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ナナミ -The Gifted Challenger- ~天才少女の麻雀挑戦記~  作者: 蝶捕銀糸
第3半荘 びひんのたのみかた
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第48話 きねんさつえい

「それでね~、すごくかわいかったんだよ~!」

「そりゃよかったッスね~! あたしも着てみたかったッス!」

 サナちゃんとヨミちゃんが楽しそうに話す後ろを、わたしとヒメちゃんが並んで歩いていた。

 昼休み。今日は初めて『NANA☆HOSHI』のメンバーでお昼ご飯を食べようということになった。もっとも、1年生だけの集まりなので、ナギホさんは不参加であるが。

 天気も良好で、時計塔前の野原で食べようということになった。購買で適当にお昼ご飯を買った後、いい場所はないかとみんなで歩いていた。

 春先とはいえ、少しずつ夏色を見せつつある大洋は、直射日光だと少し汗ばむ。運よく木陰のベンチを見つけて、4人で腰を掛けた。

「それで、あなたも着たの?」

「えっ、うん……」

 なぜか羨望に似た色を呈するヒメちゃんの視線を感じつつ、わたしはこくりとうなずいた。――みんな、コスプレは好きなのだろうか?

「あら、みんな奇遇ね」

 お昼ご飯のサンドイッチをほおばっていると、ナギホさんとマリコさんが通りかかった。

「先日はどうも」

 マリコさんはおしゃれな日よけのこうもり傘を刺していた。服装はもちろん3年生の制服なのだが、ワンポイントのアクセサリーを付けて居たりとファッションセンスを感じさせる。

 さすが、裁縫部の部長さんだな、と素直に感心した。

「あの、先日はお世話になりました」

「」いいえ、ナナミちゃんも強かったわね」

「恐縮です」

 わたしはなんだか肩身の狭い気持ちになった。別に悪いことはしていないけれど。

「そうそう、今日『NANA☆HOSHI』で記念撮影するわよ!」

 ナギホさんが楽しそうな声で今日のスケジュールを教えてくれた。

「記念撮影!」

 サナちゃんとヨミちゃんが同時に立ち上がる。何というか、2人ともオーバーリアクションである。

「あたし、メイド服がいい!」

 サナちゃんが突然意味不明なことを言った。

「はいはい、あたしも着たいッス!」

 ヨミちゃんも何だか変なところで同調している。ヒメちゃんも言葉にはしないが、何かを期待するような笑みを見せた。

「あらあら、ですってよ、ナギホ」

「あのね、あのメイド服は『ソロモンの管理人』の制服なのよ? なんであたしたちが着るのよ」

 もっともな正論である。わたしはほっと胸をなでおろすが、他3人は何だか残念そうな顔をする。

「じゃあ、あたしたちのユニフォーム着させて!」

 サナちゃんは期待に満ちた瞳で先輩方を見つめる。正直、わたしはごめんだ。

「ごめんなさいね。まだ作ってる途中なのよ」

「なんだ~、残念」

 サナちゃんは目に見えてがっかりする。――そこまであれを着たいのだろうか? わたしには理解できない。

「それじゃあ、放課後になったら部室に集合ね!」

 そう言い残し、ナギホさんとマリコさんは行ってしまった。

 正直、九に記念撮影をすると言われても困る。身だしなみは普段からきちんとしているとはいえ、ここぞという時はやっぱり力を入れる者である。

 とにかくわたしは、その後のみんなと一緒の昼食も、午後の授業中も、髪形や制服のしわなんかが気になって仕方がなかった。もともと写真に写るのが苦手ということもあってか、サナちゃんにはとてもそわそわしているように見えたらしく、授業中何度も突っ込まれてしまった。

 そんなそわそわしっぱなしの授業も終わり、わたしとサナちゃんは言われた通り『NANA☆HOSHI』の部室へ向かった。すでに『NANA☆HOSHI』のメンバーは全員そろっていたが、その他にも『メタモる!』のマリコさん、キリネさん、ハルちゃんがいた。

