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カリテスの恋路  作者: 野神 真琴
ロネパニア帝国 遠征編
3/26

1-3 サールという友人【プロローグ(私達カリテスの悩み)】

 ミアはスレンダーな体型だが、その姿からは想像出来ないくらいの、密度が高い筋肉を持っている。ライアは小柄で庇護欲を刺激させるような痩せ方をしており、見た目通りの非力な女性だ。そんな二人の元に遅れて来たサールは、一般的な女性達と比べても少しだけ太っており、本人はそれをとても気にしている。


 サールが着ている派手な赤い服には、贅沢というよりは無駄と形容した方が正確な装飾が多く付いており、出来るだけ安価に可愛らしさを追求したような装いだ。これが冒険者ギルドの受付嬢が着る制服なのだが、もう何年も前に量産された服なので、少しだけ古臭さも感じてしまう。


 席に座ったサールは「私も同じ物を」とウェイターに申しつけて、麦酒が入ったコップの到着を待った。それが揃って初めて、全員が揃ったと言えるだろう。


「遅かったじゃねぇか、サール」

「そうですよ。サールさん、遅刻は罪です。大罪です」


 ミアと酔っ払ったライアを見たサールは、自分も早くアルコールが必要だと感じてしまう。ギルドの受付嬢をしているサールは、本来ならまだ働いている時間なのだが、ミアからの伝言を聞いて、上司に無理を言って早退してきたのだ。


「私には来ないという選択肢もあったのよ」

「俺がギルドの受付まで行って、サールを攫ってくるという選択肢を選ばなくてよかったな」


「わたくしなんて」ライアが二人に口を挟む。「ミアさんが教会に突っ込んできて、気付いたらこうなっているのですから。パスター・パペロへ何と言い訳すればいいのか。本当に困った愛すべき友人です」


 顔を赤くするライアと大仰に笑うミアを見て、サールはうんざりし始めていたが、テーブルに麦酒が到着した事によって気分は相殺された。


「まぁ」ミアが仕切り直してコップを手にする。「良き友人が全員揃ったと言う事で、乾杯をしようじゃないか。我ら、カリテスに幸あれ」


 三人が手にしたコップを勢いよくぶつけ合うと、中に入った麦酒が少し飛び散った。こうしていつものカリテス飲み会が始まる。


 カリテスというのは酔っ払ったライアが付けたグループ名みたいなものだ。その適当な名前を気に入ったミアは、仕切りにカリテスという名を使ったが、サールはそのチーム名が嫌いだった。


 最初は冗談で「私達カリテスは」なんて言い合っていたが、それが身内だけで使う言葉ではなくなった時に、サールは恐怖を覚えた。自分達だけでなく、他の人が自分達をカリテスと認知しているのだ。冒険者でもなければ軍や騎士に属している訳でもないのに、一般人が馬鹿げたチームを作るなんて変な話だとサールは考えており、恥ずかしくて仕方ないのだ。


 曰く、三馬カリテス。

 曰く、飲んだくれカリテス。

 曰く、行き遅れカリテス。

 曰く、ノーロマンスでノロマなカリテス。

 曰く、熟れた売れ残りカリテス。

 曰く、ユニコーン騎兵隊カリテス。


 この街の男達が「カリテスには手を出さない方がいい」なんて噂しているのも、情報を取り扱う仕事に就くサールは知っている。このまま悪友共と関わっていては、ただでさえ遅い婚期を更に遅らせる羽目になりそうだと、サールはいつも危惧している。


「それでですよ」ライアはコップをテーブルへ置いた。「どうしてミアさんは、こんな緊急に招集をかけた訳なのですか?」


「そうよ、私まだ受付の仕事が残っていたのに」

「わたくしなんて、お祈りの途中だったのですよ」

「大体、ミアはいつも強引なのよ」

「強引は罪です。大罪です。裁きが下ります」

「ライアの言う通りね」


「神なんていねぇよ」ミアは雰囲気を暗くして話す。「聞いてくれよ、二人とも」


 ミアは怒りっぽい性格だが根は明るい。しかし今日のミアは暗い。怒りっぽくて暗い奴なんて最悪だとサールは思ったが、とりあえずは口にしなかった。何かしらの理由を察したライアとサールは、互いの顔を見合わせて首を傾げる。


