表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カリテスの恋路  作者: 野神 真琴
ロネパニア帝国 遠征編
15/27

3-1 バザルの祭り

 ロネパニア帝国領バザル自由都市では、三年に一度大きな祭りが開催されるが、昨日から開催されている祭りは、いつもの年よりも活気に満ちている。一応はロネパニア帝国領ではあるものの、独立した自治権を有する特殊な都市には、帝国でも王国でも見られない様々な物や人で溢れている。


 バザル自由都市に入る手前で、カリテスの三人は検問所の列に並んでいた。大きな壁で都市の中は見えないが、周りにある大海原は青く輝いており、自由貿易都市としても栄えているのが良く解る。行き来する商船の数は、世界でもトップクラスだ。


「あれは何でしょうか?」


 ライアが指差した先にあるのは、地平線の手前に浮かぶ円形の船だ。球体を半分に切り取って、それをそのまま海に浮かべているような船は、島というほど大きくないが、船というには大きすぎる。小さな村がそのまま乗っていてもおかしくない程大きく、魔法で浮かぶ派手な垂れ幕には、様々な国の文字で何かが書かれている。


「私も初めて見たけど、あれは有名なギャンブル船よ。帝国水軍はあれを許しているのかしら?」

「ギャンブル船?」

「凶悪な指名手配犯の兄弟が運営している、移動式の賭場みたいなものね。四つある海の一つを財力で支配しているっていう話だわ」

「てっきり島かと思いましたが、あれは、船なのですか?」

「そうみたいよ。でも、あれが動いている所は誰も見たことがないのよ。こうしたお祭り時や何かの催事、人が多く集まる時なんかに、気付いたら現れて、気付いたら消える、そんな船なのよ。中では賭け事が行われていて、割と誰でも入れるみたいだけど、まともな神経していたら行かないわよね」

「そうなのですね。私も行ってみたいです」

「ギャンブルは罪じゃないの?」

「無知も罪です」


 サールは首を振って呆れを表す。何かトラブルがあったのか、検問所には行列が出来ており、まだまだ進みそうにない。前に並んでいる人々の後頭部よりは、海に浮かぶ巨大なギャンブル船に興味が向くのも自然だろう。どちらにも興味がないミアは、待たされている事にも辟易としていたが、ライアは周りに質問責めするほど新鮮な物事で溢れており、それを丁寧にサールが答えて暇を潰していた。


「あの垂れ幕が帆になっているのでしょうかね?」

「あんなので進まないでしょう」

「じゃあ、どうやって進むのでしょう?」

「知らないわよ」

「ミアさんは知っていますか?」


「回転するんだ」ミアは面倒そうに答える。「あの船は大きなタコとイカが動かしている。何本もある足だか手だかを使って、回転させながら動かすんだ」


 ミアは真剣に答えたつもりだったのだが、ライアとサールは冗談と受け取って大笑いする。訂正するのも面倒なミアは、船の事よりもどうして列が進まないのかにしか興味がない。ライアとサールは馭者を交えて、楽しそうに雑談しているが、ミアは早くバザルに入りたかった。


 そんな時、カリテスが乗っている馬車の隣を、馬に乗った男が通り過ぎようとした。苛立ちを抑えているミアは、件の男に対して「おい」と声を掛ける。質素な格好をした男は、腰に恐らくは剣を包んだ布を携えている。


「並んでるんだ。抜かすな」


 男は馬車を一瞥したが、ミアを無視して検問所へ向かおうとする。ミアは馬車から体を乗り出し、再び「おい!」と男に問い掛ける。男はミアの顔を見ると馬をとめた。


「これは、これは、エウティミア様では御座いませんか」

「アークじゃねぇか」


 アークは馬から降りてカリテス達が乗っている馬車の元へと近付く。ミアはアークの格好を見ながら「なんだよ、その格好」と言って笑う。拾ってきたようなボロボロの布は、農民が作業着にしていそうな服だ。


