にしない。――第一、今朝電話で親父の訃報を伝えてきた愛梨さんはかなり動揺していて『紺ちゃん死んじゃったからお願い来て!』だった。

 今までの適当な振る舞いは非現実的な出来事を前に、気丈に振る舞っていただけなのかもしれない。


「愛梨さん。灰になったってどういう事なんですか」


 ……手紙を鵜のみにするは嫌だが、死んで既に灰になっているのなら遺体が無いのにも一応筋は通る。疑っていたらきりがない。愛梨さんは目線を斜め上に向け、状況思い出しているようだった。


「――朝起きたら、ベッドが灰まみれになってた。紺ちゃんが隣に居なくて、びっくりしちゃって居間にいったら、遺影とか花があって……」


「こえーよ! それは俺でも絶対に驚く」


「そしたら、紺ちゃんが『俺死んだら灰になるから、その灰を集めてくれ』って言ってたのを思い出してね……。慌てて灰を集めて、用意してあった骨壺にいれて仁ちゃんを呼んだの」


「それだけ聞くと、親父は死ぬことが分かってたみたいだな」


 〝高級マンションで起きた人気ファンタジー作家失踪事件〟。

 銘打つならこんな感じか。親父の言うファンタジーを認めてやってもいいが、ここは残念ながら現実世界の日本だ。

 魔法が存在しないというか、確認されていない。あるいは昔、魔法と呼んだものは科学だとか。そういった感じの。――灰が偽物だとしたら、親父はどこに行ったんだろう。


「――やっぱり、紺ちゃん灰になっちゃったのかな?」

「とりあえず、そういう方向で行きましょう」

「仁ちゃん、お父さん死んじゃったのにあっさりしてるよね?」

「……というか、ファンタジーを肯定しないと親父が死んだことにならないので、なんか実感が湧かないというか……ここ現実世界だし」


 親父との思い出はハチャメチャなものばかりだが、それでも楽しかったし、父親と呼べる人物であることに変わりはなかった。だから、そんな親父があっさり死んじまうなんて予想外にも程がある。

 どうせやるなら病に臥せって余命わずか――ってところで『お前に、伝えねばならぬことがある……お前には逆らえぬ運命が(以下略)』とか、やってくれてもよかったじゃないか?

 どっちかというと、そっちの方がまだ嬉しかったぞ。失踪ってなんだよ。反応に困る。


「ねぇ、仁ちゃんはユー・レティシアに帰るつもりなのかな?」

「帰るといわれても……ちなみに何て、聞かされているんですか?」


 文中には、俺がそのユー・レティシアに帰省(?)する方法があり、それは事前に愛梨さんに伝えているらしかった。多分著書の中で記されている沌元素属性の時間転移魔法だとか……そういった類だと思う。


「んーとね、書斎の床に描いてある魔法陣の上に仁ちゃんを寝かせて、紺ちゃんの灰をかける!」

「どこの宗教団体だよ」

「ユレ教?」

「やっぱり作品内の話じゃねぇか! ……けど、まぁやってみます?」

「え?」

「ユー・レティシアに帰る方法です。どうせ何も起こらないだろうし、――やったのを見届けて親父がひょっこり出てくるかも」


 試したって、どうせ何も起こらない――それが俺の見解だった。

 まぁ、幼い頃からファンタジー自体は好きだった。

 でも、ユー・レティシアという世界を教えてくれた親父通りに魔法を試してみても魔法なんて使えなかったし、友達に話せば話したで変人扱いされてしまう。だから〝信じている〟と口にしなくなった。

 ――思えばその頃からだろうか。親父の作品の舞台がユー・レティシアに絞られていったのは。


「うーん……。無理してやらなくてもいいんだよ?」


 どこか不安げな愛梨さんを見て、本当に何か起きるかもしれない――なんて空想したがすぐに否定する。


「どうせ、できっこないですって」


 明るく飛ばす俺を見て、愛梨さんはふふっと笑みをこぼした。


「わかった。じゃあ、持ってくように言われてた本とか準備するね!」

「お願いします。親父の余興かなんかかもしれませんけど」


「ふふ、そうだね。余興なのかもね。仁ちゃんは書斎に居てね。――じゃあ、行ってみようねユー・レティシアに!」


 どこか含みのある言葉を俺に告げて、愛梨さんは寝室へ向かった。

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