表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昼休憩とストロー  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

タイトル未定2025/10/22 00:23

 チャイムの余韻が、まだ机の中で震えている。

彼女は窓の欄にもたれて、紙パックのストローをくわえた。

目が合う。すぐ外す。喉が、ひとつ鳴った。


「飲む?」

首を横に振ると、彼女は笑って、ストローをこちらに向けた。


 触れない距離。

机の角が冷たい。息を吸って、吐いた。それだけで胸が忙しい。


 窓の外、風が旗を揺らす音。

返事の代わりに、私はストローの影だけを指でなぞる。


 彼女の笑みが、午後の光に溶けていく。

ストローの先が、わずかに濡れて揺れる。

私の指が影をなぞるたび、

それは彼女の唇の輪郭を、そっと借景のように描き出す。


「触ってみなよ」

耳元で囁くみたいな、低い声。


 窓ガラスに映る私たちの影が、重なる。

旗の音が、遠くで波のように寄せては返している。


 私は息を止めて、指を伸ばす。

触れるか、触れないか。

その狭間で、心臓が彼女の鼓動を予感する。


 ストローが、私の唇に届く。

甘酸っぱい、彼女の味。


 目が合う。今度は、外さない。

教室の空気が、二人だけの秘密で満ちていく。


 外の風が静かに止む。

チャイムの余韻がようやく机の中に沈むころ、

私たちはただ、互いの温もりを指先で確かめ合う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