幕間 暗躍する者達
「一体どういうつもりだ?」
「なにが?」
場所は、学園都市の某所にある、東城太助率いる集団のアジト(の1つ)。
手製のタブレットで何かを見てる太助に、裕香の記事が載せられたD-Phoneを突き付け、鮫島剛が詰め寄った。
「センセイの事だから、何かしらの思惑はあるんだろうが……なんで朝霧の妹にあんな力をやったんだ?」
「僕が作った物が、あの子が手に入れるべき力だと思ったから授けた……理由はそれだけだけど?」
「それだけって……おいおい。朝霧の妹なら、間違いなく生徒会よりだろ」
「だから渡したんだよ。今生徒会に転覆してもらっても困るからね……奴らの本拠地を見つけ出し、レイダーとマリスの存在を葬り去るまでは」
誘拐した学生たちの技能、能力を奪いとることで精鋭の大量生産を可能にする“レイダー”と、同じく誘拐した学生の電子召喚獣のデータを無理やり反映させた“マリス”
そのレイダーとマリスをすべて破壊し、データ諸共に葬り去る事がこの事件における太助の目的。
「所で、何やってたんだ?」
「アニメ見てたんだけど」
「…………は?」
太助がタブレットで見てたのは、今学園都市の女子小学生の間で話題になってる魔法少女アニメ。
「……何があったんだ?」
「いやね、朝霧君の妹の友達--だと思うんだけど、杖型で女の子が好きそうなデザインにしたんなら、どうして変身機能を付けなかったんだってクレームが……」
「--それでこんな格好して……いや、させられて出てきたってところか」
魔法少女っぽい衣装を着て、マリスを駆逐する少女
--どこのアニメの話だと言うのが、剛の感想。
「しかし……どうして見た目というかデザインばかりが先行してる印象が強くて、機能性にどうにも違和感が見えるような」
「いや、技術者の視点で真面目にみるな!」
「待てよ……うん、できるかな。杖にしても衣服にしても、このデザインで機能を両立させる事は、僕なら十分可能……」
「だから聞けよ! なんか何気に今とんでもない発想が生まれた気がするんだが!!?」
「よし、早速作成を……って、どうかしたかい、剛」
「……さっきから呼んでたんだが」
東城太助は、(いろんな意味で)真面目な男である
「……先生」
「ん? ああ、ユキナじゃないか。どうしたんだい?」
「……どうして、ユキナじゃないの?」
「今作ってるからちょっと待っててくれるかな? ……どうもこの手の話には、ライバルも必要みたいだし」
「何気に染まってんぞおい!!?」
「冗談だよ。生徒会が僕達の暗躍を黙ってるわけがないから、ユキナには朝霧君の妹と対立して都市の関心が向くようにしてほしいんだ」
「--わかった。頑張る!」
ユキナがガッツポーズするのを見て、太助はタブレットを操作し始める。
「--実質囮っぽいんだが」
「生徒会には、レイダーを手に入れようと暗躍してる奴らもいるからね。そいつらが僕の目的に気付いてもらっても困るんだよ」