「エウティミア様の方こそ、いつもとは違うお召し物で?」

「ミアでいいって」

「失礼、ミア様」


 様もいらないと言うか迷ったミアは、面倒なのでアークの慇懃無礼な態度を我慢する事にした。こっちもマルクス様と本名を丁寧に呼んで、揶揄う方が面白そうだったが、それはまた今度にしようとミアは心に留める。


「ところで、こちらのお美しい方々は?」


 アークはサールとライアに顔を向けて、軽く馭者の方も見やる。失礼だと解りながらも、サールの持ち合わせる女性特有の魅力的な曲線を、アークは下卑た目で凝視してしまう。アークは仕事中でなければ、サールを口説いていた所だろう。


「友達だ。こっちが、サールで、こっちがライア」

「そうでございましたか、自分はマルクスなんたら、かんたらと、長ったらしい名前でありますので、どうか、親しみを込めてアークとお呼び下さい。ライア様、そして、サール様」


 アークはサールを呼んだ後にだけウインクをした。ミアは成る程といった感じで軽く頷き、人見知りのライアは無言でコクリと頷くが、一人だけ嫌な視線を感じ取ったサールはアークを無視する。アークはこめかみを人差し指で掻きながら、自己紹介が失敗したと悟る。有名な冒険者の友達なら仲良くする価値はあるし、特にサールのような自分好みの女性とは、損得を抜いて普通に親密な関係を築きたかった。アークは「第一印象失敗」と心の中で独りごちる。


「検問所が進まねぇけど、何かあったのか?」

「申し訳ございませんが、答える事が出来ません」

「いつ進むんだ?」

「それは解りません」

「俺が今にも暴れるという答えを出すのは解るだろうけど、応えられるか?」


「付いて来て下さい」アークは苦笑いを浮かべながら言う。「特別に優先してお入れ致しますので、その気を鎮めて頂きたい。自分が乗っているのは訓練された馬ですので、これ以上ミアさんに気を向けられると、萎縮して動けなくなってしまいますよ」


 アークがゆっくりと進み出したので、カリテスが乗っている馬車も列を抜けて続く。アークは並んでいる人々を確認するように進みながら、ミアに対して「今日は何をしに?」と尋ねる。


「観光だ」

「それは良かった。楽しんで下さい」

「アークは何をしていたんだ?」

「任務としかお答え出来ません」

「モンスターが相手なら役に立てるぞ?」

「その時はまた、ギルドを通して依頼させて頂きます。しかし、まぁ、せっかくですので、少し尋ねたい事があるのですが」

「検問を通してくれるんだから、協力してやるよ。何が聞きたい?」

「ここらで圧倒的な強者を見かけませんでしたか?」


 カリテスの全員に心当たりがあったが、ミアが「俺より強い奴はいねぇ」と答えたので、ライアとサールは黙っておいた。アークはサールの表情を見て、何かを隠していると感じたが、情報を引き出す手立てがないのが現実だ。


「いやぁ」アークは極秘情報を少しだけ開示して反応を伺う事にした。「神をも殺せる、いや、天賦を持つ英雄が、再び歴史の表舞台へと現れようとしている。その人物を探しているのですよ」


 アークはカリテスの面々を注意して見やる。腹芸も出来るミアは平然としており、神に仕えるライアは露骨に嫌悪感を漂わせている。やはりこの美しい丸みのある女性は解りやすいと、アークはサールの顔と体を注視する。サールの顔は無関心を装っているだけで、好奇心が隠しきれていない。


「そんな奴がいるなら、俺にも紹介してくれ。是非、一戦お願いしたい」

「ミア様には誰も敵いませんよ」

「まずはお前から倒そうか?」

「勘弁して下さいよ」


 アークは苦笑いを浮かべる。世に蔓延る力を持つ人間の大半は、おべんちゃらだけを言っておけば気を良くするが、それが通用しないミアに対して、アークは苦手意識を抱いている。


