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雨の日の夜。

※飲酒表現あります。


「たまに思うんです。雨の日の川に流されてみたいなって。」


トロリとした舌触りの酒を飲みながら、その酒の様に不透明な目線で呟いた。


「あの川の濁流みたいに、自分の感情に素直になりたいって。」


丁寧に呟く言葉に返答も相槌もない。でも気にせず口を開く。


「全て想像で補足して話を繋げるんじゃなく、ちゃんとその人の口から、理解するまで話を聞きたい。どうして、どうしてって子供みたいに聞きたい。それをしたら煙たがれるって事を理解しない人でいたい。」


頭のどこかにある、どう足掻いても無駄なことを酒の力で溢していく。もし人生で発する言葉が限られているとしたら、大分無駄にしているだろう。


物分かりが良いのは傷付きすぎるのが怖いからで、他人との付き合いで一線を引くのは依存するのが怖いからで、自分の命にあまり頓着しなくなったのも、多分似たような感じだったんだろう。だって、極論を言えば『心配をかけたくない』っていう他人任せな理由だけで、繋ぎ止めている。そう思いたいだけかもしれないけど。


全て未知の恐怖から自分を守ろうとしている、ある種の自己防衛なのだろう。人並みに変化を求めていながら、実は変化を誰よりも恐れているからこその、自己防衛なのだろう。


そこまで考えていたら、何か急に頭がボンヤリしてきた。ザーザーと降る雨の音が、ハッキリ聞こえる。


「ばっかみたい。」


漠然とした呆れや皮肉で口の片端を上げる。


酒のせいか、それとも別の理由かは分からないが、何だか今は自己否定に浸りたい気分らしい。とことん、自分は人として最低なヤツと貶めたい気分らしい。本当、バカらしい。浸ったところで自己否定だから、惨めな思いをするだけなのに。『そうじゃないよ』と言ってくれる人もいないのに。いたとしても、これじゃただの面倒なヤツではないか。冷静になって、余計に自己否定するのがオチではないか。


自分でも、この二面性は妙だなぁって思う。感情的なネガティブと理性的な皮肉が行ったり来たりして、頭の中で感情のバランスを取り合うようで偏った思考しかしていない。根本的には自己否定が元になっているから、結局惨めな思いをしている。


そんな気持ちで、ボンヤリと雨のザーザーという音を聞いて、適当に辺りを見ていたら、今度は小さく丸くなりたい気分になってきた。


自分だけは自分を認めて、誉めなさいって聞くけれど、自分を否定しすぎて、段々と自分に興味が沸かなくなってきたら、他人にすがりたくなる。抱き締めたいし、抱き締めてもらいたい。ただ側に居てほしい。人の温もりを感じたい。そんな欲求が強くなる。


要は何気ない風で肩肘張っていても心細くて、自分に自信がないのだ。


だから自己防衛のために壁を作るし、壁を作ったことで自分を否定する。過ぎた同じところをグルグル悩んで今更落ち込んだり、だからって次の時にその反省が生かせてなかったり、逆に反省しすぎで新たな後悔と反省と自己否定を呼んだり。


結局悩み否定し反省しても、それ自体が世間的に意味ない事が多くて、でもその思考自体は、思いやりを煎じすぎただけだから無駄ではない事も多くて。


「ああ、疲れているんだな。」


何かをひっくり返したみたいな思考。これ以上は足の踏み場のないようと思えるそんな頭の中を、さながらふよふよと浮いて漂っている感覚になったなと自覚した時、あくびが一つ。次第にに瞼も重くなる。


また明日も、頑張ろう。


頬を伝う涙の冷たさを感じつつ、酒の匂いと、雨の音と、そんな言葉を道連れに、眠った。




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