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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

【閲覧注意】もしも『小説家になろう』の民度が圧倒的に悪すぎるサイトだったら......

作者:
掲載日:2026/05/10

【閲覧注意】本作品はフィクションであり、実在する小説投稿サイト、運営団体、および読者の皆様とは一切関係ありません。作中の過激な表現は「もしも民度が最悪だったら」という設定を楽しむための演出であり、特定の個人や団体を誹謗中傷する意図は毛頭ございません。現実の運営様の神対応と読者の皆様の温かさに日々感謝しつつ、この地獄絵図をお届けします。


 僕のペンネームは「虫」という。

 特に深い意味はない。「吾輩は猫である。名前はまだない」という有名な一節があるが、僕の場合は「私は虫である。名前など付けてもらう価値もない」という卑屈なニュアンスが近いかもしれない。いや、このサイトに生息している以上、実際には「叩き潰されるための存在」という意味が正しいのだろう。あえてもう一度言うが、特にペンネームに意味はない。


 真夜中、安物の缶コーヒーを啜りながら、僕はノートPCの液晶画面と睨み合っていた。

 ワードファイルに文字を打ち込み、推敲し、また消しては打ち直す。誤字脱字のチェックは三度行い、日本語の誤用がないか辞書を引き、ストーリーの矛盾を潰すために年表まで作成した。


「……よし。これなら、いけるはずだ」


 時計の針は午後十一時。僕がちょうど寝静まる時間帯だ。今回書き上げたのは五千文字程度の短編。僕なりに構成を練り上げ、伏線を回収し、読者の感情を揺さぶる自信作だった。


 僕は震える指で「投稿」ボタンをクリックした。

 この瞬間だけは、どんなにこのサイトが荒廃していようと、淡い期待を抱いてしまう。


「誰かの心に届いてくれれば……」


 だが、その願いは、わずか数分後には粉々に粉砕されることになる。


 投稿完了から五分。通知ランプが狂ったように点滅を始めた。

 僕は期待半分、恐怖半分でコメント欄を開く。そこに並んでいたのは、人の言葉を借りただけの「劇物」だった。


『主人公がダメすぎる。存在そのものが不快。根本的に設定からやり直せ。というか、お前は義務教育からやり直せ。キャラの心理描写が狂ってる。お前の頭の中も狂ってる。二度と筆を執るな。目障りだ』


 思わず画面から顔を逸らした。

 一文字目から最後まで、一切の慈悲がない。作品に対する批評ではなく、もはや僕という人間に対する「抹殺宣告」だ。しかし、これはまだ「文章の体」を成しているだけマシな方だった。


『作る価値なしの雑魚。生きてる価値もない。〇んどけよ。お前が〇んだら異世界転生させてやるから、今すぐビルから飛び降りろ。それが唯一の社会貢献だ』


「……何を、言っているんだ」


 呟いた声が震える。

 読みたくないなら、読まなければいい。タイトルとあらすじを見て、趣味に合わないと思えばブラウザバックすればいい。最後まで自分が書いた文章を読む必要すらもないではないか。なぜわざわざ、他人の命を削るような言葉を打ち込む労力を割くのか。〇んだら異世界に行ける? それは物語の中だけの救済であって、現実に推奨されることじゃない。このコメントを書いた人は異世界から来た人間だとでも言いたいのか?


 だが、コメントの荒波は止まらない。

 中には、文法ミスを指摘する「正論」を隠れ蓑にした、超弩級の暴論も混じっていた。


『てめー、文章が長すぎるんだよハゲ。一文が三十文字を超えたら読めねえって言ってんだろ。スクロールさせる手間を考えろ。お前のせいで俺の指の筋肉が疲労した。治療費払えよ』


 僕は呆然とした。

 ハゲ? 僕自身は髪の毛や髪型に関しては特に異常もない。たとえ鏡を見たとしてもだ。ネットの向こうの住人が僕の実態などを知る由もない。顔も見たことがない相手を、脊髄反射で「ハゲ」と罵倒する。ここはガラの悪いチンピラがたむろする路地裏か何かなのか。


