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異世界のお兄さんと、髪の長い私。

和風異世界トリップもの


私の名前は、藤宮院(フジミヤイン) (サツキ)


大層豪華な名前だが、別に家が旧華族って訳でも、茶、華道を教えている訳でも、舞を教えているわけでもない普通の一般家庭だ。



私自身も、取り柄と言ったら変な家訓のせいで子供の頃から一切鋏を入れずに伸ばし続けて、もう腰以上の長さになった黒髪ぐらいだ。取り柄…と言うより外見的特徴だろうか、コレ。


この黒髪のお陰で、学校でのあだ名は『髪長』が大半(しかも、このあだ名は陰口の時に使うもの)だし、髪を結うのも洗うのも髪が長いために一苦労だし、髪の重さで常に頭痛がするし…。


中学の時、友人に冗談で「私髪長いから、将来舞妓になるんだぁ。」と言って、高校に上がったとき「今の舞妓さんって、高校行きながらでも出来るんだ。」とか「舞いとかのお稽古行かなくていいの?」とか「舞妓の時の名前決まった?」とか…皆結構本気に捉えていたようだ。


んな根性もやる気のない者が易々と入れる世界ですらないのに、髪長いからって理由で舞妓にならんわ!



「はぁ。」


ほろ苦いエピソードを思い出して、ついつい溜め息が出た。


とぼとぼと歩いて、ふと立ち止まったところにあったカーブミラーに移った自身の姿を見る。


高い位置でポニーテールになった髪は、それでも腰近くまであって、顔立ちは平々凡々。身長は平均より少し高め…髪の重さで縮まないで良かった。


着ている服はライトグレーの半袖のTシャツの上に淡いキャラメルブラウンのコートを羽織り、黒に近い色ののショートパンツを穿いている。


足元は黒ニーソに、私にしては珍しくパンプス調のスニーカーを合わせている。


何をどう見ても、今朝散歩に出た時の私そのもの。急にどうこう変わるようなものではない。


「変わる…か。」



私は、何をどう変わりたいのだろうか。



長い黒髪?今更ショートカットにする勇気ないぞ。何より髪に鋏を入れるのが怖いし。


平々凡々な顔立ち?整形でもすれば変わるだろうがそんな金無いし、尚且つ面倒くさい。


体型?こちらも整形でもすれば変わるだろうが、生憎胸はそこそこあるし、足も長め。腹回りは…今はぷにぷにしているが、今後の努力次第でどうにでもなる範囲だ。

決まりきった日常?平凡生活は、つまらないがその分平和だから良い。



「一体私は、何を変えたいのだろうか。」


誰にも聞かれないような呟きを、そっと口に出してみた。


それに答えるかのように、一枚の桜の花弁が目の前を横切った。



…桜の花弁?


おかしい。何がおかしいって…


まだ肌寒い『三月の初め』なのに、何故桜の花弁が目の前を横切ったんだ?早咲きの品種があると言っても、あれビニールハウスの中だけで野外にあるわけない。



この桜が生花なのか、それとも造花なのかが気になって、桜の花弁に手を伸ばした――次の瞬間、カラカラと音を立てて今立っている現実が壊れる、こわれる、コワレル。


まるで完成したジグソーパズルを、端の方から丁寧に崩していくように壊れる世界。



「んな!?な、何事!!?」



やっと言葉を吐き出しても、壊れた世界の暗闇に霧散するだけで意味をなさなかった。


今立っているところも崩れて、私はバランスを崩して落下した。



カラカラと音を立てて壊れたのは現実と、私の平凡でつまらない…だけど平和で大切な日常だった。






「…てな感じの所までは覚えてるんだよなぁ。」

私は只今、竹藪(たけやぶ)の中にいます。さっきまでは普通にアスファルトで舗装された道を歩いていたはずなのにどんなイリュージョンよ、マジで……責任者さん出てきてください。今なら乙女の鉄槌一発を顔面か脳天で許してあげます。



