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炎の光  作者: 久保 徹
2/2

02 解放

後書きで各話登場人物など書いてみます

 

「シュウ王子、おはようございます」


「おはよう」


 足元には赤い絨毯が敷かれ廊下の両脇には等間隔で装飾用の鎧や剣が並ぶ


 朝目覚めたシュウはメイドと挨拶を交わし、廊下を歩いている


「今日も退屈だなぁ」


 ふと立ち止まり窓の外を見た。汚れを知らない青空とそこを優雅に泳ぐ白い雲


「何ぼーっとしてるんだ?」


 我に帰って振り向くとシュウと同年代程の若者がいた


「アレク。おはよ」


 彼はアレク、王子であるシュウの身辺警護の奉公人。シュウにとっては城内で唯一なんでも話せる親友だ


「いい天気だなぁと」


「おいおい、まだ十代だろ?年寄り臭いぞ」


「城に長く籠もってたらこうもなるさ」


 シュウは苦笑いして言った。軟禁が始まって早十年、王子ということもあって不自由しないが毎日が退屈だった


「じゃあ剣舞でもして発散するか?」

 

「いいね、そうしよう」


 二人は木刀を持って城の中庭に出た


 広い円形状の中庭には色とりどりの花が咲き誇り、庭師達の手により綺麗に整えられている


 水を浴びた花達は、降り注ぐ日の光を受けて眩しく輝く


 そんな中二人が木刀で打ち合う乾いた音が響き渡る


「おい、どうした!今日は調子悪いのか?」


「なんの!」


 真横から迫るアレクの木刀を、身を低くしてかわしアレクの足を払う


「うおっ」


 すかさず立ち上がり倒れ込んだアレクの鼻先に木刀を突き付ける


「勝負あり、だな」


「やられたよ」

 

 アレクは両手を上げ降参の意志を示す

 

 シュウはその手を取って引き起こした


「シュウ王子、陛下がお呼びです」


「父上が?わかった」

 

 アレクに木刀を預け、シュウは国王ミリアルド七世の私室へ向かった


 私室のある宮殿は城の一階奥にある


 大きな扉を入ると謁見の間に続く階段と扉がある、その下にあるのが宮殿への扉だ


「シュウ様、お疲れさまです」


 宮殿への扉は謁見の間への扉同様、聖紋騎士団の兵が槍を片手に直立している


 シュウには見慣れた光景、軽く挨拶を返して入る


「父上、ただ今まいりました」

 

「待っていたぞ、シュウ」


「お話は?」


 ミリアルド七世は豪華に装飾された椅子から立ち上がった


「実はだな、お前の軟禁を解こうと思うのだ」


「え?」


「アロナクスと和平が成立して五年。両国の関係は実に良好だ、もはやお前を狙う者はいまい」


「はい」


「そこでだ。話は急だかシュウよ、見合いをしてみぬか?」


「……はい?」


 シュウは驚いて声が裏返った


「アロナクスの王女が婿を探しているようなのだよ。向こうも乗り気らしい。どうだ、一緒に外の世界も経験できる」


「本当に急ですね」


 突然の軟禁解除と突然の見合い話に、シュウは驚きを隠せない


「一度会うだけでも」


 しばらく考え込んでいたシュウだったが、外の世界見たさとこの一言に押され、押し切られた感もあったが了解した

 



「ははは!いいじゃないか。軟禁解除と見合い話で二重にめでたいな」


 中庭に戻って父親との話をアレクに話すと、アレク笑って言った


「で?いつ出発するんだ?向こうの首都に行くんだろ」


「二日後だって」


「それも急だな」


「一緒に行く人を選べって言われたんだけど、アレクお願いしていいかい?」


「ああ、もちろん」

 

 慌ただしく準備をして二日後


「父上、準備ができました」


「よし、気を付けて行きなさい。アレク、シュウをよろしくな」


「お任せください」


 本来なら聖紋騎士団が護衛に付くところだが、今回はシュウの意見を尊重した形になった


「それでは行ってきます」


 謁見の間を後にして階段を下りる


 目の前の大きな扉をくぐれば、窓から眺めるしかなかった城下町がすぐそこに広がっているのだ 

「シュウ、お前が開けな」


「……よし」


 シュウは扉に手を当てて力を入れた


 両手に扉の重さが伝わる。さらに力を入れると扉はゆっくり開いた


 差し込む光に目を細め思いを馳せた地に足を付けた


「ここが……」


「そう。ここが光のレムリアだ」

 

 レムリアは山を背にして城から半円形に街が作られ、その間を山から落ちる滝が水路となって奔っている


 街中の移動には要所を結ぶ列車が主に使われる 

 二人も城門前駅から列車に乗って広場前駅で降りた


「そんなキョロキョロするなよ」


「しょ、しょうがないだろ!」


「そうだシュウ、こいつを」


「父上がいつも大事そうに持ってる……」


 アレクが渡したのは王位継承者に代々受け継がれる剣だった


「鳳紋剣。一人前になるお前への手向けだ」


 ミリアルド七世がこの剣を預けたということは次の王として認めたことになるが、二十歳の成人を迎えるまでは王位にはつけない


「さて、そろそろ行こうか。街の外には魔物もいるから気を付けろよ」

 

 結界紋術で守られた街から出ればいつ魔物に襲われるかわからない


 人々が街の外に出るときは結界紋術と同効果を封じ込めた封紋石を持つが、王は

「これも試練だ」

と言って持たせなかった


 しかしシュウの心には大きな希望しかない


 小さな炎は新たな風を求めて旅立った




『シュウ』………………幼少時の記憶を失ったミリアルド王国王子。。。『アレク』………………シュウの世話役にして一番の親友。剣の腕も一流でシュウの師。。。。。『ミリアルド七世』……現ミリアルド国王。シュウの父親。

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