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カリテスの恋路  作者: 野神 真琴
ロネパニア帝国 遠征編
25/27

4-5 初フライト

 帝国空軍の若い訓練生から、フライドラゴの操縦方法について一通り聞いたミアとライアは、皮で出来たヘルメットを被る。準備が整った二人を見た訓練生は、フライドラゴの手綱を持って「どちらが操縦を?」と尋ねる。


「俺だ」

「わたくしが」


 ミアとライアの声が重なり、互いに顔を見合わせる。せっかく熱心に操縦方法を聞いたのだから、どうしても操縦がしたいライアと、自分しか出来ないと最初から思っていたから、選択肢が他に無いと思っていたミアは、互いに互いを「こいつは何言っている?」といった表情で見やる。


「フライドラゴって一匹しか借りれねぇのか?」

「そうです、そうです。何匹も居るのですから、一人一匹借りましょう」


 訓練生は頭を横に振る。本来なら一匹貸すのでも特例なのに、二匹も貸し出すなんて出来る訳がないと、訓練生が真摯に伝える事でミアとライアは納得をした。それに、フルプレートで武装した男性を一人乗せられるフライドラゴなら、女性三人くらいは余裕で乗れる筈だ。


「ライアは馬にも乗れないじゃないか?」

「それを言うなら、ミアさんは織り機を操れますか?」

「フライドラゴと織り機は違げぇだろ」

「馬とフライドラゴも違いますよ」


 織り機なんて訳のわからない物を比較として出す時点で、ミアはライアにだけは任せられないと考える。ライアは馬みたいな皆が乗れる物に跨って操る気は無いが、フライドラゴにはどうしても操ってみたかった。どうせ乗るならば、自分が操縦するしかないと思うミアと、せっかく乗るのならば、絶対に自分が操縦したいと思うライア、二人の考えは平行線を辿る。


「このお方が言っていた事をちゃんと聞いていましたか?」

「それはこっちの台詞だ。ライアは神以外の言葉に耳を貸せた事があるのか?」

「器用で繊細な操作が必要なのですよ。ミアさんは不器用で大胆じゃ無いですか」

「反射神経が必要だとも言っていた。ライアはスカートを弄られても気付かないような鈍臭い奴じゃねぇか」


「もういいです」ライアは強く言う。「それならば、フライドラゴさんに決めて貰いましょう。どちらに手綱を預けたいですか?」


 ライアがフライドラゴに問いかけると、ミアも「どうなんだ?」と語気を強めて聞く。全く言葉が理解出来ないフライドラゴは、訓練されているので暴れる事は無かったが、自分がまずい状況に陥っているのは理解しており、本能的に恐怖を感じるミアではなく、ライアの方に頭を擦り寄せた。


「グゥウン」


 ライアがフライドラゴの頭を撫でると、再び「グゥウン」と唸った。異常に低い鳴き声を、無理して限界まで高くしたような声だ。ライアが触れた頭はザラザラとした肌触りをしており、奥の方には水分を含んだような冷たい感じがする。湿っているような、乾いているような、フライドラゴの不思議な触り心地を、ライアは存分に楽しむ。


「もういいよ」ミアは何度か頷く。「俺はお前の親戚を殺しすぎたのかもしれないな。嫌われて当然だ。ライアの馬鹿が操縦していいから、早くサールの馬鹿を探しにいくぞ」


 ライアがフライドラゴに跨り鐙に足を掛けると、その後ろにミアも乗る。二人が乗れるように作られた鞍は、フライドラゴが翼を広げても邪魔にならないようになっており、馬用の鞍よりも窮屈でバランスを取るのが難しい。


「それでは、行ってきます」


 訓練生は「お気を付けて」と行って、手綱をライアに渡して自身は二歩ほど下がる。フライドラゴは大袈裟に翼を広げて、地面から足を蹴り上げる。大きな翼が風を切る大きな音と、味わった事のない浮遊感は、ライアの心を弾ませる。


「ミアさん、行きますよ」

「まずはゆっくり……」


 ミアの言葉はライアが手綱を名一杯弾く事で遮られた。フライドラゴは一気に上昇していったのだ。あまりの急上昇にライアは笑ってしまったが、ミアは情けない声を漏らす。思わずミアが脚に力を入れてしまったせいで、フライドラゴは腹部を締め付けられ、空の上で暴れてしまう。


「おい、ライア、ちゃんと動かせ」

「やってますよ」

「いま落ちたら二人ともミンチだ」


 ライアは慌てながらも、なんとかフライドラゴから主導権を奪おうと努める。右へ左へと体を揺らすフライドラゴに合わせて、ライアは力を抜きながら手綱を合わせたり、逆に無理やり引っ張ってみたりもした。


「おい、このままだと俺がずり落ちる」

「ミアさんが暴れるから、わたくしまで落ちそうですよ。落ちるなら一人で落ちて下さい」

「落ちる時は絶対にお前も道連れにするからな」

「死ぬのは一人で十分です」


 ミアは「死にたくなければ安定させろ」と怒鳴ったが、ライアは「フライドラゴンさんに言って下さい」と強気に返す。それに呼応するようにフライドラゴは悲痛に満ちた鳴き声を上げる。そこでミアは自分の脚に力が入っている事に気付いた。


「おっ」ライアは上手く手綱のバランスを合わせ始める。「なんだか、急に安定してきましたよ、ミアさん。これならいけそうです」


 ミアは自分の所為だったのだと悟ったが、とりあえず「よくやった」と褒めて、責められないように立ち回る。ライアは手綱を操れば左右に動く事を確認してから、フライドラゴの腹を軽く二度蹴って前へと発進させた。


「そっちじゃない」ミアはフライドラゴの翼が出す音に負けないように言う。「とりあえずは闘技場の方へ行くぞ。北だ。北へ向かえ」


「北ってどっちですか?」

「北は北だ。東西南北の北」

「ですから、北ってどっちですか?」

「北なんて基準だろうがよ。いま向いてるのは東だ」

「東西南北なんて解りませんよ。私が向いているのは常に北です」

「なに言ってんだお前」


 ミアは「こっちだ」と言いながら、ライアの服を後ろから両手で掴み、北側へと引っ張るように動かす。フライドラゴを操縦するライアを操縦するミアという構図で安定し、二人はサールを探して闘技場へと向かう。


のがみです( ͡° ͜ʖ ͡°)


文章が安定してきてませんか?

少しくらいは読みやすくなってませんか?

実は結構な期間を空けて書いたのですよね☺︎

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