第2話 エリアル☆裕香 初勝利!
「なっ……んだと?」
レイダー兵が、目を見開いていた。
自身のマリスの腕が、無残に斬りおとされ消滅していく様に。
「……今の」
その一方で、裕香は自分が何をやったのかがわかっていない様子で、茫然としていた。
ただ、先ほど太助から受け取った杖が剣の形となっていて、その剣でマリスの腕を斬りおとした事……それを理解することが精いっぱいという風に。
「ゆーちゃん」
「……すごい」
「--がんばって、ゆーちゃん!」
「そんな奴やっつけて!」
裕香の友人2人は呆然としつつも、裕香を応援し始めた。
「うまく“エリアル”は起動したか」
「東城」
「君ならもう、わかってるだろ? ……あの動き、太刀筋」
「ああっ……俺の動きだ。けど」
「そうだね。あの子の体とエリアルじゃ、君の動きを完璧に再現することなんて不可能だ。だけど……」
『ギャアアアアッ!』
「君を一番見てきたのはあの子だ。だから……」
咆哮を上げながら、マリスが裕香にとびかかる。
裕香が剣となったエリアルを構え……一閃。
「多少精度が落ちようと、君の力を使いこなすことに関してあの子が負けるわけがない」
マリスが両断され、分解されていった。
それを呆然と見ていたレイダー兵が……
「こっ、っこの、クソガキがあっ!!」
半ば錯乱状態で、あれこれの格闘技の構えを混ぜ込んだ支離滅裂な構えで、とびかかり……
タンっ! --ドガアッ!!
「あがっ!!?」
裕樹を訪仏させるムーンサルトを披露し、その勢いを利用したけりを叩き込まれ倒れた。
「--ふぅっ……」
気絶したのを見届けた裕香は、その場でへたり込んだ。
手にした杖が元の形に戻ると、それが光へと変わって裕香のポケットに入れてるD-Phoneの画面に、吸い込まれるように飛び込んだ。
すぐ裕香がD-Phoneを取り出し、画面を確認すると……
「……これって」
そこには確かに、エリアルと表示されたアプリがインストールされていた
「次からはそれを起動すれば、また今の力が使える」
「……」
「ただ、気を付けてね……それは君以外が使えないようにしたから、必要外の用途で何かすればすぐ消える」
「……わかり、ました」
「さて……」
太助が用が済んだといわんばかりに、その場を去ろうとし……
「あの……」
「なんだい?」
「変身機能というか、衣装チェンジはないんですか!?」
「へ……?」
裕香の友人の1人が太助を呼び止め、唐突にそんな質問を吹っ掛け……
太助は普段絶対に出すことがない、すっとんきょうな声を上げてしまった。
「だから、衣装チェンジはないんですか?」
「いや、衣装チェンジって……それって必要なの?」
「こういう力で杖って、絶対魔法少女を意識しましたよね? だったら衣装チェンジはついて当たり前です!!」
「いや、ちょっと待って。あの、魔法少女って……ただ、あの力を活かす最善の形が杖で、設定年齢が子供だったからそういう形にしたってだけで、別にそういうのを意識したわけじゃ……」
「あーんもう! せっかくすごい力なのにー!! よーしゆーちゃん、衣装は任せて!」
「ふぇっ!? ちょっ、みっちゃん!?」
「あっ、だったら猫耳! 猫耳はデフォ装備で!!」
「なっ、なっちゃんまで!?」
何やら変な火がついたらしい少女たちに、太助どころか裕香も裕樹もあっけにとられていた、
「……最近の子供は随分エネルギッシュだね」
「……いや、まったく」
「--よくわからないけど、衣装チェンジって必要なのかな? ……特に実用性を感じないし、メモリ喰って邪魔なだけだと思うけど」
「必要なんじゃねえの? 俺も陽炎財閥絡みの仕事の時、宣伝とかなんとかって戦闘服着せられたことあるし」
「……君も大変だね」