「私は」アークは手綱を左手に握りながら、右手の人差し指で自身のこめかみを叩く。「こっちが本業のタイプですよ。腕っ節を買われていたら、こんな格好で走り回っていませんとも。私がもっと強ければ、ミア様の様に冒険者になるか、傭兵のギルドにでも所属したかったものですな。軍人は柵が多くて困りますよ」


 ミアは呆れ顔で「どうだか」と返事する。ミアにはアークが弱いとは思えなかったが、アーク自身は本音を言ったに過ぎない。実際、ミアに勝てる程に強ければ、アークは帝国軍に所属せず、もっと自由な生き方を選んだだろう。アークは帝国の行末が解るほどに賢かったのだ。


 行列に並ぶ人々からの視線や暴言に耐えながらも、一行は直ぐに検問所へと辿り着く。慌ただしく帝国軍人や衛兵が入り乱れているが、アークが目配せをするだけで、カリテスの面々を乗せた馬車はバザルに入る事が出来た。


「うわぁ」


 ライアが思わず声を漏らす。ルブール王都のような、よく言えば硬派で悪く言えば古臭い街とは大違いで、バザル自由都市は派手で先進的だ。帝国と王国では匂いから何までもが違うのだと、ライアは初めて知った。何処かから舞ってくる紙吹雪は、街を汚しながらも彩りを与えてくれるし、建物の一つ一つには無駄という贅沢な余裕が見て取れる。街を歩く人々の顔は明るく、お祭りを全員で楽しんでいるのが誰にでも解るし、もうライアはその有象無象の一人だ。


「とっても、凄いですね」


 ライアはそう言いながら、顔を上下左右に動き回し、その様は周りから首を痛めてしまうのではないかと心配されるくらいだ。街のあちこちに居る人々が、歌ったり叫んだり飲んだり食べたり、自分が一番目立っているのだと証明しようと必死だ。


「ここまで凄いとは、わたくしの想像を遥かに超えてきましたよ」


 無神論者どもが何を祭るというのかと、最初は懐疑的だったライアだが、バザルに足を踏み入れてからは、自分が如何に狭い世界で生きていたのかと思い知る。町中で行われている楽しげなパレードは、ライアの知っているお祭りとは規模が違う。


「こりゃ、すげーな」


 ミアもライアに吊られて気を昂らせる。大道芸をしている派手な格好をした男が、カリテスの面々に手を振ってアピールをする。それに応えるようにミアとライアも手を振り返す。


「ちょっと、二人ともはしゃぎ過ぎよ」


サールも街の熱気に驚いてはいたが、ライアとミアのように子供っぽくなる事が出来ずにいた。ニコニコと下卑た視線を送ってくるアークのせいかもしれないし、一人ぐらいは落ち着いて居なければならないという使命感のせいかもしれない。


「今年のお祭りは例年よりも凄いですからね。お祭りが終われば、片付けだけに四ヶ月は掛かりますよ」


 アークはカリテスの面々に伝えるように言っているが、視線は自然とサールへ向いている。もっと具体的に言えば、サールの抱くコンプレックスの箇所を、ついついアークは見てしまうのだ。


「ちょっと」サールは自分で自分を抱きしめながら、小さな声でアークを咎める。「さっきから何ですか?」


 アークはどうしてサールが怒っているか解らなかったが、反射的に「申し訳ないです」と言った。ミアとライアは大道芸に見入っていて気付いていないが、アークとサールの間に気不味い空気が流れる。


「サール様、失礼いたしました」

「いえ」


 とりあえず謝るアークに対して、サールは不満を滲ませながら冷たく返す。悪い空気を打ち消すように、ライアが「皆で見に行きましょう」と明るく言う。ライアが指さす先に居る大道芸人が、長い剣を使って何かを披露しようとしている。


