ナナミの備忘録5
「こんにちは! サナエです! ナナミの備忘録の時間だよ! 今日はナナみんが欠席なので特別ゲストをお呼びしました!」
「星愛女学院高等部1年D組、アズキでーす!」
「……えっ? 誰?」
「もう、サナエちゃんもひどいなぁ! 『栗山あずきの独り言』シリーズでおなじみのアズキですよ! 『ナナミ』第70話でも友情出演してますし! っていうか、あたしの話にもサナエちゃん出てるじゃん!」
「ああ、美術部『ジーニアスボム』所属の1年生の!」
「あの、カンペ見ながらいかにも『知ってます!』って顔して言わないでください! そもそも寮一緒だよね!? しかも普通に隣人だよね!? 知らないわけないよね!?」
「今回はそんなアズにゃんと一緒にお送りします!」
「だから、そのあだ名は某有名キャラと被るからやめた方が……」
「前回の予告では『スジ』について語ろう! ってことになってるんだけど」
「そういうのはサナエちゃんの方が詳しいんじゃないかな? あたし麻雀についてそんなに詳しくないし」
「『イー・スー・チー』、『リャン・ウー・パー』、『サン・ロク・キュー』ってやつだよね?」
「フリテンを利用してリャンメン待ちを仮定とした時の安全牌ですね。二、三のリャンメン待ちは一、四で、五、六のリャンメン待ちは四、七になるから、これをひとまとめにして一、四、七、同じように二、五、八、そして三、六、九というのを語呂合わせみたいにしたものですね」
「お、おおっ!」
「それがいわゆる『表スジ』。他にも麻雀を長くやっていたらよく見かける形として『裏スジ』と『またぎスジ』があるみたいです」
「裏スジねぇ。よく聞くけど何なの?」
「例えば三萬、五萬と手牌にあった時、六萬をツモってきたら三萬は捨てますよね?」
「うん、五、六萬で四、七萬待ちになるもん」
「つまり、三萬を捨てた人は四、七萬待ちの可能性があるってことです。この時、三萬の裏スジは四、七萬っていう感じです」
「ほほう」
「裏スジをまとめるとこんな感じですね」
裏スジ一覧
一:二、五
二:三、六
三:四、七
四:五、八
五:一、四、六、九
六:二、五
七:三、六
八:四、七
九:五、八
「んー、急に難しくなってきた」
「要するに、捨て牌の隣の牌を含む表スジが裏スジだから気を付けろ、ってことです」
「なるほど、表スジは安全だけど、裏スジは危険ってことね」
「そして、『またぎスジ』も似たような感じです。三萬のトイツがある時、二萬をツモったら三萬1枚を捨てれば一、四萬のリャンメンで待てます。三萬の捨て牌に対して一、四萬がまたぎスジって関係ですね」
またぎスジ一覧
二:一、四
三:一、四、二、五
四:二、五、三、六
五:三、六、四、七
六:四、七、五、八
七:五、八、六、九
八:六、九
「もう訳が分からなくなってきたよ!」
「これも裏スジと一緒で、隣の牌を含む表スジに注意ってことになります」
「でもでも、こんなのいちいち考えていたら危険牌ばっかになっちゃうじゃん!」
「だからあくまで目安なんです。リーチをかけた他家が六、八筒を捨てていたのなら、裏スジでもまたぎスジでもある四、七筒は危ないな、みたいな感じです」
「おお、なるほど!」
「ただちょっとコツが必要です。先の例だと、五、六、六、八筒を持っていることを想定しますから八筒→六筒の順番に切られている時が一番危ないことになります。あとは手出しかツモ切りかとか、捨てられているのは序盤か中盤か、はたまたリーチ直後かといったことからも推測の材料になりますね」
「ふえーん、大変だよー!」
「覚えておいた方がいいのは『間四間』といって三、八索といったように間が四つ分離れている時の四、七索などです。これは三、五、六、八索から落としていった形で、二つの裏スジが重なった非常に危険な場合です。逆にまたぎスジが二つ重なった四、五索といった捨て牌は四、四、五、五索といった形から落とすわけですから少し考えにくいですね。でもこれも『ダブルメンツ落とし』という名前がついているそうで、高度な迷彩になるので、まあそんな戦略もあるんだな、ぐらいに考えればいいと思います」
「ふーん、いろいろあるんだね」
「一番注意したいことは、あくまで他家が『リャンメン待ち』していることが前提です。なので防御の参考程度にとどめておくのがいいと思います」
「それ、元も子もないじゃん!」
「そうでもないですよ? じゃあ練習問題です。あたしの上がり牌を予測してみてください」
ホー アズキ
緑發 白板 九萬 西風 一索 七索
一筒 二筒 二萬 四萬 七筒リーチ
「全然分かんないよ!」
「ほんとは場況や点棒状況、手出しかツモ切りかといった情報も重要なので一概には言えませんが、模範解答です。役牌の出が客風より早いこと、一、二筒のペンチャンを嫌っているところから、ピンフ狙い、つまりはリャンメン待ちの可能性があります。リーチ牌が七筒なので、間四間の三、六筒には十分気をつけたいです。同じく間四間の五、八萬、裏スジとまたぎスジが重なる三、六萬も危険といえます。みたいなことを考えているとタンヤオ、三、四、五もしくは四、五、六のサンショクあたりも見えてきて高そうな手に見えてきますね。逆に字牌と現物を除いたアンパイは表スジの一萬、両スジの四索、四筒あたりでしょうか。三、四、五のサンショクを警戒するなら三、五のカンチャン待ちの可能性が低そうな四筒の方が安全度は高いと言えます。アンパイ候補が字牌、現物含めて十九種類なので残り六順ぐらいならベタ下りできそうです」
「おお、アズにゃん、プロみたい!」
「まあ台本読んでるだけなんですけどね」
「あたしも上手に防御できるように勉強しなきゃ!」
「次回は――リーチの掛け方みたいですね! 麻雀の基本、リーチを上手に使って勝とう! っていうのがコンセプトみたいです」
「わー、すごく楽しみ!」
「もう次回予告みたいですね。さて、次回の『ナナミ -The Gifted Challenger-』は?」
「ナナみん、大丈夫かなぁ?」
「ナナミちゃんが初めて体験した敗北。それを乗り越えるカギはあの人が握っている!?」
「『NANA☆HOSHI』も活動停止になって部室も使用禁止になっちゃったし、どうなるのかなぁ?」
「そこはあたしたち『ジーニアスボム』に任せて! またまた友情出演しますよ!」
「うん、頼りにしてるよっ!」
「次回、『第6半荘 しあわせのあおいとりをさがして』をお楽しみに!」
「アズにゃん、今日はありがとう!」
「いえいえ、またいつでも呼んでね!」
「以上、サナエと」
「アズキでした~! またね~!」
ここまで読み進めていただき、ありがとうございます!
以上で、第5半荘の終わりです。
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引き続き第6半荘も愉しんでいただければ幸いです。
アズキちゃんとサナエちゃんのやり取りは、
拙作『栗山あずきの独り言~うちの女子寮ではコミュ力が試される件~』で出てきますので、
興味のある方はぜひそちらも読んでみてください!
https://ncode.syosetu.com/n7576go/




