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ナナミ -The Gifted Challenger- ~天才少女の麻雀挑戦記~  作者: 蝶捕銀糸
第4半荘 おちゃ、わがし、さんま
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第 53話 やきゅうとまーじゃん

 なぜわたしは走っているのだろう。

 しかも、ブルマ姿で。

「はーい! イー、リャン、サン、スー!」

「ウー、ロー、チー、パー」

 ナギホ産の先導する掛け声に導かれ、ヨミちゃん、ヒメちゃん、サナちゃんが続いていく。かくいうわたしはだいぶ離れたところでぜぇぜぇ言いながら追いかけていた。

 『メタモる!』から『NANA☆HOSHI』のユニフォームーーという名のブルマが届いてからというもの、部活の初めにはランニングを始めるようになった。しかもそのコースは運動部が使っているものと同じである。

 正直言って、運動は苦手だ。アップだけでバテてしまう。

 この後麻雀を打つと思うだけでもしんどいのである。

「いち、にぃ、さん、しぃ」

「ごぉ、ろく、しち、はち」

 わたしのとなりを野球部の人たちが通り過ぎていく。

 なんか悔しいが、身体が追い付かない。

 早まる呼吸に頭が真っ白になってきた。

 ひと足早くゴールに到着していたナギホさんたちのもとにやっとの思いでたどり着いた。1年生3人ははぁはぁと呼吸を整えているが、ナギホさんは全く意気が上がっておらず、平然とした顔をしていた。

「はーい、みんなお疲れ様!」ナギホさんがいつもの調子でパンパンと手をたたく。「今日は『星愛トレジャーズ』の皆さんと合流してアップしたいと思います」

 次の瞬間、ナギホさんはとんでもないことを言っていた。

 『星愛トレジャーズ』といえば、さっきわたしたちを追い抜いて行った野球部である。何の因果があって合同練習しなければならないのだろうか。

「はーい、『トレジャーズ』部長のマイカです! 『NANA☆HOSHI』の皆さん、よろしくお願いします!」

 すらりと高い慎重に、ヨミちゃんよりも長いポニテを揺らして、マイカさんが帽子のつばをつかむ。その後「よろしくお願いします!」と野球部のメンバーが一礼する。その中にはルームメイトの2年生、セリアさんの姿もあった。

 なんか、マイカさんは性格的にナギホ産と似ているなぁ、と率直に感じた。逆に、部長という役職を務める以上、そういう性格になるのだとさえ思ってしまう。


 その後はサナちゃんとペアを組んで、野球部の準備運動とストレッチに混ざった。ヨミちゃんヒメちゃんペアはともかく、ナギホさんとマイカさんがペアを組んでいるあたり、仲がいいんだなと察した。