 さらに画面を更新するたび、地獄の釜の底を覗くような発言が積み重なっていく。通知数はあっという間に二十件を超えた。


『お前が書いたこのフレーズ。〇〇先生の作品に対する冒涜だろ。〇〇先生が描く「パン」と、お前が描く「パン」が同じ色なのは著作権侵害だ』

『こいつどこ出身? 育ちが悪すぎて文章から腐敗臭がする。親の顔が見てみたい。住所晒せ』


 もう限界だった。

 指先が怒りと屈辱でガタガタと震え、吐き気が込み上げる。


「ふざけるな……! こんなの、いくらなんでも許されるはずがない!」


 僕は最後の希望を託し、運営への通報フォームに駆け込んだ。

 悪質なコメントのIDをすべてコピーし、利用規約違反であることを理路整然と書き連ねる。このサイトの健全性を守る義務が運営にはあるはずだ。


 送信ボタンを押し、僕は深く息を吐いた。

 いくらなんでも、これだけの暴言が放置されるわけがない。

 だが、数分後に届いた運営からのメールは、僕の心臓を直接氷漬けにするようなものだった。


【件名:お問い合わせについて】

『虫様。いつもご利用ありがとうございます。

 お問い合わせの件ですが、当事務局にて精査した結果、いずれのコメントも「読者の率直な感想」であり、表現の自由の範囲内であると判断いたしました。

 むしろ、貴殿の作品がこれほどまでに読者を不快にさせた事実を重く受け止めてください。この叩かれ方は、作家としての貴殿の不徳が招いた「当然の末路」であると存じ上げます。

 なお、以降の同様のクレームは業務妨害とみなし、アカウントを停止させていただく可能性があります。ご了承ください』


「……ぁ、あああ……」

 

 絶望の叫びが、喉の奥から漏れ出した。

 当然の末路? 運営が、ユーザーを追い詰める側についているのか?

 ここは「なろう(小説家になろう)」ではない。「ナよろう」だと思いたい。

 「な」と「ナよ」が一文字似ていてほしいと願いたい。

 読者も運営も、作家をボロ雑巾のように扱い、精神的に屈服させることを楽しむ「ナよろう(意気地なし、ナヨナヨした奴をなぶる場所)」だ。


 だが、僕はまだ諦めきれなかった。

 メールがダメなら、直接話してやる。僕は利用規約の隅っこに書かれていた「緊急連絡先」の番号に電話をかけた。


『プルルル……ガチャッ』

『お電話ありがとうございます。株式会社〇〇の運営事務局、〇〇でございます』

 

 出たのは、驚くほどガサツで、攻撃的なトーンの男の声だった。マニュアルを読んでいるフリすら投げ出したような、面倒くさそうな声。


「あ、あの、先ほどメールをいただいた作家の『虫』ですが……」


 僕が言いかけるや否や、受話器の向こうから怒鳴り声が飛んできた。


『おい、おっさん! 虫だかゴミだか知らねえが、あんたのせいでこっちは大忙しなんだよ!』


「えっ……?」


『あんたのクソみたいな小説のせいで、「視界にゴミが入った」って著作権侵害で訴えてるユーザーが何十人もいるんだ。あんたみたいな底辺作家のクレームに、いちいち付き合ってる筋合いはねえんだよ。通話料の無駄だ。二度とかけてくんな。異世界にでも行ってこい、ハゲ!』


 ――ツッ、ツッ、ツッ……。


 一方的に切られた受話器を握りしめたまま、僕はその場に崩れ落ちた。

 窓の外では、夜明けの光が白々とし始めている。

 一晩かけて、魂を削って書いた五千文字。

 それに対して得たものは、二十件の呪詛と、運営からの「〇ね」という言葉だけ。


 僕は震える手でPCの画面を見た。

 そこには、今もなお新しいコメントが書き込まれ続けている。


『まだ消してねえのかよこのハゲ。生命力がゴキブリ並みだな』


 僕はゆっくりと立ち上がり、半分残っていた冷めた缶コーヒーを一口飲んだ。

 味がしない。

 ただ、心の奥底で、何かがパチンと弾ける音がした。


 ……そうか。

 ここが「ナよろう」だというのなら。

 僕は「虫」として、この汚泥の中で、彼らが予想もしなかったような「猛毒」を吐き散らしてやろうじゃないか。


 僕は再び、ワードファイルを開いた。

 タイトルを打ち込む。

『全読者と全運営へ告ぐ:お前ら全員、地獄へ道連れだ』


作中では野蛮なアンチコメントが飛び交っていますが、現実では絶対に真似をしないでください。「人を呪わば穴二つ」という言葉通り、悪意は必ず自分に返ってきます。

この物語は、そんな「最悪な世界」への皮肉を込めたフィクションです。

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