第4話 新たなる継承の糸口
『混沌の学園都市に、救世の魔法少女降臨』
「……まったくもう」
「……すまん」
「……ごめんなさい」
裕香の出陣で、マリスの軍勢は退けられた。
その事を掴んだ学園都市メディア方面は、こぞって裕香の雄姿をスクープし、一躍明るいニュースとして広まった。
……猫耳衣装諸共に。
「こうなった以上、過ぎたことは仕方がない。総会に裕香ちゃんのこと、掛け合ってみるよ」
「ありがとうございます、宇宙さん」
「ただし、裕香ちゃんの協力は俺の管理下でと言う事で通すから、ある程度の制限と義務はかけさせてもらう事になるけど」
「わかりました」
「……大丈夫かよ?」
「……あの衣装さえなかったら、少しは穏便に進んだかもしれないが。エリアルとユウの力、裕香ちゃんの性格を前面に出して、納得させるしかない」
ただ、生徒会としては初等部の子供の、それもお遊戯会感覚丸出しの衣装での活躍を、よく思わないものが多かった。
特に総会長は、現在この記事を目の当たりにして頭痛薬が必要になる位に
「脇目振らず出ておいてなんだけど、やっぱり衣装はやめたほうが……」
「今更手遅れだよ。もう裕香ちゃんの活躍は学園都市の知る所になっちゃったから、そういう名目で出すしかない」
「うっ……」
「よーっし、新衣装の作成に取り掛からなきゃ!」
「うん、がんばろうね!」
2人が苦い顔をしてる横では、無邪気にやる気に燃える2人。
苦笑しながら裕香は、改めて宇宙に頭を下げた。
--ところ変わって。
「--待っていた」
「凪!」
「凪、さん?」
袖のないロングコート、フードをかぶって表情はわからないが、見える顔は美形の部類。
生徒会SP身辺警護部隊長、学園都市武闘派最強の一角を担う1人、御影凪。
「どうした?」
「まだ、助けに来てくれたこと、礼を言えてなかった……ありがとう」
凪が膝をつき、裕香に目線を合わせ柔らかにそう告げた。
「いえ、その……みなさんが無事で、よかったです」
『キー、キキ』
その背から、凪と同じデザインの、背に斉天大聖と描かれたロングコートを羽織り、金の輪を頭にはめた猿、孫悟空が顔を出す。
裕香を見るや否や、飛びついて
『キキッ』
「あっ、ちょっくっくすぐったいよお」
「……孫悟空が、私以外になつくとはな」
「……なあ凪、ちと話があるんだが、いいか?」
「構わないが……どうした?」
裕樹は凪を連れて、近くの部屋に入り凪に事情を説明。
裕香が太助から電子ツール“エリアル”を譲り受け、その機能で裕香は裕樹の能力を手に入れた事。
ただ、そのエリアルが魔法少女を連想させるデザインだったために、裕香の友人2人が裕香を魔法少女風に着せたものだと説明する。
「成程。あの力はそう言う事だったのか」
「そう……見せちまった以上凪には一応、話しといたほうがいいって思ってな」
「それだけ、なんですか?」
そこへふと、裕香の友人なっちゃんこと菜月が話に割り込んできた。
「それだけだけど、どうしたの?」
「いえ、てっきり御影凪さんの力もって」
「すまないが、それは無理な相談だ」
言いたいことを察したのか、凪が即答で拒否した。
「どうしてですか? ゆーちゃんは……」
「やめな。これは本来くれと言われてやって良いものじゃない、むしろ俺が軽率だった位だ」
「そこまでは言わん。状況的に仕方がなかった事はわかる……すまないが」
『キキーッ! キーッ!』
「……と言いたいところだが、孫悟空は力になりたいらしい。少しテストしてみるか」