1話 夜に出歩くのは危険が危ない
『あ゛あ゛ぁ・・ぐきあ゛ぁ』
「はぁ、はぁ!ちょ、・・ッ!まじかよッ・・!」
どうも、初めまして瀬田 陽貴32歳のおっさんです。そして只今絶賛追いかけられてますねん。え?何にかって?・・・本当にわかんないだが一言でいうと、化物だな。
あれだ、都市伝説とかオカルトで有名なテケテケっているよね?ソレっぽいのに追いかけられてる最中です。
幽霊なのか、妖怪なのか、ちょっとわからんが今言える事は、
「くッ・・!はぁ、はぁ、!な、なんで俺なんだよッ!!」
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そう、俺はコンビニで買い物をした帰り道に奴と出会ってしまった。時間は夜0時を回ったところ暗い夜道をポツンポツンとある外灯の灯りをうけ、夜も冷えてきたな~っと足早に進んでいた。ふと背中に悪寒が走り風邪でも引いたらたまらないとコンビニで買ったホットコーヒーを飲もうとした時それは聴こえた。
ビタンッ・・・・ビタッ・・・ズザザ・・ザ・・
俺の後ろから何かを叩く音と、引きずるような音。ん?っと何気なく振り返った。暗くてよく分からなかったが10メートル程後ろに人が倒れている?周囲には誰もいなかったはず・・。
夜の0時、近くには小規模ながら飲み屋街もある。酔っぱらいか?季節も寒くなってきた所だし、もしも急性アルコール中毒なんか起こしてたらシャレにならんな。そう思い急いで倒れてる人へ走ろうとして、俺は立ち止まった。
いや、違う・・・
点々とある外灯の1つに照らされたソレは倒れてるには倒れているのだが、ビタンビタンと両腕を伸ばして地面を叩きながら這いずってくる。俺の方に!
ゾワッっと鳥肌が立つのがわかる。想像してくれ。夜中自分の後ろから何故か地面を這いよってくる人。正体がなんであれ状況が怖すぎるだろ。半端ない。いくら俺でも後ろから這いずってくる人はトラップできない。
そして人・・ではないかもしれない。外灯の最も照らされる位置にソレが来たとき見えたものは、目は空洞で口は裂け長い髪を左右に振り分けながら言葉にならない声をあげ這いずるモノだった。
(ぁ…え?ちょ…え?…)
人ってのは本当にテンパった時、身体はすんなりと動いてくれないもんなんだな~っと後で思ったよ。《行動》を起こすというまさに゛空気を吸って吐く゛くらい意識しなくても当たり前で簡単に無意識で出来ている事が出来なくなる。
よく何かしらの試験や、スポーツの試合とかで周りの人から言われてたっけな。
゛冷静にね!落ち着いて!大丈夫だから焦るな!゛
だけどいざ本番の試験や試合になると緊張や焦燥、恐怖、プレッシャー等で単純で簡単なことをミスってしまう。あれだけ予習、復習して、あんなに反復練習して身につけたきた事が上手く発揮できない。
あろうことか問題は解き終わっても自分の名前を書き忘れていたり、解答欄を1つズれて記入していたり、試合では初心者でもやらないようなミスをしてしまう。
そしてまさに俺の今の状態がこれである。状況は異常、あきらかに自分に言いようのない危機が訪れているにも関わらず思考がまとまらず正確な判断と行動がとれないでいる。
(ぅ..ごけ!動け!!くそッ!ヤバい、ヤバい!逃げろっ!逃げろ!!)
「かっはぁぁっ!うおおぉああぁぁっ!!!」
某スピリチュアルな番組でジブリ映画の声優もされてた方が言ってた事を俺は咄嗟に実行した。
《生きてる人間の方が絶対に強い。もし恐怖にとらわれそうになったらお腹に力を貯めて叫ぶように一気に吐き出しなさい》
悪い夢や、金縛りになった時コレにはマジでお世話になった。そして今回も身体を動かすことに成功し、俺は夜道を駆け出した。ここで冒頭に戻るわけだ。
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『あ゛あ゛ぁ・・ぐきあ゛ぁ』
「はぁ、はぁ!ちょ、・・ッ!まじかよッ・・!」
俺はガタガタと震える足を必死に動かし走りつづけた。コンビニで買った物もかなぐり捨てて走った。頭の中は恐怖で埋めつくされ後ろを振り返ることなんてできやしない!だけど聞こえるんだ、言葉になってない奇声と地面を這いすってくる音が、奴はもうすぐ後ろまで迫っている!そしてその瞬間はやってきた…
「はぁはぁっ!ぐっ!?うぉあぁ!」
グゴキィ…ガズズツ
後ろから迫ってきたソレに後頭部を髪ごと掴まれコンクリートの地面に頭を叩きつけられたのだ。普通後ろから頭を掴まれたらそのまま後方に引きずり倒されるか、前方に押し倒されると思う。だがソレは頭を掴みながら俺の身体ごと空中に浮かせ、そのまま振りかぶり地面へと急降下させた。
首が支点になったせいか骨が折れるような嫌な音が頭の中に響き、叩きつけられた衝撃で意識は朦朧としている。
ガッ!ガズッ!!ゴッ!ガッ!
「ぐぁ!ぁ・・ぁ・・」
ソレは何度も何度も俺の頭をコンクリートに叩きつけ狂ったような奇声をあげている。何回目だっただろうか?俺の意識が完全に失われる時、最後に思い出したのは幼い頃に事故で亡くなった両親の優しい笑顔だったんだ・・・。
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「父さんっ!母さ‥!!…ん?え?…あれ?」
気がつくと俺は辺り一面が菜の花畑に寝転んでいた。立ち上がり見渡す限り花、花、花!空は晴れ渡り雲ひとつないまさに快晴で気持ちのいい風が頬を撫でている。
遠くまで目を細めてみるが空と花畑しかなく、地平線よろしく花平線ともいうべき光景が広がるばかり。
「地平線や水平線は聞いたことあるが花平線とか‥これもうわかんねえな~。それと…やっぱり死んだんだろうな~。」
最後の瞬間は覚えている。あの化物に捕まって頭を何度も地面に叩きつけられた衝撃が今でも鮮明に思い出せる。無意識に頭に手を添えて守ってしまう程に。それと同時にフツフツと怒りが芽生えていた。
「‥くっそ!なんなんだよ!あのバケモンっ!!ん?アイツ俺の頭を触れたってことは、俺もアイツに触れたんじゃないの か?ああ~!それならいつも思ってたように一発ぶん殴っておけばよかったぁぁ~!くそ!」
陽貴はもしも自分が何もしてないのに幽霊等に無慈悲に襲われた場合【何もしてないのに呪ったり襲ったりしてくるのは理不尽すぎるだろ!一発殴らせろや!物理が効かないとか反則だろ!チートや!チート!】っという考えをもっていた。
そして今回の化物は自分に触れたのだからこっちも触れたのでは?つまり物理が‥効く!
「マジ!一生の不覚すぎる!俺の中で人生の後悔ランキング№1に君臨しましたよ!3年連続№1!とか余裕で獲れるぜ!ちくしょー!!!」
頭を抱えて後悔していると不意に横から声がかかった。
『ふぉ、ふぉ、なかなか面白い後悔の仕方をするのぉ~。普通は殺された事自体に憤ったり、現世に残してきた者に思いを馳せたりするんじゃがのう』
そこには真っ白な着物を身につけたお爺さんが空中に漂っていた。
「うぉ!じ、爺さん、あ、あんた浮いてるぞ!!」
『そりゃあ浮くくらいするわい。わしゃ神だからのう~』
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