カコォン、カコォン――



聞こえたのは竹と竹が風によりぶつかり合う音と、葉の擦れ合うサラサラと言った音だけだった。



「ふざけんなよ、マジで。あんな中二なものを見せた上に竹藪に放置、なのに責任者は出てこないとかどんな了見だ畜生!」


近くにある竹を睨み付け、思いっきり何度も蹴った。武術の類いをしていたわけではないから、我流でがむしゃらに。


「本、当、に、ふ、ざ、け、ん、なぁぁあ!!」


『、』一つにつき一回蹴って、最後の方には地団駄に代わり、空を仰いで叫んだ。


「はぁはぁはぁ…ゴホッ!ッは、はぁはぁ。」


ただでさえ知らない土地にいきなり来て緊張をしているのに、それに加えて激しい運動と大声で叫んだ事により私の体力は大幅に削られていった。



…こんな知らない土地で、独りぼっちで死ぬのかな。



なんて考えが、頭を掠めたときだった。



「〜〜!?〜〜〜!!」



逆光で上手く見えなかったが、シルエットで人の姿をしているモノが見えた。



まず目についたのは、…薄い色の銀髪。実際に見たのは初めてだけど、綺麗なもんだな。


次に、高い身長。160前後の私が見上げているから、少なくとも170はある。


後、声がバリトン。カッコいいお声をしてます。



…話している言葉が意味不明と気付くより、人の見た目(+α)を見ている辺り、混乱しているのか、それともよく言う『第一印象は0.7秒で大体見た目で決まる。』ってやつだろうか?


「(う〜ん…言葉は分かんないけど、何かこのお兄さん焦ってる?言葉の端々に動揺を感じるし、尚且つ分かりやすく顔に冷や汗かいてるし。)」


「〜〜。〜〜〜〜、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」


突然お兄さんが呪文?みたいなのを言って発光し始めた。


呪文みたいなのを言い終わると、今度は私の体が発光。



…本格的に私ラリった?薬物の類いは一切したことないけど、こんなモノ見るって…。


思考を巡らせて悲観し、プルプル体を震わせていると光が収まった。


光が収まったのを見た瞬間、お兄さんが話しかけてきた。



「私の言葉が分かりますか?」



おお、さっきまで分からなかったお兄さんの言葉が分かるようになった!


「あの、ここは一体…」


「やっと会えた…!」


場所聞こうと思ったら、お兄さんが問答無用で抱きついてきた。


いやいやいやいや、私お兄さんみたいなカッコいいお声の人知りませんよ?


よく見ると、お兄さんは着物を来ていた。…着物着ているのに、日本語じゃない言語話してたよね、さっきまで。…あ、日本マニアの外人さんなのかな?余計に私の知り合い線が遠退いたけど。


「あの、どちら様で「結婚してください!」……ん!?」



結婚…してくださいって言ったか、この兄さん。



「…断る。」


「どうしてっ!?こんなに愛しているのに…!!」



愛していると言われましても、私お兄さんと初対面なんだよ。初対面で、いきなり結婚だの愛しているだの言われても怪しいだけだし。…アレか、新手の結婚詐欺なのか。


「とりあえず、私お兄さんの事全くと言って良いほど知らないから。知らない人とは付き合えないし、結婚なんて以ての外。…これで分かっていただきましたか?分かっていただいたら、この腕を離してくれませんか?さっきから胸部付近を締め付けてきて痛いです。」


ギギギッと、不吉な音を立てながら軋む私の胸骨…耐えてっ。



「私の事が分かれば、結婚してぐたさるのですか!」


「付き合うことのみを視野に入れます。結婚しませ…ん!」


またお兄さんが変な事を言ってきたので反論をしようとしたら、唇を奪われた。


ちょ、私のファーストキスがぁぁあ!?


なんて女々しい事は考えなかったが、いきなり唇を奪われた事のショックは凄まじかった。


「ん…ふぁ……。」


喘ぎ声出してますが厭らしい意味ではないです。単純に(唇で)口塞がれて息出来なくて苦しいだけです。


「ふぅん……ぷはぁ。」


漸く唇を離してくれたお兄さんに文句を言おうとしたら、すっごく眠くなった。そりゃもう立っているのが辛くなるぐらいに。


「次目が覚めるとき、またお会いしましょう……私の愛しい人。」


だから、お兄さんとは初対面なんだってば…。




続くような書き終わりなくせに、盛大にネタ切れしたので続かない…と思う。


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