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星見る二人。


『星、見にいこうか。』


確か、そんな事を言われたのが切っ掛けだったと思う。たまたま手の空いていた私は、その言葉を言った異性の友人に誘われて、星がキレイに見えるところまでドライブしたのだ。




「キレイ。」


夜空を見上げながら、私は呟いた。


目線の先には、キラキラと輝く星達。街に居たら決してみることは出来ないであろう弱い光を発する星ですら、視認出来るほどだ。


生憎私は星や星座に詳しくなく、おまけに目が悪くて眼鏡のレンズ越しの景色だが…それでも、ここで見る星の輝きがキレイと言うのだけは分かった。


「山の中の田舎だし、今日は新月だからよく見えるだけだよ。」


…要するに、周りの光が少ないと、それだけ星は輝きを増すのだろう。


「それでも、ここまでキレイに見れるとは思わなかった。」


彼からしたら静かに天体観測をしたかったのだろうが、その意に反して、まるで子供のようにはしゃぎ、夢中になって夜空を見上げ続ける私。久しぶりにワクワクしながら夜空を見上げていたら、ふと視界が遮られた。背後から目隠しされたのだと、少し考えて理解した。


「何、するの。」


「誘っといてなんだけど、今日はもうおしまい。ほら、こんなに冷えてる。」


すっと、触れられた所から伝わる手の温もりや感触が心地よくて、私は目隠しされている手の下で目を細めた。


だが、気が付いてしまったら全身にまとわりつく様な寒さに身を震えた。星を見るのに夢中になって、今日がいかに寒い日だったと言うのを忘れていた。


「…そう言えば、寒い方が星は良く見えるんだっけ。」


「暗いから分かりづらいけど、息だって真っ白だよきっと。だから、早く帰ろう?」


促されるまま、私達は車の中に戻った。


ドアを閉めると、風がないだけでとても暖かいと感じる私が居た。…どうやら、自分が想像していたより体が冷えているようだ…と、まるで他人事の様に思った。


「ほら、こっちに来る前に淹れておいた紅茶。暖まるよ。」


「ありがとう。」


紙コップに注がれた、まだ湯気の立っている紅茶を受け取り、何の躊躇もなく口を付ければ、余りの熱さにビックリしてしまった。私は猫舌なのだ。


少し念入りに息を吹き掛けて冷まし、そぉっと口に含んだ。


華やかな香りと軽やかな風味、その中に含まれる僅かな渋み。まだ少し熱いが、それのお陰で徐々に体が暖まる。


「一応ジャムとかハチミツとか用意してきたんだけど…使う?」


「今は良い。」


少しずつ、少しずつと紅茶を飲み進めていったら、いつの間にか紙コップの中身は空っぽになっていた。かわりに、切れるように冷たくなっていた手先や、吐き出す吐息は暖かくなっていた。


「ごちそうさま。」


「お粗末様でした。…ねぇ。」


「何?」


少し躊躇(ためら)った後、彼は言った。


「…僕の事も、暖めてくれない?」


「君も、私みたいに紅茶飲めば良いじゃない。」


「そ、それはそうなんだけどさ…。」


何か歯切れが悪いなぁ…と思い、私は少し考えてみた。そしたら、余りにもあり得ない考えが頭に浮かんできて…慌ててその考えを頭の中で否定した。いくらなんでも、あり得ない。


彼が、私の事が好きなのかもしれない。


そんな事、ある筈がない。だって、彼には好きな人が居ると…人伝にだが聞いている。その相手が自分じゃないかとか、思い上がりも良い所だ。


「ああ、使い捨てカイロ持ってるから、それあげようか?」


「いや、そうじゃなくて…と言うか、使い捨てカイロは暖かくなるまで時間かかるじゃん。」


言われてみたら、確かにそうだった。


「だったら、今なら温いから私の手でも握っとく?」


「え…。」


言ってから、とんでもない発言をしてしまったと理解し…でも、言った手前すぐに否定するのも格好がつかない。…仕方なく、私は彼に手を差し出すことにしたのだった。


彼は、やっぱり少し躊躇(ためら)ってから、私の手を握った。思っていたより大きな手だったのと、さっきの自分と同じぐらい冷えた手先に、目を丸くした。


「…暖かい。」


「そっちは、冷たい。」


暫くしたら、段々と気恥ずかしさが勝ってきた…良く考えてみたら、異性と手を繋いだのはいつぶりだろう…少なくとも、ここ二・三年では全くない。


「…恥ずかしい。」


「だね。」


ジワジワと互いの体温が混じっていき、余計に気恥ずかしさが増していった。




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