「いーち、にーぃ、さーん、しーぃ」

 野球部の掛け声に合わせてストレッチをする。

「いたたたた! ちょっ、サナちゃん!」

「ナナみん、体固いね」

 サナちゃんは容赦なくぐいぐいと背中を押してくる。小さいころからほとんど運動してこなかったわたしの身体は悲鳴を上げていた。

  逆にサナちゃんの身体は驚くほど柔らかかった。同じように背中を押しても苦悶の表情1つみせない。

「サナちゃん、柔らかいね」

「ちっちゃいころ、バレエやってたんだ」

「へぇ、そうなんだ」

 サナちゃんの意外な過去に感心してしまう。

 ストレッチが終わって、いよいよ部室に戻るのかな、と思ったところで、マイカさんが提案する。

「それじゃあ、『NANA☆HOSHI』の皆さんにはせっかくだからフリーバッティングをやってもらおうかしら」

「ええっ!? いいのっ!?」

 ナギホ産が珍しいリアクションを見せた。部室での振る舞いとは違い、女子高生みたいだ。――いや、女子高生なんだけど。

「いいよいいよ! じゃあ先発メンバーは守備について! 控えのみんなは自主トレね! ダイヤちゃん、80キロぐらいのど真ん中ストレートね」

 マイカさんが元気のいい叫び声で指示を出す。

 そして、わたしたちにはバットが配られた。――わたしはこんなもの振るのは初めてだ。

「あのピッチャー、1年生?」

 ヘルメットをかぶり、打席に入ったナギホさんが、スピードガンをもって審判位置に立つマイカさんに尋ねる。

「そうよ。なかなかセンスのある子でね。同じ1年のリチアと相性ばっちりなのよ。いいバッテリーね」

「恐縮です」

 マスクをかぶってしゃがみ込むリチアちゃんが少し照れながらボソッとつぶやいた。

「プレイボール!」

 マイカさんの掛け声を合図に、ダイヤちゃんが投球フォームに入った。

 カーン!

 金属バットの子気味よい音が辺りに響き渡る。

 ナギホさんはきれいなバッティングホームで打ち返す。


打撃結果 ナギホ

6死 4安打


「ナギホすごい! 4割打者じゃない!」

「マイカ、お世辞はやめてよ」

 うふふと笑ったナギホ産がバッターボックスを後にする。

 その後も1人10級のペースで撃たせてもらった。打ち終わった後にはマイカさんがほめてくれた。


打撃結果 キヨミ

3振 1ファール 4死 2安打


「キヨミちゃん、なかなかセンスがいいじゃない」

「どうもッス」

 ヨミちゃんはすがすがしい笑顔で一礼した。


打撃結果 ヒメリ

1振 2ファール 6死 1安打


「ヒメリちゃん、フォームがきれいね。きちんとミートできてるし」

「ありがとうございます」

 ヒメちゃんは礼儀正しく一礼した。


打撃結果 サナエ

5振 4死 1安打


「サナエちゃん、もうちょっと脇を占めて。大振りしすぎよ」

「ありがとうございまーす!」

 サナちゃんは屈託のない瞳で一礼した。


打撃結果 ナナミ

8振 2死


 わたしはぐうの音も出なかった。2つのアウトもピッチャーごろとキャッチャーゴロだった。

「ナナミちゃんは運動苦手みたいね。もうちょっとがんばろうね!」

「あ、ありがとう、ございます」

 わたしはぜぇぜぇと肩で呼吸しながら一礼した。

 ていうか、なんでわたしがんばるのだろうか。

 その後は野球部とは別行動になった。そのまま守備練習を始める中、わたしたちは野球部のロッカーを借りて制服に着替えた。――さすがにブルマで麻雀はしないらしい。

「ねぇ見て見て! この麻雀牌おもしろいよ!」

 サナちゃんがロッカールームで卓と麻雀牌を見つけてテンションがだだ上がる。

「すごいッスね! 萬子が背番号、筒子がボール、索子がバットッス!」

「字牌も特徴的ね。本、一、二、三が風牌、B、S、Oが三元牌ね」

 なるほど、野球をイメージしたデザインの麻雀牌だ。麻雀宅もホームベースと各塁が描かれており、まるで野球場だ。

「それ、あたしたちが作ったのよ」

「ええーっ!?」

 ナギホさんが、スカーフを巻きながらさらりとすごいことを言った。一同が声をそろえて驚く。

「いつだったかしらね?」ナギホさんが遠い目をする。「確か一昨年の星愛祭の出し物で作ったんだったかしら? それを縁あって野球部に寄贈したのよ」

 果たしてあの部室のどこに麻雀牌を新しく作る技術があるのか、まったくもって見当もつかなかった。

 『NANA☆HOSHI』の思わぬ過去に話に花を咲かせていたわたしたちをナギホさんのぱんぱんと手を叩く音が引き留める。

「はいはい、しゃべってないで! この後部室に戻って麻雀よ!」

「はーい!」

 促されるまま、わたしたちは制服に着替えて今日の部活動に写った。




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