「あっ! 『メタモる!』のみんなだよ、ナナみん!」

 サナちゃんは見ればわかることを口にした。

「こんにちは」

『メタモる!』の3人はわたしたちに気付くと頭を下げた。

「どうして『メタモる!』の皆さんがいるんですか?」

「ナギホのお願いだからよ」

 マリコさんがウインクして答えた。

 その後、部室棟の昇降口に移動して、撮影の準備が始まった。わたしたちはマリコさんに言われるまま1列に並ぶと、マリコさんが1人ずつ髪形や制服を整えてくれた。その手つきはプロのスタイリストさながらで、わたしの緊張感は一気に高まってしまった。

 その間、ハルちゃんはキリネさんから一眼レフの使い方を教わっていた。

 服全般は裁縫部のお仕事。だから、きちんとした記念撮影も裁縫部のお仕事、ということらしい。作った服飾の写真をアルバムで管理している辺り、カメラの使い方も人並み以上に技術がありそうだった。

「はーい、じゃあ撮ります!」

 ハルちゃんが慣れない様子でわたしたちに声をかけ、カメラを構える。そのぎこちなさに何だか応援したくなった。

 最初は落ち着いた写真を撮るらしく、みんな直立不動になって1枚、2枚撮影した。

「」じゃあ次、楽しそうな感じでお願いします!」

「いえ~い!」

「ちょっ、サナちゃんっ!?」

 ハルちゃんが言ったとたん、サナちゃんがわたしに飛びついてきた。相変わらずスキンシップ抜群である。

「みんな、こっち来るッス!」

 ノリのいいヨミちゃんがわたしとヒメちゃんと肩を組む。

「あらあら、相変わらず仲良しね」

「あはは、あたしも混ぜなさい!」

 マリコさんがほほ笑むのをよそに、ナギホさんまでわたしたちの塊に覆いかぶさってくる。

 そして、ここぞとばかりに写真の枚数は3枚、4枚と増えていった。

「えっと、撮影はもうおしまいです」

「ありがとうございました!」

「ナギホ、写真はセレストに上げておくわね」

「助かるわ、マリコ」

 上級生が何やら約束を交わしていた。

「ナギホさん、セレストって何ですか?」

 わたしの質問に、ナギホさんはタブレットPCを取り出しながら答えた。

「セレストは、星愛女学院専用のクラウドよ。過去の『NANA☆HOSHI』の写真も上がっているの。見る?」

「わぁ、見てみたい!」

 好奇心旺盛なサナちゃんがさっそく食いついてきた。

 他の1年生も見てみたいと騒ぎ始めたので、ナギホさんがタブレットPCをタップしながら見せる。

「これが去年の集合写真よ」

 わたしはその写真を一目見て、背中にゾクリと悪寒が走った。

 そこには、ナギホさんの他にもにも見知った顔が1人いたのだ。

 すらりと伸びた長身にくるぶしまで届きそうなまっすぐな赤黒い髪の毛。忘れもしない深紅の右目と刀痕。写真からでも伝わってくるとんでもないオーラ。

 ――女王ホムラ。

 わたしが麻雀で初めて戦った相手。そして、最も怖気と緊張感を感じた相手でもある。

「ナギホさん、この人って――」

 わたしはおそるおそる指をさした。

「ホムラよ。ナナミちゃんも知ってる彼女で間違いないわ」

「麻雀部員、だったんですね」

「そう、昔はね」

 そういったナギホさんの顔はどこか懐かしく、愁いを帯びた笑みを見せていた。

「今は、違うんですか?」

「ええ、そうよ」

 その言葉を最後に、ナギホさんは黙ってしまった。これ以上の詮索はどうにもはばかられた。

 ――女王ホムラ。彼女の過去に何があったのだろうか。

 その写真に浮かぶ不敵の笑みが、わたしの頭から離れずにいつまでも残っていた。


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