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 鳴り響く警報器。

 少年は、薄暗い通路を少女の手を引いて走っていた。

 途中で物陰に隠れて様子を見る。


「こっちにはいない。向こうは探したか?」


 バタバタと数人の足音が近付いてきたが、すぐに遠ざかっていった。


「大丈夫?」


 少年が少女に尋ねる。少女はコクっと頷き、少年を見た。


「もう少し走るけど、いい?」


 少女が静かに頷く。


「何かあったら、すぐに知らせてね?」


 少年が心配して声をかけたが、少女は静かに頷いただけだった。


「じゃあ、行くよ」


 そう言って、少年は少女の手をとり、再び走り出した。

 目指すのは、この薄暗い建物の出口。階段を上り、上にある屋上を目指す。

 階が上がるごとに、追っ手の数は少なくなり、二人は見つかることなく屋上へと続く階段のあるフロアまで来た。しかし、そのフロアには二人の男の人が少年と少女を待っていた。


「そこの物陰のところにいて」


 少女は頷き、少年に言われたところに移動する。それを見届けた少年は、まっすぐ前を見据えた。


「さぁ、諦めてソイツを返してもらおうか」


 一人の男の人が、少年に言う。


「……嫌だ、と言ったら?」


 少年は、前を見つめたまま、落ち着いた声で返した。


「判りきっていることを聞くな」

「力ずくで取り戻すに決まっているだろう?」


 質問してきた人が答えたあと、もう一人の男の人も答えた。それを受けて、少年は返事をする。


「じゃあ、嫌だ」


 少年の言葉を合図に、戦いが始まった。

 一人が少年に近付き、素早く剣を振り下ろしてくる。少年は、右に避けて攻撃を躱す。そして、その人を倒そうと動いた。が、すぐに後ろに飛び退く。もう一人の男性が魔術で攻撃しようとしている姿が目に入ったからだった。

 少年が着地するや否や、もともと少年がいたところが爆発した。


「ほう、躱したか」


 魔術で攻撃してきた人の声がした。少年は前を見据えたまま、下ろした右手にナイフを三本持たせた。

 そして、右手を勢いよく振ってナイフを全て放った。それと同時に、先程近付いてきた男性との距離を詰める。

 少年が奥の男の人を狙って放ったナイフは、手前にいる男性のすぐ横を通って後ろへ飛んでいく。そのため、前にいる男の人は少年への反応が遅れた。その隙をついて、少年は魔術で男の人を眠らせる。

 少年に術をかけられた男の人は、その場で倒れて眠りの世界へと旅立った。

 奥にいた人は、少年が投げたナイフを弾き、反撃してくる。

 少年は、その男性が放った火の球を躱し、影を操ってその人の動きを封じた。


「偉そうにしてた割には、そうでもなかったな」

「くそっ」


 少年は再び影を操り、男の人を締め上げる。


「ぐ……ぁ」


 男の人が意識を手放してぐったりとする。

 それを確認した少年は、男性を締めつけていた影を解いた。


「……ふぅ」


 一息吐いて、少年は少女のところまで歩く。

 少女の前に立つと、着ていた黒いフード付きのポンチョを脱いだ。そして、それを少年より薄着だった少女に着せた。


「外は寒いからね」


 少年は少女の手を取り、歩き出す。


「さてと、屋上から出ようか」


 屋上に続く階段を上り、外に出る。そして、手すりの手前まで来て足を止めた。


「ちょっと失礼」


 少年は少女に声をかけると、少女を横抱きした。


「しっかり掴まっててね」


 少女はコクリと頷いたあと、ギュッと少年の服を握りしめた。

 少年は「じゃあ、行くよ」と言って手すりを越え、屋上から飛び降りた。少し落下したあと、魔術で空を飛ぶ。暗い夜の空を移動し、小さな公園に降り立った。

 少女を地面に降ろし、


「もう少しで着くから、少し目を閉じててもらえるかな?」


 と言った。

 少年は少女の手を握り、目を閉じる。そして、空間移動の術を使った。

 次に二人が姿を現したのは、森の中の開けた場所だった。そこには、古そうだけれどしっかりとした造りの洋館が建っていた。


「もう目を開けても大丈夫だよ」


 少女がそっと目を開ける。


「こっちだよ」


 少年が少女の手を引いて、洋館の中に入った。


「ようこそ。僕はこの洋館に住んでいる、ノエル・フィレンツェ。君も今日からこの館の住人だよ。よろしくね」


 少年は自己紹介をして、少女を見て優しく微笑んだ。


「……ウィステリア」


 小さな声で少女が言う。


「ウィステリア・フロスティー・シャトルーズです。あそこから連れ出してくださった上に、住むところまで……。本当に、ありがとうございます。それと、これからよろしくお願いします」


 少女は名前を告げ、お辞儀した。



――これは、一人の少女と少年のお話である。――



Fin.


…ひとやすみ…

 ある時急に降ってきたお話です。しかし、キャラクター名が決まらず、なかなか執筆できませんでした。ようやく名前が決まり、プロットをつくり執筆し始めたのはいいですが、戦闘シーンに苦戦して、完成が遅くなってしまいました。

 ちなみに、少女――ウィステリアにはモデルと言いますか、参考にしたキャラクターがいます。こういうのは、実は初めてだったりします(笑)ネタバレになってしまうので、ここには書きませんが。もし、気になった方は、ネタバレになりますが、ブログの方に書いてあります。


H25 3/15

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