「俺のパーテイーにクレイとシャルってのが居るだろ?」


 ミアが言った二人の人物に対して、ライアは全く心当たりがなかったが、サールの方は「まさか」と言って口元を抑えた。冒険者とギルド受付嬢は交流があるので、サールはミアのパーティーメンバーの事を把握しているのだ。


「その、まさかだ」


「それは、残念ね」サールはミアの手を握った。「大丈夫、ミアのせいじゃないわ。ギルドとしても出来る限りの事をしてあげるし、色々なサポートも受けられる筈よ。私が手続きをしておくから安心して。それと、絶対に自分を責めちゃ駄目よ」


 サールの言葉を聞いて事態を把握したライアは、二人の重なっている手に自身の手も重ねて、目を閉じながら「神に祈りましょう」と静かに言った。冒険者を生業にしていれば、人の死も珍しい話ではない。


「なに勘違いしてんだ?」


 ミアが素っ頓狂な声で問いかけると、まずはサールが手を退いた。遅れてライアも手を退いたが、あともう少し間があれば、本当に神へ祈りを捧げていただろう。


「死んだのじゃないなら何よ?」

「あいつら、リーダーの俺に隠れて、ちんちんかもかもしてやがった」

「それがどうしたのですか?」

「俺達は仲間だ!」


 ミアはテーブルを叩いた。冒険者の言う仲間という言葉が何を意味するのか、ライアやサールにはいまいち把握出来ず、どうしてもミアが嫉妬しているようにしか思えなかった。


「ミア、嫉妬はよくないわよ。素直に認めて祝福してあげなさい」

「そうです。そして、もし、式を挙げるのなら、是非ともわたくし達の教会で行って下さい。異教であろうとも、これを機に改宗をお勧めします」


「違う違う」ミアは二人に向かって両手を大きく振った。「あのクソ共はな、俺に隠れてヤっていたんだ。それに、パーティーで恋愛なんて絶対に駄目だろ。命をかける事をロマンスにしてはいけない。別れろっていう訳じゃないけど、せめてリーダーの俺には相談すべきだろ?」


 サールが頷いているのを見て、ライアも何となく頷いて肯定した。ギルドだとかパーティーだとかに疎いライアは、黙るためにコップを手にして麦酒を飲む事にした。


「まぁ、仕方ないじゃない」

「そりゃあ、そうだけどよ」

「よくある話よ」


「ふざけやがって」ミアは麦酒を飲み干す。「あの二人とは、もう絶交だ」


 サールもコップを手にしようとしたが、ミアの言葉を聞いて「待ってよ」と声を荒げた。サールが個人的にというよりも、ギルド協会にとってミアのパーティーが解散する事は不味いので、それを丁寧に説明する事にした。ミアのような実力者がギルド協会から抜ければ、サールが働いている支部にとっては不味い状況になりかねない。ルーブル王国は冒険者になる人が集まりにくい環境だ。さらに、王都の支部ともなれば、冒険者の数は更に少ない。華やかな騎士が多く、それに憧れる若者が多い王国では、冒険者なんて土方と大して変わらない扱いだ。


「サール、俺はクレイとシャルと絶交をしただけだ」

「お願いだから仲直りして、またパーティーを組んで頂戴」

「また勘違いしているようだから言うけどな、俺達は解散しないぞ」


「えっ?」サールは首を傾げる。「でも、絶交したのでしょ?」


「解散は絶交の後にある」

「どういう事?」

「絶交しても、簡単にパーティーを解散する訳ないだろ。俺達も生活があるからな。解散なんてしない。クレイとシャルは友人ではなくとも仲間だ。絶交しても解散しない」


 サールは納得出来なさそうに「それならいいけど」と言った。とりあえず安心したサールは、ウェイターに沢山の料理の注文を始め、それらを奢って貰えるとライアが説明すると、更に倍の料理を注文した。

のがみで、おま!!

今日はこの辺で( ͡° ͜ʖ ͡°)

また、明日にでも投稿しまぁ

プロバブリー

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