「おいおい、あんな長い剣を口に入れるつもりかよ?」

「ちょっと、ミアさん待って下さい」


 馬車から大袈裟に飛び降りて走り出すミアと、危なっかしく降りて走るライアを見て、サールは「気を付けなさいよ」と呼び止めるように言う。ミアはサールの言葉に耳を貸さず、一直線に大道芸人の元へと向かうが、ライアは振り向いて「アークさんとライアさんも行きますよ!」と言った。


「申し訳ないのですが、私は任務が残っておりますので」


 アークがそう答える頃には、ライアは既に大道芸の元へと駆けていた。代わりにサールが「伝えておきます」と応えると、アークは感謝を述べて馬に跨る。


「それでは、私は任務に戻ります」


 アークは迷ってから「サール様はどうなさるのですか?」と尋ねてみた。先程の秘密に対して探りを入れる目的と、個人的に仲良くしたいという欲望が混じった、狡猾な質問を投げかけたのだ。仕事で使える情報を手に入れるもよし、デートに誘うもよしと、アークは自分で思っているよりも自信家なのだ。


「どうするって、何がです?」

「サール様は何か用事があるのでしょうか?」

「誘ってるつもりですか?」


 アークが肩を窄めると、サールは溜息を吐いた。ずっとサールの胸ばかりを見てしまうアークは、自分の狡猾さとプライドの高さに辟易とする。アークが見るべき胸は、大きくて大胆な外側の胸ではなく、小さくて繊細な内側の心なのだ。


「これから」サールは面倒だが丁重に断る事にした。「冒険者のギルドへ行って手続きをしなければならないので」


 ミアの友達だか知り合いだか何だか知らないが、サールはアークと話すのが面倒だった。ライアとミアが歓声を上げているのを見て、サールも早く大道芸を見に行きたいのだが、検問所を通してくれた人に失礼は働けない。修道女や冒険者は、受付係と違ってマナーを気にしないのが羨ましい。


「ギルドで何を?」


 まだ話を広げるつもりなのかと、サールは少しだけ驚く。こういった執拗な男性は、品がなくて嫌いなタイプだ。サールはアークに対しての評価を更に下げる。


「色々です」

「色々とは?」

「仕事関連についてですよ」

「冒険者ギルドの方だったのですね」

「それとあと、ミアが闘技場に出るのでその手続きとかも急がないといけないので、そろそろ……」


 アークは「えっ」と声を出して驚く。サールが不思議そうな顔を浮かべたので、アークは平静を装う為に微笑む。ミアが闘技場に出るとなれば、アークの仕事が増えるのは間違いない。皇帝陛下も観にくる大会で、王国の人間が優勝するなんて、絶対にあってはならない事だ。軍の上層部に属すアークからすれば、この祭りも所詮は帝国の強さを対外的に誇示する為に行われるものだ。ミアを暗殺してでも止めなければならないが、個人的に付き合いのあるアークからすれば、それは最初に考えてしまう最後の手段でしかない。


「ミア様も闘技場に出られるのですね?」

「そのつもりですけど、何か?」

「さきほど、ミア様は観光でお越しになったと仰って居たので、少し驚いただけです」

「ミアにとっては、闘技場で戦う事なんて観光感覚なのでしょうね」


 アークは苦笑いを浮かべる。他の帝国軍人にこの仕事を回す事は出来ない。神殺しの英雄を探す任務を他の人間に任して、アークはミアの邪魔をする方法を考えなければならない。動くならば早い方がいいだろう。


「それでは、自分は失礼致します」


 名残惜しそうに言うアークに対して、サールは早く何処かへ行けよと言いたいのを抑えて、笑顔で「また、どこかで」と適当に返す。アークが馬に乗って駆けていくのを見送ってから、サールも大道芸人の元へと向かった。


野神の真琴です( ˊ̱˂˃ˋ̱ )


いやぁ、読みにくいですねぇ( ◠‿◠ )

もう誰が誰か、誰の心理描写なのか、ごちゃごちゃです……

しかも長いです!!


直すのが面倒なので、とりあえずはこのままあげます

ノリで読んで下さいな


この作品は

作者以外がちゃんと読めるものなのですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